「HUNTER×HUNTER」ポックルとポンズはなぜ犠牲になったのか19巻 

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冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載されてから19週目が経過。今回は単行本19巻を振り返る。


キメラ=アント編序章の19巻


暗黒大陸からキメラ=アントの女王蟻が漂流した。他種生物を食べてから産卵することで、その生物の特徴を次世代に反映させることができる第一級隔離指定種である。
最初はコウモリとか弱そうな動物を捕食していた女王。18巻終盤では、兵隊蟻がちびっ子や一般人を襲い、19巻では人語を使うキメラが激増していた。黒帯の武道家を運んでいるのを見ると、一匹当たりの戦闘力もぐんぐん上がっている。
そんな危険な虫と相対する人間たち。普通の人はピストルを使い、プロのハンターたちは自らの念能力を使って駆逐していた。
「奪って使えばいい 逆効果だってことを奴等に教えてやるのさ」
女王蟻に忠実な師団長・コルトは、人間の武器を自分たちのものにしようと考え始める。(そうか、念能力使えるやつが殺されてしまうのか…)と思って次のページを見ると、ポックルとポンズが久々に登場していた。

初代アニメではいい雰囲気を出していたポックルとポンズ


2人とも287期のハンター試験の受験生であり、ゴンたちと同期。
ポンズはモッコリ帽子を被った背の低い女性。第一回人気投票では第9位にランクインした実力者。「超かわいいっす」「僕も刺されたい!!」という読者の声があったことから、世間的に見ても素晴らしいルックスの持ち主。ちなみに、刺すのはポンズではなく、彼女の飼っている蜂である。薬と名前のつくものはなんでも使い、戦闘力は低い。
受験生同士でプレートを奪い合う4次試験では、自らの持参した催涙ガスで眠ってしまい、その間、ゴンにプレートを盗まれた。そうしてポンズをターゲットとしていたレオリオの手にプレートが渡ったため、彼の合格に一役買った女性でもある。
ポックルはポンズと背格好が似ていて、頭にとんがりターバンを巻いている男。4次試験では得意の弓矢でキュウを戦闘不能に追い込んであっさりプレートをゲット。その際、不敵な笑みを浮かべ、不気味な存在感を放っていた。
最終試験の負け上がりトーナメントでは、キルアに「悪いけどアンタとは戦う気がしない」と試合放棄され、合格。その結果、キルアは次戦でメンタルの弱さを露呈し、反則行為を起こしてしまったため、失格。彼の不合格に一役買ったのがポックルである。
19巻まで特に絡みのなかったポックルとポンズ。しかし、フジテレビで放送された初代アニメ『ハンター×ハンター』では、アニメオリジナルの3次試験エクストラ・軍艦島で一緒に古びた軍艦のエンジン修理を担当するシーンがあった。


エンジンが動かなかったらどうしようとビビるポックルと励ましてくれるポンズ。2人で手を重ねてレバーを引く場面は、2人ともこの先付き合うんじゃないかと思えるほど、恋愛色が強い。
で、19巻で原作初のコンビでの搭乗を果たした2人。ポンズは左肩を負傷し、ポックルはそれを気遣っていた。軍艦島の時とは立場が逆である。(ここから息の合ったコンビプレイで窮地を脱し、ゴンたちと共闘していくのか…)、そんなワクワクした気持ちでページを読み進めていったのだが。

結局、2人とも死んだ。


ポックルは敵に捕獲され、キメラの王直属護衛軍のネフェルピトーに裸にされた挙句、脳みそを露出。編み針のような棒で頭の中をクチュクチュいじられ、「あっ 水見式という方法が あっ最も簡単で あっあっ 一般的なあっ あっ あっ あっ あっ」と喘ぎながら念能力の基礎をしゃべってしまう。
一通りのことを教え切ると「あれはもう要らない」と判断され、肉屋さん風の出で立ちをしたブタに斧を振り下ろされ死んだ。
ポンズは逃走中、刺々しい全身の虫に銃で撃ち殺され、ぐちゃぐちゃになるまで殴られ、屍肉を貪られた。女子供、かわいい動物が残虐に殺されることはないだろうという思い込みが、冨樫によってボロボロに打ち砕かれる。個人的には富野喜幸の『伝説巨神イデオン』の登場人物、カーシャ、デク、ラパパの死亡シーンを見たときに似た衝撃を思い出してしまった。


ポックルとポンズはなんのために死んだのか


『伝説巨神イデオン』の場合は、争いを繰り返す人類が、あらゆる運命や偶然の支配者であるイデによって見放され、全宇宙の知的生命体が絶望の中で死に絶えた。
「結局、人類は分かり合うことはできない」というイデと富野による意図があったんだと考えれば、物語的にはイデオンの世界の人々が全滅したのには意味がある。
じゃあ、ポックルとポンズの死にはどんな意味があるのか。全宇宙の命と比べれば些末なものだが、それなりに意味のある死である。
ポックルは脳みそをいじられたのちに死亡、ポンズは特に名前の設定されていない雑魚キャラに虐殺された。2人は、冨樫がキメラ=アントの鬼畜っぷりを描写するために犠牲になったのである。
特にポックルは、ネテロ会長が19巻終盤で話していた「中途半端な戦力」に該当。敵にバトルの基本を伝授したのち、食用の肉団子となる。彼等の戦力底上げに貢献し、キメラ=アント編の話を大きく広げてくれた。自らの死をもってHUNTER×HUNTERを盛り上げてくれた功労者となった。
(山川悠)
参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる