今季の男子ワールドテニスツアーのレギュラーシーズンが終了し、ツアー最終戦であるATPワールドツアーファイナルズ(11月13日〜20日)を残すのみとなった。そして、シーズンの成績上位8人しか出場できないエリート大会の出場メンバーも出揃った。

 2016年ウインブルドン優勝者のアンディ・マリー(ATPランキング1位、11月7日付け以下同)、オーストラリアン(全豪)オープンとローランギャロス(全仏オープン)優勝者のノバク・ジョコビッチ(2位)、US(全米)オープン優勝者のスタン・ワウリンカ(3位)、USオープンベスト4の錦織圭(5位)は、いずれも連続出場を果たして、エリート常勝プレーヤーとしての地位を維持し続けている。

 一方で、左ひざのリハビリに専念するために7月中旬から戦列を離れていたロジャー・フェデラー(16位)は出場圏外となり、ツアー最終戦連続出場記録は14回でついに途絶えた。フェデラーはトップ10からも陥落したが、これは実に2002年10月以来14年ぶりのことだ。

 また、ラファエル・ナダル(8位)は、5月頃から不安を抱え続けていた左手首を万全の状態に戻すために、10月中旬に早々とシーズンを終えることを宣言し、ツアーファイナルズ出場圏内でありながら辞退となった。

 こうした"常連組"がロンドンで見られないのは非常に残念だ。それでも、代わりにツアーファイナルズに復活出場、初出場を果たす選手が大会を盛り上げてくれるだろう。

 その一番手に挙がるミロシュ・ラオニッチ(4位)は、2年ぶりに2回目の出場権を獲得した。昨シーズンはケガに泣かされたが、今シーズンからは、元世界ナンバーワン、1998年のローランギャロス優勝者のカルロス・モヤをコーチに招聘した。

 ラオニッチの最大の武器である高速サーブを活かして、ネットプレーにつなげる戦術を強化したが、それがすぐに功を奏して、1月のオーストラリアンオープンで初めてベスト4に進出。"レジェンドコーチ"を起用した効果は顕著に表れた。

 さらに、グラス(天然芝)シーズン限定で、元世界ナンバーワンで、グランドスラムで7回優勝したジョン・マッケンローをコーチに招いた。この起用も当たり、ウインブルドンでは準優勝に輝いた。

「(ウインブルドン準優勝は)素晴らしかった。過去2度のグランドスラムの準決勝では、苦汁をなめさせられたけど、やっとステップアップできた」

 このように振り返ったラオニッチは、ウインブルドンでは、かつてないほど感情を表にさらけ出して戦い、勝利への執念を見せた。

「僕はガッツを見せたし、気力を見せた。今後の大会で活かさなければいけない」

 昨年末に述べていた逆襲宣言を見事成し遂げたラオニッチだが、直近のマスターズ1000・パリ大会では右足筋肉の負傷によって準決勝を棄権したため、その回復具合が気になるところだ。

 マリン・チリッチ(7位)も、2年ぶり2度目の出場となる。2014年USオープンの決勝で錦織を破った相手として記憶している人が多いだろうが、先月のATPバーゼル大会決勝でも、またもや錦織を破った。やはり2人の因縁はこれからも続いていきそうだ。

 昨年はツアーファイナルズ初出場者がいなかったが、今回は2人が、トップ8のエリート選手の仲間入りを果たした。

 ガエル・モンフィス(6位)は、30歳にしてうれしいツアー最終戦デビューとなる。たぐいまれな運動能力とアクロバティックなテニスで、ファンを魅了する選手だ。これまでケガに悩まされることが多かったが、今季はこれまでにないタフさと勝負強さを見せ、USオープンでは初めてベスト4に進出した。また、今季錦織との対戦では、マイアミ大会準々決勝で5回、リオデジャネイロオリンピック準々決勝で2回のマッチポイントを逃す死闘のすえ敗れたが、鮮烈な印象を残した。

 ドミニク・ティエム(9位)は、23歳で初出場を果たし、新勢力の台頭を象徴するような存在といえる。現代テニスでは少数派になった片手バックハンドストロークの選手だが、トップスピンが強力にかかった重いボールを打つ。特に、クレーコートが得意で、ローランギャロスでは初の準決勝に進出して、自らの名前を世界に知らしめた。

 すでにツアーファイナルズでは、ラウンドロビン(総当たり戦)のグループ分けが行なわれ、1つ目のグループが、マリー、ワウリンカ、錦織、チリッチ。もうひとつは、ジョコビッチ、ラオニッチ、モンフィス、ティエムとなった。各グループ上位2名が準決勝に進出する。

 そして、シーズン終盤を迎え、2016年最大のサプライズが起こった。

 マリーが、今季前半に絶好調だったジョコビッチを抜いて、史上26人目の世界ランキング1位になったのだ。29歳で初めて1位になったのは、1974年に30歳で1位になったジョン・ニューカムに次ぐ年長記録。そして、イギリス男子としては初めての快挙だった。

 過去13年間は、フェデラー、ナダル、ジョコビッチによって世界1位が占められていたことを踏まえると、ATPツアーに大きな変化がもたらされたといっても過言ではない。

 フェデラーは35歳になり、ナダルは30歳になった。2人ともに2017年シーズンでの復活を期すが、少しずつ実力が落ちてきているのは否めない。それは選手誰もが辿る道なのだ。

 新ナンバーワン、常勝、復活、初出場、新勢力......。

 2016年シーズンのキーワードを含んだ"ツアーの縮図"ともいえるような戦いが、究極の8選手によるツアーファイナルズでどう繰り広げられるのか、非常に興味深い。

神 仁司●文 text by Ko Hitoshi