実写版「攻殻機動隊」 主演が白人のS・ヨハンソンでしかあり得なかった理由

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士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」をスカーレット・ヨハンソン主演で実写化したハリウッド映画「ゴースト・イン・ザ・シェル(原題)」のフルバージョンの予告編が公開されたことを受け、ネット上では同作の「白人化」についての議論が再び沸騰している。

同作品は、主人公の「少佐」こと草薙素子役をヨハンソンが演じるなど、白人俳優を起用したキャスティングで批判を集めてきた。

同様の問題は、マーベルの新作映画「ドクター・ストレンジ」でも持ち上がっている。同作で主人公が弟子入りする魔導士のキャラクターは原作コミックではアジア系男性だったが、映画版ではティルダ・スウィントン演じる白人女性に変更され、物議を醸した。

士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」は、人々が自分の脳をサイバー空間に接続させ、肉体を人工的な義体に置き換えることができる未来が舞台で、義体に脳を移植された素子を主人公に、人間と機械の境界線とは何かを問うSF作品。

これまで、1995年の「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」を筆頭とする劇場版アニメや、テレビアニメ、ゲームなどを生んできた。それぞれ原作を独自に解釈した内容で、素子の風貌も作品によって瞳の色が青や紫、オレンジに描かれるなど、若干の違いがある。

また漫画やアニメでは、ほぼすべてのキャラクターが表情の少ない似通った顔で描かれており、際立った人種的な特徴はない。草薙素子という名前から主人公は日本人だとも受け取れるが、この名前は仮名であり、実名を含む自分の生い立ちについての記憶は失っているとの設定で、作中では「少佐」の肩書で呼ばれることが多い。

またストーリーの根底には、素子の存在は人工的な体ではなく精神によって定義づけられているとの概念がある。素子にとって体は衣服のように交換可能なものであり、素子が本来女性だったのかでさえも定かではない。

これを踏まえた上で、実写版がなぜこのキャスティングになったのかについて考えてみる。主役に日本人女優を抜擢することもできたはずではないかと思うかもしれないが、実際にはそれは不可能だっただろう。

予告編で披露された目を見張る映像や派手なアクションシーンから推測するに、この映画には膨大な制作費が投じられている。原作は映画「マトリックス」シリーズに多大な影響を与えた作品とはいえ、SFやアニメのファンを除けば一般の知名度は低く、実写版では人々に劇場まで足を運んでもらう理由を作る必要があった。最も効果的な方法は、既に同じジャンルや似たような役柄で人気を得ている大スターを起用することだ。

セクシーだが危険なサイボーグという役柄に、スカーレット・ヨハンソンほど適した女優はそういない。ヨハンソンは「アベンジャーズ」では冷徹な暗殺者を、「アンダー・ザ・スキン」では人間を次々と襲うエイリアンを、「her/世界でひとつの彼女」では体を持たない人工知能を、「ルーシー」では超人的な脳を手に入れた女性を演じるなど、数々のSF作品で人間離れした魅力を発揮してきた。彼女に「少佐」役をもたらしたのは、こうした作品に大挙して群がった私たちなのだ。同系列の女優としては唯一、ミラ・ジョヴォヴィッチの名が挙げられるが、ヨハンソンほどの人気はない。

もちろん、映画・テレビ業界は常に限界に挑戦し、現状に迎合するのではなく疑問を投げかけるべきだが、超大作で大きなリスクを冒すことは賢い考えではない。エンタメ界での人種的多様性の不足は大きな問題であることは間違いないが、ハリウッド上層部の業界人たちは、自分たちの考えを一般大衆に押し付ける悪しき大金持ちというわけではなく、単に収益性に基づいて行動しているにすぎない。より多様な人々が銀幕で活躍するのを見たいなら、私たちは白人以外をキャスティングした映画をもっと観るべきだ。

どの業界もそうであるように、映画産業は消費者がいてこそ成り立っている。スカーレット・ヨハンソンが少佐役に抜擢されたのは、これが今、最も望まれているキャスティングであることが、これまでの興行成績から示されているからなのだ。