代表デビューながら安定したプレーを披露。「落ち着いて、安定したプレーを見せることが1番」という身上を体現した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 オマーン戦、4-0の勝利はともかく、2得点と結果を出したFW大迫勇也とMF永木亮太がこの親善試合を意味のあるものにしてくれた。
 
 日本のボランチは南アフリカ・ワールドカップの最終予選から長谷部誠と遠藤保仁が軸になり、ブラジル・ワールドカップ直前に山口蛍が出てくるまで、そのふたりが不動だった。ハリルホジッチ監督になってからは柏木陽介や大島僚太を招集したが、基本は長谷部と山口のセットが主だった。
 
 だが、永木がその間に割ってきそうだ。
 
 オマーン戦、永木は特別目立ったプレーをしていたわけではない。黒子に撤し、湘南や鹿島でやっていたように「普通」にいつものプレーしていた。だが、日本代表で普通にプレーすることほど難しいことはない。
 
 個性の強い選手を攻守で支えるのは味方の特徴を理解し、対応するためにそれ相応の力が必要になる。また、初スタメンなのでアピールしたいという色気が出てきてもおかしくはない。出場機会の少ない選手は結果を出さなければ次の出場のチャンスが与えられないかもしれないからだ。
 
 しかし、試合後、永木はこう言った。
「アピールはポジションがポジションですしね。ボランチは攻守の要。落ち着いて、安定したプレーを見せることが1番。目立ち過ぎるのはよくないと思うんで、安定したところを見せられてよかったです」
 
 これが永木のボランチとしての意識だ。
 永木は、川崎フロンターレのジュニアユース時代、当時監督だった者貴裁(現湘南ベルマーレ監督)にボランチ転向を言い渡されて以来、常にその意識でプレーしてきた。そのため無理なプレーはしない。
 
 オマーン戦、攻撃では前線にパスを入れることを意識し、何本か縦パスを通してチャンスを作っていた。だが、難しい場合は横にパスを出す、あるいはサイドチェンジにするなどボールを奪われないように次の可能性を探してプレーしていた。ボランチからの縦パスはカットされるとカウンターを喰らうことになるので、一か八かのパスは出さないようにしているのだ。
 守備では前からアグレッシブにアプローチし、さらに球際の厳しさとボール奪取などいつも通りのプレーを見せた。

「守備は奪われた瞬間に前から行くことになっていました。前からプレスをかけていくやり方は個人的にはすごくやりやすかったですし、(山口)蛍との距離やバランスを注意しながらも上手くできたと思います」
 
 前から激しくプレッシングに行くスタイルは湘南のサッカーで磨かれた。また、プロ入り後、筋トレに励んだ成果は当たり負けせず、相手からボールを奪う力を向上させた。それをオマーン戦で披露し、絶妙なポジショニングでこぼれ球を拾った。日本がボールを奪われてもすぐに取り返し、スムーズに攻撃に移れたのは永木が効いていたからだ。
 
「こういう相手ですが、自分の中で準備してきたことができた手応えがあります。あとは周囲とコミュニケーションや連係を深めていけばもっと良い駒のひとりになれると思うんで、そういう風になれるようにやっていきたいです」
 
 自分のことを「駒」と言える選手はなかなかいない。それは年代別の代表の経験がなく、エリート意識がないからであろう。

 チームの勝利のために自分のやるべきことに撤する。ボランチがチームの攻守の要であるという自負を持ち、その責任感を果すべくプレーする。地味で面白みにかけると言われるかもしれないが、それが永木なのだ。
 
 今回、自分のプレーを見せても浮かれてはいない。キャプテンでレギュラーの長谷部の背中が見えてきたかと聞くと、「まだ、そこまでいっていないです」と、冷静に自分を見ている。