トランプ大統領誕生で、一時大幅安となった東京市場(ロイター/アフロ)

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 株式市場にとって、秋は忌まわしい季節だ。

 2008年の今頃を記憶している投資家は、なお多いだろう。リーマンショックによって10月から年の瀬にかけて世界経済は恐慌前夜の様相になり、株式市場は玉突き式の暴落に見舞われた。

 さらにシニアの投資家ならば1997年の秋を想起するのではないか。不良債権を原因とする金融システム不安が増幅して、四大証券の一角を占めていた山一證券、準大手筆頭格の三洋証券、都市銀行の北海道拓殖銀行が相次いで破綻したのも、この年の11月だった。翌年にかけて市場は幾度もの暴落に見舞われたものである。そして世界を震撼させた米国同時多発テロもまた2001年の初秋、9月。

 単なる巡り合わせとも捉えられるが、景況のサイクルを考え合わせれば要注意の秋とはいえるのだろう。

 12年11月に始まった今回の景気回復も早や4年(48カ月)を迎えている。ちなみに戦後これより長い景気拡大(回復)局面は、いざなみ景気(73カ月)、いざなぎ景気(57カ月)、バブル景気(51カ月)の3回しかない。

 関西在住のベテラン個人投資家は言う。

「薄商い(売買数量が少ない状態)で指標だけが上がっていく。バブル崩壊直前(89年秋から暮れ)の相場を連想する」

 局地バブルと呼ばれてきた都心部の不動産にも先行き不透明感は出ている。関係者は店頭に置いた某タワーマンションの立て看板を指差して「転売目的で買った顧客のものだが、もう何カ月も出しっ放しだ」と打ち明けてくれた。

●アベノミクスと株暴落

 気になるデータもある。アベノミクスと株式市場の暴落は意外に相性が良いのだ。過去20年間で日経平均株価が終値ベースで1日5%以上、下落した日は30回ある。このうち12回はリーマンショック、3回は山一、拓銀などが潰えた国内の金融不安によるもので、ほとんどは景気が後退、悪化するなかで発生している。

 一方、景気回復局面で生じたのは7回であり、内訳は東日本大震災によるものが2回、ITバブル崩壊関連が1回、残りの4回はアベノミクスによる現在の景気回復の過程で起こっている。もちろん株価の急激な上昇に伴ったスピード調整とも考えられるものの、通常ではほとんど起こらないはずの景気回復局面での暴落の頻発は、相場の脆い地合い、経済そのものの基調の弱さを示しているのだろう。

 ただ、株式市場の面白いところは、暴落がまた投資の好機になるところだ。指標にせよ個別銘柄にせよ、急激に下落した後は見直し買いや売り方の買い戻しの動きが生じる。また価格が大きく下放れることで、需給の真空地帯が生じがちになり、値を飛ばすことにもつながりやすい。過去の暴落で、時をおかずに暴騰をするケースが多く見られるのもこのためだ。

●打たれ強い銘柄

 それでは暴落が生じた際に具体的に、どのような銘柄を買うと報われやすいのか。TOPIX100銘柄を対象にして直近10年の代表的な3つの暴落(リーマンショック、東日本大震災、今年6月24日の英国EU離脱選択)とその後の株価の推移から、復元力に勝る銘柄を調べてみた。

 金融システム不安、未曽有の災害、そして海外発のアクシデントと異なるタイプの3つの暴落すべてで、その後短期間に暴落時の終値を上回ったのは14銘柄だった。業種は多様であるが、重厚長大系および生活必需型の企業が目立つのも、買い安心感を第一にする緊急時の投資家心理を映しているのだろう。

 折から暴落が好む季節、そして暴落に好まれるアベノミクス相場が続くなか、きわめて打たれ強い銘柄群として記憶しておいて良いのではないか。
(文=島野清志/評論家)

【3大暴落で高い復元率を示した14銘柄】
・クボタ(6326):13.4%
・三菱重工業(7011):9.9%
・大東建託(1878):9.8%
・ヤマトHD(9064):9.6%
・日揮(1963):8.4%
・大阪ガス(9532):8.1%
・住友金属鉱山(5713):7.4%
・東京ガス(9531):7.0%
・住友商事(8053):6.2%
・NTTドコモ(9437):5.9%
・旭化成(3407):5.3%
・東レ(3402):4.4%
・JFEHD(5411):3.6%
・新日鐵住金(5401)1.6%

※リーマンショックは08年10月8日終値と同年12月16日終値、東日本大震災は11年3月14日終値と同年同月22日終値、英国EU離脱は16年6月24日終値と同年7月1日終値との対比。昇率は3回の平均値。