シンガポール国内タイトルを独占した、純日本人チーム「アルビレックス新潟シンガポール」

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 いま、アジアサッカーが熱い。東南アジアや中国、インドなどの新興国でサッカーが爆発的な人気を博してきており、その経済規模も日本サッカーを凌駕するものが出てきている。サッカーのレベルも徐々に日本や韓国などの強豪国に近づいてきており、色んな意味で無視できない存在となってきている。

 東南アジアのハブ都市、シンガポール。ASEAN諸国でも群を抜く圧倒的な経済発展を遂げている同国では、日本人も驚くような先進国らしい建物や施設が溢れている。2014年には建国50周年を記念した新国立競技場が完成し、スポーツ分野でもアジアのハブを目指している。一方、Jリーグ発足前の日本のように、街にはお金が溢れているものの、サッカー界はいまだ低空飛行を続けている。周辺国のサッカーが著しい成長を遂げる中、シンガポールの存在感が薄まりつつあり、同国サッカーファンには不安が募っている。

 シンガポールのプロサッカーリーグ「Sリーグ」に参戦しているアルビレックス新潟シンガポール(以下「アルビS」)が、今季の国内主要タイトルすべてで優勝する快挙を達成した。アルビSが獲得したのは、Sリーグ、シンガポールカップ、リーグカップ、コミュニティシールドの四冠。国内の主要タイトルを1つのクラブが独占するのは、1996年にSリーグが開幕して以降シンガポールでは初となる。

◆是永代表就任でクラブ売上げが8倍に増加

 アルビSは所属選手のすべてが日本人で構成される「純日本人チーム」。外国人チームを加えることで競技レベルの向上を目指したSリーグの呼びかけに応じて、2004年から同リーグに参戦している。日本国外のプロリーグに日本人選手だけで構成されたチームが参加しているのは、世界中を探してもアルビSだけだ。

 設立当初は親クラブであるJリーグ・アルビレックス新潟の下部組織として、トップチームの試合に出られない若手選手に経験を積ませる場として期待された。しかし新潟へ復帰して活躍する選手を輩出することはできず、チーム自体の成績も毎年リーグ中位に低迷していた。新潟サイドからは撤退を検討する話が上がったこともあるという。

 クラブが変わるきっかけとなったのが、2007年末に代表に就任した是永大輔氏による経営改革だ。それまでアルビSは毎年赤字を計上して親クラブの新潟から補てんを受けていたが、新規スポンサー獲得やコスト削減などの経営努力によって独立採算に切り替えた。さらにミニカジノを併設したクラブハウスを開設し、その売上金をクラブ運営に回すといった施策により、クラブの売上は是永氏が就任する以前の約8倍まで増加した。

◆アルビSから多くの選手が海外移籍

 運営資金が豊富になったことで、獲得する選手の質も向上した。今季のチームには、新潟や湘南、松本で活躍したベテランGK野澤洋輔や、元長崎のDF代田敦資、SリーグクラブでもプレーしたMF乾達朗といった経験・実力をもった選手が所属しており、チームの核となっている。今季の公式戦で20ゴールをあげてリーグMVPに輝いたFW河田篤秀(阪南大出身)は、J2クラブからの誘いを断ってシンガポール行きを決めており、アルビSに所属する選手個々の実力はここ数年で確実にレベルアップしている。

 選手が入団する際に決め手のひとつとなっているのが、海外への移籍をクラブが積極的に後押ししている点だ。これまでにアルビSから約50名の選手がアジアや欧州のリーグに移籍しており、海外への挑戦を志す選手たちにとって第一歩を踏み出す場として機能している。

 また、7年ぶりにチームに復帰した鳴尾直軌監督の指導も今季の躍進に大きく貢献した。所属選手の適性を生かすために開幕当初から3バックのシステムを採用。両ウイングバックがゴール前まで走りこむ積極的な攻撃で得点を重ねるとともに、守備時には5バックで自陣にカギをかける戦術は、4バックが主流となっているSリーグで大きな効力を発揮した。2009年にアルビSを率いた際は7位(11チーム中)に終わったが、その後J3・グルージャ盛岡で監督を務めたことで指導者としての経験値を高め、その成果がシンガポールで大きく花開いた形だ。