平均年齢35歳、国の伝統技術を支える −「大栄木工」三代目の挑戦

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株式会社 大栄木工は、天然秋田杉材の産地として有名な秋田県能代市にある。木製防火戸、木製建具などを専門に扱いながら木都・能代の産業を支え、今年創業71年を迎えた。

大栄木工の社名を知らなくても、製品は多くの目に触れているに違いない。納入先は迎賓館や宮内庁が管轄する吹上御所山里門、大使館、外資系ホテル、伊勢神宮をはじめとする寺社など一流どころばかりだ。受け継いだ伝統と最新技術を融合させ、いかに事業と人を育てたか。代表取締役社長 能登一志氏に話を聞いた。

谷本有香(以下、谷本):かなり長い歴史がある会社ですが、現在までどういった変遷を辿ってこられたのでしょうか。

能登一志(以下、能登):もとは1945年に祖父が興した既製品の障子や襖を扱う会社が始まりです。父が二代目を継ぎ、技術力を生かした受注生産というビジネスモデルを確立させました。迎賓館やホテル、旅館、大使館などとお取引できるようになったのはこの頃からです。2013年に私が三代目を継ぎました。

現在の主力製品は木製防火戸です。金属を一切使用せず、天然木素材と化学系断熱素材を使って国土交通省認定の「20分耐火」「60分耐火」を実現しています。2014年にはシンガポールの試験場にて世界基準に準拠した「120分耐火」の内装用防火戸の開発に日本のメーカーとして初めて成功しました。

谷本:「技術力」は御社を語るときに欠かせない要素ですね。

能登:そうですね、先代から特にこだわっているのが「チャレンジャーであれ」という精神です。能代は30年ほど前まで港を中心にした木材関連産業が盛んだったんですが、徐々に勢いがなくなってしまいました。他の企業が経営の多角化や転業を進める中で、当社は逆に本業に特化し、自らの技術を磨くことで生き残る道を選びました。

自社ブランド製品を持たない我々が生き残るには、お客様の要望を商機と捉え、可能性を見出して新たな商品を作っていくしかありません。木製防火戸の開発も父の危機感の表れだったと思います。何もノウハウがないところから専門プロジェクトチームを立ち上げ、3年以上の研究を重ねて完成させました。

谷本:お父様からの流れを引き継いで、一志社長はどんな事業を進められたのでしょう。

能登:近年、文化財の修復や、和の意匠に再注目した製品作りに力を入れています。私は、伝統的な技術がすべて古いとは考えていないんです。

たとえば重要文化財の修復を請け負って昔の職人の仕事に触れると、当時の技術の高さに驚きます。今の職人では考えられない方法で、彼ら独自の道具を使って緻密な仕事がなされている。これは私たちにとっては「新しい」情報です。取り入れた知識を先進の製品に生かすことはよくあります。

フォーシーズンズホテル京都様には組子細工の天井を約300平方メートル納品しました。制作期間は3カ月ですが、これは業界では驚異的な速さです。実は組子というのは建具職人が最後に究める分野といわれます。経験を積んだ職人が手がけるもので、同じ面積を仕上げようとすれば卓越した職人でも半年以上かかります。

それを私たちは、平均年齢35歳のチームで、3カ月間で成し遂げました。伝統的な技術を3つの作業レベルに分け、分担すれば短期間で最高級の組子が作れるとわかったからです。

会社を支えるのはこういったアイデアを出し合える職人たちです。組子のように「チャレンジ」を重ねていき、文化財分野の難しい仕事に進出できるようになりました。

谷本:伝統工芸の課題をチームで乗り越えていくとは面白いですね。ただ、伝統の世界では後継者を育てるのが難しいと聞きます。御社では職人を多く雇用して成功されていますが、若手をどのように育成されているのでしょうか。