日本代表の中に長く存在してきた、確固たる序列が崩れるきっかけになるかもしれない。日本代表がオマーンを4−0で下した試合を見ていて、そんなことを感じた。

 日本代表が公式戦(W杯最終予選)以外の試合に臨むのは、今年6月のキリンカップ以来。そんなオマーン戦の先発メンバーには、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任後、初めて日本代表で先発出場する選手が4名含まれていた。久しぶりの"テストマッチ"では、文字どおり、新戦力のテストが行なわれたわけだ。

 概ね、新戦力は持ち味を発揮した。試合後のハリルホジッチ監督の言葉を引けば、「何人かはこのチャンスをつかみ、何人かはつかめなかった」が、「いいテストだった。たくさんのことが見られた」ということになる。初先発の4名は、攻守ともに細かなミスが多かったDF丸山祐市(FC東京)を除けば、及第点と言っていいだろう。

 A代表デビューとなったMF永木亮太(鹿島アントラーズ)は後方でセカンドボールを拾うだけでなく、ペナルティーエリア付近まで進出し、積極的に攻撃にも絡んだ。

 MF齋藤学(横浜F・マリノス)は、MF清武弘嗣(セビージャ/スペイン)やDF酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)らと好連係を確立し、左サイドから何度もチャンスを作った。オフサイドの判定で取り消しにはなったが、きれいにDFラインの背後を取り、幻のゴールも決めている。

 そして、真打ちはFW大迫勇也(ケルン/ドイツ)。「点を取ることしか考えていなかった。ゴール前でパワーを使えるように、中盤はキヨ(清武)くんに任せようと思った」と振り返るストライカーは、有言実行の2ゴールを決めた。

 こうした積極的な新戦力の起用は、やはりもっと早い段階、例えば、昨年のW杯2次予選からでもやっておくべきだった。そうすれば、現在の日本代表にここまで強い閉塞感が漂うこともなかったに違いない。

 親善試合ひとつで、初先発組の評価を下すのは早計だが、少なくとも彼らが今後の可能性を感じさせるプレーを見せたことは確かだ。

 さて、新戦力が好印象を残したのとは対照的に、酷いパフォーマンスを露呈したのが、MF本田圭佑(ミラン/イタリア)だった。常に肩で息をしているかのように動きは重く、ボールを受けても簡単に失うシーンが目立った。

 同様に、大迫と交代で61分から出場したFW岡崎慎司(レスター・シティ/イングランド)もまた、この試合では低調なパフォーマンスに終始した。本田と比べれば、出場時間が短いというハンデはあったが、消えている時間が多く、ゴールを量産していた頃のようなハツラツさは見られなかった。

 こうなると、注目すべきは11月15日に行なわれる、W杯最終予選のサウジアラビア戦だ。早い話が、本田や岡崎を外し、新戦力が抜擢されるのか、である。

 オマーン戦からサウジアラビア戦までは中3日。基本的には(GKやDFなどを除き)2試合をフルに戦うのは難しい。オマーン戦の選手起用には当然、そんな事情も考慮されていたはずだ。

 実際、所属クラブで出場機会を得ているMF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、FW原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)は、オマーン戦に先発出場していない(原口は交代で16分間出場)。彼らはコンディションも考慮し、サウジアラビア戦に備えたと考えていいだろう。

 その一方で、所属クラブで出場機会がない本田は、ハリルホジッチ監督としてもコンディションを確認する必要があった。だからこそ、指揮官はすでに特別な存在であることを認めている本田を、あえてオマーン戦でも先発出場させたのだろう。

 ところが、背番号4が見せたプレーは全盛期には程遠く、まるで精彩を欠いていた。

 本田と同じく、所属クラブで出場機会を失っている清武については、「(セビージャでの)プレー回数が少ないが、信用していいんだというプレーを見せてくれた」と評価したハリルホジッチ監督。だが、本田については「かなりの経験があり、ずっと存在感を出してきたが、試合のリズムが足りないと確認できた」と苦言を呈するより他なかった。

これでもなお、ハリルホジッチ監督は本田にこだわり続けるのだろうか。

 初先発組の4名に加え、オマーン戦では、FW久保裕也(BSCヤングボーイズ/スイス)、MF小林祐希(ヘーレンフェーン/オランダ)も交代出場した。出場時間が限られるなかでも、小林はゴールという目に見える結果も残した。

 2010年W杯から6年以上が経過してもなお、北京世代に頼ってきた日本代表だったが、ようやくロンドン世代が中心軸を担い、さらにはリオ世代が少しずつ加わり始めた。

 日本代表に漂うマンネリムードに、ようやくクサビが打ち込まれようとしている。大迫が語る。

「先発は監督が決めること。(ライバルとなる)チームメイトのことを考えても仕方がない。僕ができることを全力でやるだけ」

 ひとつ気になるのは、オマーン戦での選手交代のタイミングだ。本田からFW浅野拓磨(シュツットガルト/ドイツ)、への交代が行なわれたのが61分。これは、いかにもサウジアラビア戦への伏線に見える。要するに、本田をサウジアラビア戦に備えて退かせた、ということだ。

 しかも、これまでの最終予選の流れを考えると、次のサウジアラビア戦は大一番。負ければもちろん、引き分けでも日本はグループ2位以内の確保に向け、苦しい立場に立たされる。それだけにチームを率いる監督としては、冒険はしたくないというのが本音だろうし、無難な選択をしたくなるかもしれない。

 だがしかし、である。

 チーム内に閉塞感を引き起こす要因となる序列は崩されるべきだ。公正な競争が行なわれてこそ、チームは強くなる。

 少しばかり時間はかかったが、日本代表はようやく変革のときを迎えている。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki