【日本サッカー見聞録】日本vsサウジはアジアのクラシコ?

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▽4-0の勝利を収めたオマーン戦から一夜明けた12日、日本代表は午前10時30分からカシマスタジアムで約2時間近く汗を流した。スタメン組はウォーキングとランニングで、1時間ほどでクールダウンを切り上げたが、途中出場した選手とサブ組はランニングとストレッチ、パス交換などで1時間ほど費やすと、そこからインテンシティの高い練習を1時間30分に渡り繰り返した。

▽最初は10メートル四方のスクェアにミニゴールを4つ置き、1対1でのゴールの奪い合いを2分交代で繰り広げた。マッチアップしたのは岡崎対森重、原口対長友、久保対槙野、小林対井手口、浅野対植田、香川対長谷部という組み合わせ。10メートル四方という狭いスペースのため、スピードで抜くわけにはいかない。そこでフェイントをかけるわけだが、互いに代表選手だけに、そう簡単には引っ掛からない。

▽そこでボールをキープするためスクリーンすると、守備側は腰や上半身を使ってボールを奪おうと身体を密着させて圧力をかける。同様にボール保持者も身体や手を使って押し返すため、必然的にハリルホジッチ監督の求めるデュエルが、身体のサイズに関係なく要求されることになる。この1対1が、選手のコンディションの善し悪しを見るには一番分かりやすく、香川と長友はプレーにキレ味を欠いていること、原口と小林は動きがシャープなことが一目瞭然だった。

▽次は同じスペースでの2対2に移り、岡崎&久保対森重&槙野、小林&原口対長友&井手口、長谷部&植田対浅野&香川という守備陣と攻撃陣の攻防を2分交代で実施。その次は2タッチという制約つきでの3対3で、こちらは森重&槙野&植田対浅野&久保&岡崎、長友&長谷部&井手口対原口&小林&香川という組み合わせだった。

▽この練習で、さすがと思ったのが香川だった。人数が増えると、味方の動きをダミーに、アウトサイドでパスを出すと見せかけて、柔らかい足首のスナップからインサイドに切り替えマーカーの逆を取る。コンディションとスキルは関係ないことを証明していた。

▽スモールフィールドでの3対3の次は、GKを入れてペナルティエリアでの6対6の攻防で、こちらの練習もかなりハードにぶつかり合っていた。この練習を見る限り、香川と長友以外はサウジアラビア戦に向け臨戦態勢に入っていると判断してもよさそうだ。

▽この練習を見学中に、カタールのテレビ局に務めている日本在住のシリア陣記者から逆取材を受けた。日本に来て4年目になるが、内戦が勃発して母国には戻れないでいるという。日本人記者には非公開となるサウジアラビアの練習も取材していて、FWのナセル・アル・シャムラニにインタビューしたところ、ファン・マルバイク監督とは「一言も話したことはない」と、選手と監督間でコミュニケーションはほとんど取れていないそうだ。

▽1週間前にプライベートジェットで来日した理由は時差調整よりも気候に慣れるためで、「フィジカルの準備はできているので試合に勝つ自信はある。3点は取れるだろう」と豪語していたそうだ。日本が最後にサウジアラビアと対戦したのは2011年1月のアジアカップのグループリーグで、この時は5-0と大勝している。過去の対戦成績でも日本が7勝1分け3敗と圧倒しているものの、アジアカップに3度優勝しているからなのか、サウジアラビアの人々にとって日本戦は特別な試合であり、彼らは両国の対戦を「アジアのクラシコ」と呼んでいるのは初耳だった。

【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。