サウジアラビア戦で、スタメンから外される可能性が出て来た本田と香川。香川は怪我も関係しているらしいが、一番の問題は、所属クラブで出場機会を得られないことだ。ではなぜ出られないのか。監督との相性の悪さもあるだろうが、所属クラブのレベルに、自身のレベルが追いついていないことが一番だ。

 かつては出場できていたが、その数は次第に減少。そして今季に至ったわけだが、下り坂であることは前々から分かっていた。急に発生した事態ではない。大一番を前にしたこのバタバタ劇は、想像力不足が招いた準備不足。そのための仕込みをしてこなかった監督(だけではないが)の楽観的思考に原因がある。

 本田の場合は、試合勘の無さもさることながら、全盛期に比べ技術的にも後退した。一目瞭然なのは馬力。オマーン戦の後半14分、正面から放ったシュートシーンで言えば、かつてならドカンと、もっと強いシュートが打てていた。強シューターとしての魅力は、どこかに葬り去られた状態にある。

 キープ力。縦への推進力も減退した。例えば、かつては4−2−3−1の3の右を務めても、内へ入るばかりではなく縦突破にもトライし、成功させていた。中央に折り返す段で、利き足ではない右足のキックを迫られたこともある。最近のコメントで自身の足の遅さについて言及した本田だが、それが縦突破をしない理由の一つのように聞こえたので、あえて言わせてもらえば、縦突破に最も必要なのはスピードではない。逆を取る力とその感覚だ。

 馬力もさることながら、逆を取る力が最も衰えた点であるような気がする。言い換えれば、1対1で相手を抜く力だ。その瞬間、かつては相手のマーカーに対して、常に優位に立っていた。何を隠そう、本田を高校選手権で初めて見た時、この選手はモノが違うとピンときたのだけれど、その一番の理由は、1対1における迫力満点の面構えだった。相手を怖じ気づかせるような強気の姿勢に、これはタマが違うとその将来に期待を膨らませたものだが、そうした場を圧倒する凄みを、いまの本田に見ることはできない。相手を呑んで掛かることができていない。

 縦ではなく横へ移動。すなわち真ん中に入り込む傾向が、年々強まっている。FWと言うより、それはMF的な行動だ。1対1を避け、安住の地を求めて彷徨う弱気、功を焦る自信のなさが見え隠れする。

 いるべき場所にいない。求められているものと異なる方向に進めば、チームとしてのバランスは崩れる。結果として、右SB酒井宏樹は孤立。攻撃参加したくても、本田と絡むことができないので、攻め上がりは単騎になる。成功する見込みは立ちにくい上に、背後も危険に曝されるので、自重が最善の選択になる。

 オマーン戦で、酒井宏樹と本田が、右サイドを協力しながら突いたシーンは何度あっただろうか。左右のバランスは大きく崩れた状態に陥った。

 さらに言えば、相手が強くなれば、日本の右サイド(相手の左サイドは)、数的不利に陥る可能性が高い。ディフェンス能力の低い穴が生じることは見えている。

 ハリルホジッチがオーストラリア戦で、本田をセンターフォワードで起用した大きな理由だと思う。最初から真ん中に置き、従来の本田のポジションに小林を起用すれば、右サイドに穴は発生しない。オマーンのような弱い相手なら、致命傷にはならないが、強い相手には、右、本田は大きなリスクになる。

 サウジは現在、グループで首位を行く簡単ではない相手。右の本田はリスクになりかねない存在だ。そうした視点に立てば、オーストラリア戦のようにセンターフォワードで起用したくなるが、今回は、オマーン戦で2ゴールを挙げ、好調をアピールした大迫がいる。センターフォワードとしての力をシンプルに比べれば、軍配は大迫に挙がる。本田のスタメン落ちは筋の通る適切な選択になる。