その鍛え方については、担当医によれば意外にもこうだ。
 「1日5分くらい、声を出して歌うといい。歌は強弱、高低があるからです。また、ダラダラ歩くよりウオーキングの方が身体にいいように、声帯にも適度な負荷をかける必要があります。ただし、その場合も加湿のための水分を補う事が重要。年を取り、筋力が衰えると、声帯を覆う粘膜が渇いてしまうからです」(同)

 歌い続けているプロの声楽家でも、声にツヤがなくなってくるのは、そうしたことが原因とされる。プロの歌手が加湿器を持ち歩いているのは、そのためと言う。
 「とはいえ、一般の人が加湿器を持ち歩くわけにはいかない。そのため風呂場で歌うというのは理にかなった老化防止策であり“声の道場”にもなるということ。声も響くし、歌が上手くなったようないい気分にもなるのでお勧めですよ」

 ただ、喫煙は厳禁。さらに腹式呼吸を覚え、喉からではなく、お腹から声を出すことを意識すること。加えて食事の際は、香辛料などを使った激辛の料理は避けたほうがいい。そして何より、適度なカラオケ同様、人と会話をすることも、声の老化を防ぐ助けになるという。

 都内でボイストレーニングスタジオを手掛けるジョージ・金井氏は、
 「声がいいと人の心を捉えるんです。コミュニケーションの始まりは、何といっても声の印象ですからね」
 と説く。スタジオでは声に張りが戻ったことで、仕事の質が上がり、営業成績も上がったという生徒もいるというから驚きだ。

 ところで、俗に言う「いい声」とは、どういう声なのか。
 「人間の耳が捉えやすい母音の“い”が、周波数3キロヘルツで最も強く、耳にクリアに届くと言われる。“お”“う”“は”の帯域は弱いので、聞こえにくく感じる。そのため、話すときには口の両端を少し上げ、全体的に“い”に近い発音をすると、相手に伝わりやすくなり、自然と“いい声”に聞こえるようになります」(耳鼻咽喉科専門医)
 言い換えれば、自然と笑顔に近い表情になるということ。いい声で話そうと努力すると、笑顔でコミュニケーションをとることになり、声のアンチエイジングにもつながるというわけだ。

 ただし、“単なる声のかすれ”と思っていても、実は重大な病が隠されている場合もある。
 「声を出したり、食事をしている時は、左右の声帯がピタリと付いて気道が閉じる。この機能は、脳から心臓の近くまで下降後、Uターンして食堂、気管、甲状腺の脇を通って声帯に至る『反回神経』が活動しているためです。これが障害を受けてマヒすると、声帯に隙間があいて、“空気の抜ける”ようなかすれ声になる。この反回転神経麻痺で疑われる病気には、脳疾患や胸部大動脈瘤、食道がん、甲状腺がんなどがあるのです」(専門医)

 いずれにしても、長引く声の変化には、重篤の病気が隠れている場合があることを覚えておくことだ。“かすれ”が1週間以上続く場合は、専門医に相談すべきだろう。