日本を代表するジャズ・トランペッター

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 ジャズ・トランぺッターの日野皓正が11月13日、伝説のトランペット奏者チェット・ベイカーを描く「ブルーに生まれついて」、ベイカーとも親交のあったマイルス・デイビスを主人公にした「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」というジャズ映画2本の上映会に来場。デイビスとの忘れられないエピソードを明かした。

 革のジャケット&パンツで登場した日野は、同じジャズトランぺッターであるベイカー、デイビスについて、いきなり「敵ですね。商売敵(笑)」と語り、笑いを誘った。日野とデイビスの関係は「親子。落語の世界でいう師匠と弟子のようなもの」と明かすほどで、多くのことを教わったという。ジャズドラマーのアート・ブレイキーらも、日野のことを「My son(息子)」と呼び、かわいがっていたというが、日野は「ジャズの世界には“Each One Teach One”という言葉がある。ひとりひとりが魂を伝えていく」と説明する。

 あるとき「(演奏で)上の唇が水膨れになるんだけど、どうしたらいいか?」とデイビスにアドバイスを求めたところ、「もっと下の唇を使え」という答えを受け取ったという。当時はその意味が分からなかったそうだが「いま、74歳なんですが、70歳くらいで思い出して、『そういえば……』と思ってやってみたらすごくいい! やはり、おれの“オヤジ”なんだなと思いました」と顔をほころばせた。

 ベイカーに関しては直接の関わりはあまりなかったというが、アメリカで生活していたころ「よくチャイニーズレストランに行っていて、そこから彼が歩いているのをしょっちゅう見た」と明かす。「ブルーに生まれついて」でも描かれる、麻薬におぼれていくベイカーの人生を日野は「かわいそう」と言い表しながらも、「だからこそ、ああいう演奏ができた」。一方で「僕にはドラッグはいらない!」と言明。「禅の坊主が瞑想していると、庭の草木が息をしているのを感じるっていうけど、それってトンでるよね(笑)。東洋にはそういうのがあり、体もむしばまないし、それで十分!」と言い切った。

 「彼らのように、トランペットが吹けなくなったことは?」との問いには「僕はブッ飛ばされたり、歯を全部折ったことはないからね(笑)。食うために吹かざるをえないし、これをやるためだけに生まれてきたんだからしょうがない(笑)」とひょうひょうと自身の芸術論を語っていた。

 「ブルーに生まれついて」は11月26日、「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」は12月23日から全国で公開。