『この世界の片隅に』 (C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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…前編「のんのホンワカ柔らかい声が耳に心地良い〜」より続く

【ついついママ目線】
『この世界の片隅に』中編
戦時下でも笑い合い、人間らしく生きる人々

こうの史代原作の同名漫画を劇場アニメ化した『この世界の片隅に』は戦争を題材にしているが、悲愴感ばかりが漂うわけじゃなく、ほっこりと優しい気持ちにしてくれるヒューマンドラマだ。

絵を描くのが好きな少女・すずは昭和19年に、18歳で周作に見初められてお嫁に行く。戦時中の物資が少ないなかでも、すずは好きな絵を描きながら、工夫を凝らして食卓を賑わせて、日々を送ってゆく。

配給物資が少なくなれば、近所の噂で情報を仕入れて、ハコベやスギナ、タンポポなど食べられる雑草を摘んでそれぞれにあった調理法で料理に加え、衣服がくたびれてくれば古い着物から上衣とモンペを作り直す。原作にもあるように、生活の知恵や暮らしぶりが解説も加えられて事細かに綴られる。

ほうほう、こんな風にして暮らしていたのかと興味深く、知的好奇心がくすぐられる。原作者もこれまでの戦争作品は文章を書く時間のある知識人や学生が手がけたものだから、時間に追われる普通の主婦の日常が伝えられていないと感じていたのだとか。

戦争ものにはつきものの戦場の悲惨さや、戦況さえも出てこない。だって多くの市井の人々はそんな情報もないまま、夜中の空襲警報や空腹に耐えながらもつつましく生活を営んでいたのだ。「ああ、こんな時代でも人々は生きていたんだな」と当たり前のことに改めて気付かされる。ここに登場する人たちは歴史上の人物でもなんでもなく、明日原爆が落ちるとも知らずに自分たちの生活を送っていたんだ、と。

大変な状況に置かれても、歯を食いしばって辛さを堪えるばかりじゃなく、ときにはふとしたことで笑い合いながら。そうでないとやり過ごしていけない、人間なんだから。(後編へと続く)

後編「〜とぼけたようなキャラに勇気づけられる」へ続く…

『この世界の片隅に』は11月12日より全国公開される。