EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

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◆クライアントからの強い反論にどう対処する?

「私の話を聞いていないだろう!」、「あなたの話を聞いているのではない!」、「あなたは全くわかっていない!」、「私の言いたいことはそういうことではない!」……こうした強い反論を、クライアントから受けたことのある人も少なくないに違いない。これらの例は、「分解スキル・反復演習型能力開発プログラム」の中で参加者から挙げられた、クライアントから受けた強い反論の例を、パターン化したものだ。

 それに対して、次のようにリアクションしてしまうと、火に油を注ぐ結果となってしまう。聞いている・聞いていない、お互い私の話を聞け、わかっている・わかっていない、言っていることはそれだ・それではない……という水掛け論になってしまうからだ。

 演習で挙げられた一番悪い例は、「と、おっしゃいますと(語尾上がる)」というリアクションだ。本人はそのつもりが全くなくても、「と、おっしゃいますと(語尾上がる)」という語幹に、「だから何なんだよ」という木で鼻をくくったようなニュアンスを相手に伝えてしまう。

「と、おっしゃいますと(語尾あがる)」は最悪な例だが、例えば、「私の話を聞いていいないだろう!」というクライアントからの強い反論を受けて、即座に、「聞いています」とリアクションする方法は、言葉では聞いていますと答えているにもかかわらず、クライアントに「確かに聞いているな」という実感を与えないのだ。だから、「聞いていないだろう」、「聞いています」、「いや、聞いていない」という水掛け論になってしまう。

◆反論に反論するから紛糾する

 それはなぜかといえば、クライアントが言っていることは、反対のことを言っているから。その他の3つの事例も同じだ。あなたの話を聞いているのではない・私の話も聞いてください、あなたは全くわかっていない・私はわかっています、私が言いたいことはそういうことではない・言っていることはそういうことです……いずれも反対のことを言っていることにお気づきだろう。

 私が展開している「分解スキル・反復演習型」は、首尾良く進まない状況をパーツ分解していき、状況を好転させることに最も高い効果を生み出す、元となるパーツスキルを見出し、その分解スキルを反復演習して、状況を好転させることができるようにするものだ。この例では、反対のことを言ってしまうことが元となって、応酬になり、強い反論の火に油を注いでしまうので、「反対のことを言わない」というスキルを身につけて反復演習していく。

 そもそも、クライアントが強い反論に込めている思いは、聞いている・聞いていない、わかっている・わかっていないということを白黒つけることではなく、私の言うことを聞いてくれ、気にしてくれ、理解してくれ、真意を汲んでくれということなのではないだろうか。事実、聞いている、気にしている、理解している、真意を汲んでいるということをクライアントがわかると、反論は格段に緩和される。

◆反論を緩和する4つのリアクションパターン

 そこで、「聞いていないだろう」に対して「聞いています」という言葉を一切用いずに、クライアントに聞いていることを示す方法を、参加者が演習で工夫してきた実例の中から、生み出した。その方法が、次の4つのリアクションのパターンだ。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=116346

「聞いています!」とリアクションするかわりに、「なるほど、そうですか」と合意した上で、「おっしゃていることは、こういうことですよね」と確認するのだ。そうすれば、クライアントの言うことと反対のことを言わずに、従って、言った・言わないの水掛け論にならずに、聞いているということを、クライアントに実感させることができるのだ。

 合意+例示のパターンでは、クライアントの言うことに対して、別の事例を挙げることで、クライアントの言うことをしっかり気にとめて考えているということを示すことができる。合意+追加の例では、さらに自分の経験を用いて返すので、をしっかりと理解しているという意味をクライアントに伝えることができる。仮に実例がなかったとしても、合意+仮定のリアクションパターンで、クライアントの真意を理解しているということを伝えることができるのだ。

 単純化したいと思い、4つのリアクションパターンに区分したが、実際には、クライアントの反論のレベルに応じて、例示、追加、仮定の順に繰り出していったり、例示と追加、仮定と例示などの組み合わせていったりもしていく。いわゆるモンスタークライアントに接した時には、あわてて反対のことを言って応酬するのではなく、これらの4つのリアクションパターンのどれかを使用して、収束を試してみてはいかがだろうか。

※「反論を緩和する4つのリアクションパターン」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)のドリル12から16で、セルフトレーニングできます。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第21回】

<文/山口博>

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。

【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身