オマーン戦で2ゴールの大迫は、スタメン候補のひとりに浮上したといえるだろう。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 満員のスタジアムで中東勢相手と、4日後のサウジアラビア戦へ向けてリハーサルの雰囲気作りは万全だった。また久しぶりにフレッシュな話題作りにも成功した。前夜祭としては悪くなかった。だが遠路やって来て引き立て役を演じたオマーンの実力、コンディション、モチベーションを考えれば、やはり正味は最低限の確認作業ができたに過ぎない。
 
 剣ヶ峰に立つヴァイッド・ハリルホジッチ監督に、次世代の戦力を取り入れて代謝を図る余裕はなかった。21世紀突入後は恒例化してきたように、ワールドカップの大陸予選を首位で突っ走っているわけではなく、次戦の結果次第では終幕の可能性もある。当然現実的な選択を迫られる中で、大迫勇也以外はバックアップの見極めに主眼が置かれた。
 
 概してこういう親善試合では、GKも前後半で入れ替え、勝負の決した終盤には若い選手をデビューさせることが多いが、逆に主力組の原口元気、岡崎慎司、森重真人らの調整を優先させている。現状でバックアップ候補にまで出場機会が巡って来るとすれば、それは不測の事態になる。比較的新鮮な選手の出場が目についたが、これで選択肢が増え競争力が増したと見るのは短絡だ。
 
 まずオマーン戦で再確認できたのは、所属クラブで出場し続けている選手を使うべきだという当たり前の論理だった。準地元の鹿島でプレーをした大迫は、前線でボールを収めて起点となり2ゴールも決めた。途中からは最終ラインに6人も並べながら、肝心のボックス内が緩かったオマーンの守備側の恩恵を考えても、納得の仕事ぶりだった。だがもともと大迫の能力とコンディションを考えれば、十分に予測されたパフォーマンスで、むしろ指揮官は自ら抜擢の遅れでクビを締めた感もある。
 
 半面ハリルホジッチ監督は、ミランで評価が失墜している本田圭佑と心中の意思を示し、実戦離れを少しでも解消しようとオマーン戦を調整の場として提供した。しかし本田の代表戦でのパフォーマンス低下は、今に始まったことではない。逆に本田に固執して来たつけとして、右MFの適役が探し出せていない。小林悠が故障中で、終盤には浅野拓磨、久保裕也を付け焼刃的に試したが見通しは立たなかった。
 さらにもうひとつ、適任探しに苦慮しているのがボランチである。象徴的だったのが、最終予選開幕のUAE戦での大島僚太の抜擢で、次に浮上した柏木陽介も今回は外れた。長谷部誠の軸は動かないが、年齢的な問題がある。レギュラーを掴みかけている山口蛍もJ2を戦場としている。
 
 その点でヘーレンフェーンが採った小林祐希の起用法は、ひとつのヒントを与えた可能性がある。おそらく小林のスタートポジションは4-3-3のインサイドハーフだが、どうしても自己主張が優先する若いチームメイトは前がかりになる。そこで結果的にディフェンスラインの前に残ってバランスを取ることで、信頼を勝ち取っている。もちろん圧倒的なフィジカルの強さを誇るわけではないが、賢明な読みで我慢をしながらミスの少ない舵取りが光る。どうしても個の仕掛けと縦への意識が優先するヘーレンフェーンでは、隙間にポジションを取ってもボールが入らないが、この夜のオマーン戦ではスペースが広がっていたこともあり、適宜気持ちよくボールを引き出していた。ゴールは副産物だとしても、浅野への決定的なスルーパスを通すなど、今後も攻撃的なオプションとしては浮上した可能性がある。
 
 一方で懸案のCBのオプション探しは、大きな進展が見えない。安定を採れば代謝が進まず、だからといって鹿島でも完全なレギュラーを獲り切っていない植田直通をテストするには状況が許さない。そして前線に視点を移せば、斎藤学が現在外れている武藤嘉紀や宇佐美貴史や浅野らとともに、オプション候補に復帰してきたに過ぎない。
 
 それなりに有益なテストではあった。しかしくれぐれもサウジ戦は、まるで次元が違う。
 
取材・文:加部 究(スポーツライター)