11日のオマーン戦で先発するも、途中で交代した本田圭佑

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ワールドカップ本大会出場の行方を大きく左右する15日のサウジアラビア戦を前に、準備試合として行なわれた11月11日のオマーン戦で、ハリルホジッチ監督率いる日本代表は、親善試合とはいえ4−0のスコアで久しぶりに完勝した。

しかしながら、「相手を悪く言うつもりはないですが、(相手の)モチベーションがないと感じたので、参考にはならなかったというのが個人的な感想です」と試合後に酒井高徳が振り返ったように、この結果をそのままサウジアラビア戦にあてはめるのは少々無理がある。大勝したとはいえ、選手たちがそれを手放しで喜ぶような雰囲気もなかった。

しかも、スローテンポで相手からのプレシャーも少ない中、日本代表の選手はイージーミスを連発。キック、トラップの精度は相当に低く、これが日本サッカーのトップ集団のレベルなのかと落胆してしまうようなシーンが目立っていた。

これについてはハリルホジッチ監督も「テクニックミスが多かった。もっと良いプレーをして、(試合を)コントロールできなければいけなかった」と試合後に嘆いたほど。とりわけ“らしくない”プレーを連発し、低調なパフォーマンスに終始したのが本田圭佑だった。

岡田武史監督時代の2010年南アフリカワールドカップ以来、常に日本代表の中心選手としてチームをけん引してきた本田ではあるが、今回の最終予選が始まってからは試合を重ねるごとにパフォーマンスが低下。格下オマーンとの親善試合においても簡単にボールを失う場面が目立ち、パスやシュートの精度もトップフォームからはほど遠いレベルにあった。

本田は現在30歳。サッカー選手としてはちょうど脂がのる頃で、現在の低調ぶりを単純に年齢的な衰えとは言い難い。ただ、これまでハリルホジッチ監督が再三コメントしているように、所属のACミランでの出場機会がほとんどないという状況がパフォーマンスに大きく影響していることは間違いない。

これまでのプロキャリアを振り返ってみても、これほど長い間ベンチを温め続ける状況は初めての経験。それだけに試合勘のみならず、フィジカル面やメンタル面もかなり不安定な状態になっていることは想像に難くない。実際、オマーン戦でのプレーを見ても、本人が頭の中で描くイメージと実際の体の動きに大きなズレが生じている印象を受けた。少なくとも、サウジアラビア戦までにトップフォームに戻る可能性は極めて低いと言わざるを得ない。

その一方で、ミスはあったものの、オマーン戦で躍動していたのが1ゴール2アシストをマークしたトップ下の清武弘嗣、2ゴールの大迫勇也、あるいは得意のドリブルで左サイドからチャンスを作った斎藤学ら「ロンドン五輪世代」の面々だった。彼らの動きにはキレがあり、フィジカルコンディションの充実ぶりが窺えた。

「(ロンドン)五輪には一緒に行けませんでしたが、サコ(大迫)とは予選でもずっと一緒にやってきて、アイツ以上にボールが収まる人はいないと思う。前でどっしり構えてくれて、そこでタメができていた。ケルンでも試合に出ていて、得点感覚をこの試合でも出してくれましたし、今、勢いがある」

試合後、そう言って大迫を高く評価したのは清武だった。その清武は本田同様、所属クラブのセビージャでは出場機会を失っており、試合勘という部分で不安視されていたが、オマーン戦ではそれを払しょくするプレーを見せていた。

そして、この試合で久しぶりに代表に復帰した大迫は、所属のケルンでの好調ぶりを代表でも持続。持ち前の得点力を惜しみなく披露し、61分間のプレーで4本のシュートを放ち、そのうち2本をネットに沈めたのだから、申し分のないパフォーマンスだったといえる。

大迫以外にも、この試合では2012年ロンドン五輪世代の選手が多くプレーしている。トップ下の清武を筆頭に斎藤、酒井宏樹、酒井高徳、山口蛍。また大迫同様、ロンドン五輪本大会には出場できなかったものの、この予選で3試合連続ゴールを決めている原口元気も同世代となる。

つまり、経験値などは別として、所属クラブでも代表でも彼ら「ロンドン五輪世代」が“旬の選手”であることは疑いようのない事実なのである。

逆に、不調の本田に加え、このオマーン戦では途中出場を果たすも目立ったプレーができずに終わった岡崎慎司、体調不良で欠場した長友佑都はいずれも2008年「北京五輪世代」の選手。世代こそ違うものの、オマーン戦を故障欠場した香川真司も北京五輪のメンバーだった。客観的に見ても、日本代表の中軸はようやく北京五輪世代からロンドン五輪世代に移り始めているということになる。

10月11日のオーストラリア戦後の会見で、ハリルホジッチ監督は「我々にとって本田は非常に重要な存在。このチームでより多くの得点とより多くのパスを出している選手だ」とコメントし、信頼を改めて強調した。ところが今回のオマーン戦後、「本田には試合のリズムが足りないことが確認できた。本田は経験があり、ずっと存在感を出してきた。ただサウジアラビア戦を控え、いちばん良いパフォーマンスの選手は誰なのかをこれから確認していかないといけない」と語るなど、以前とは異なる姿勢を見せている。

これは長友や香川についても同じで、指揮官は「特に長友と(香川)真司はよく様子を見ていきたい。9月からあまり良くない時期にきている。たとえば長友が病気になった、真司も少しケガをしたとか、我々のトレーニングで集中するところに少し支障が出ている」と、彼らへの信頼が薄らぎつつあるようにも見える。

好調な“旬な選手”か、それとも経験重視でこれまでの主力選手か。すなわち、「ロンドンか北京か」の選択である。

自身の進退をかけた大一番で、ハリルホジッチ監督がどちらを選ぶのか。サウジアラビア戦の注目は、まずはスタメンのセレクトになりそうだ。

(取材・文/中山 淳 撮影/藤田真郷)