ゲーム会社の域を超えた成長に期待[私がこの起業家に投資した理由]

写真拡大

塩田元規らが2010年に創業したアカツキは、「サウザウンドメモリーズ」やバンダイナムコエンターテインメントとの協業タイトル「ドラゴンボールZドッカンバトル」などモバイルゲーム事業を中心に行うスタートアップ。16年3月のマザーズへの新規上場後も、株価は堅調に推移し、時価総額は約430億円(16年9月11日現在)。16年6月には、レジャー・アクティビティ予約サイトを運営するそとあそびを買収し、リアルな世界での体験を提供する「ライブエクスペリエンス事業」にも進出。

今野穣がジェネラルパートナーおよびCOOを務めるグロービス・キャピタル・パートナーズは、14年より同社に投資を行っている。

今野:初めて会ったのは、10年春。DeNA時代に塩田さんと同期だった方から「同期の中で一番生意気だけど、一番優秀な奴がいる」と紹介されたのがきっかけです。「DeNAのメンター制度で、歴史上初めて役員が担当になった人物」と聞いて、是非ともお会いしたいと思いました。

塩田:まだ事業構想中だった私と共同創業者の香田哲朗を、ジャッジするのではなく、サポートする姿勢で迎えてくださいました。「こんな会社を紹介しようか」と名刺を何枚も出してくださったのは嬉しかったです。

今野:塩田さんは、ついつい応援したくなる人物。「グーグルでいうエリック・シュミットみたいな人がいればいいな」と、DeNAの元経営企画本部長だった小川智也さんを退職されるタイミングで紹介すると、2カ月で経営陣として口説いてきたのには驚きました。

塩田:ピュアな性格でトコトンやり続けるため、「応援せざるをえない」と思ってもらえることが多いです(笑)。

今野:塩田さんの場合、ピュアで人たらしなだけでなく、思考も深い。事業を進めていく上での”落とし穴”も、アドバイスする前にいつもご自身で想定できています。

「事業のテーマ」と「人」に着目して投資するのですが、アカツキの場合は圧倒的に「人」。塩田さんは、人の才能を引き出すのが上手な起業家です。新入社員が運営する周年パーティーでは、みんなが本当にイキイキしている。1年目から能力を最大化される機会で、また毎年開催することで会社の伝統にもなっている。制度設計で、社内に”文化”をうまく生み出していると思います。

塩田:経営において、企業文化のような定量的に評価できない”目に見えないもの”に先行投資をしてきました。どんなに忙しくても、社内パーティーや合宿を開催するのも、そのためです。文化は育むのに時間がかかるため、その分簡単には模倣できません。ゲームから事業を始め、キャッシュポイントをつくることで、創業当時から企業文化への投資を続けてきました。

今野:アカツキは、ただのゲーム会社ではなく、組織設計に強みがある企業です。つまり、マーケットが変わっても、組織が柔軟に対応できるサステナブルな会社なんです。

塩田:今は、リアルな空間や場所でワクワクする体験を提供する事業に力を入れています。旅行にもアウトドアにも限定されないマーケットなので、「ライブエクスペリエンス」と名付けました。グーグルはテクノロジーが得意でも、面白い体験はつくれません。今後は、これまでのデジタル領域とライブエクスペリエンス事業のリアル領域という2つの間で、横断的に体験を生み出せるプラットフォームをつくっていくつもりです。

今野:アカツキは、スマホゲーム市場で、かつて隆盛を極めた大手も含め、多くの会社が苦戦する中、成果を出してきた企業。その実行力を武器に、ゲーム会社の枠を超えて、成長することに期待しています。

いまの・みのる◎グロービス・キャピタル・パートナーズ最高執行責任者(COO)およびジェネラルパートナー。東京大学法学部卒。アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング(現PwC)を経て、06年に同社に入社し、現在に至る。主な投資先は、アカツキ、スマートニュース、アキッパ、ライフネット生命など。

しおた・げんき◎アカツキ代表取締役CEO・共同創業者。横浜国立大学電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース卒業。新卒で入社したDeNAでアフィリエイト営業マネージャー、広告事業本部ディレクターを担当。退社後の2010年にアカツキを創業し、現在に至る。