『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン)

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 前著『日本人の99.9%はバカ』(コアマガジン)で「『モテキ』はサブカルではない」などの議論を巻き起こす主張をぶちあげ話題となった、ニューウェーブバンド・ロマンポルシェ。のメンバーであるロマン優光。

 最近では、ウェブサイト『ブッチNEWS』内で連載しているコラム「さよなら、くまさん」も好評で、コラムニストとしての人気も上がっているのだが、そんななか今月2日に出版した新著『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン)の内容をめぐり、いま現在、町山智浩、水道橋博士、春日太一、吉田豪といったサブカル界のオールスターメンバーが入り乱れた、バトルロワイヤル的論争合戦が起こっている。

 そもそものきっかけは前述『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』のなかで、映画評論家である町山智浩の最近の振る舞いを批判したことから始まった。

〈16年の「したまちコメディ映画祭」で町山さんがやらかした騒ぎ、個人的には本当にがっかりしました。やらかした内容の悪い意味でのバカバカしさ。そしてその後の対応。それ以外にも、ここ数年の町山さんに関しては「何だかな?」と首を捻るようなところを見る機会が多くなっているのです〉

 このイベントでは、今年6月に自動車事故により27歳の若さで亡くなった俳優のアントン・イェルチンを追悼する意味で彼が出演した映画『グリーム・ルーム』が上映され、そのトークショーに町山智浩が登壇していた。しかし、そのトークショーには不慮の事故死を遂げた若き俳優を弔う空気がなく、下品な下ネタで茶化したり、一緒に登壇した水道橋博士と男同士でディープキスするといったもので、この内容にアントン・イェルチンのファンは激怒。ネットを中心に大炎上した。

 本書ではこの他にも、テレビで放送されたAKB48(現・NGT48)北原里英の自室に雑誌「映画秘宝」があったことをあげて何の根拠もなく「女の子が急にマニアックなこと言い出したらたいてい男の影響」とコメントしたり、やたら公衆の面前でジョークの言葉として「ホモ」という言葉を使ったりといった町山の行動を批判。〈サブカルおじさんの害〉〈町山さんに代表させてしまったサブカルおじさんの問題。その一つが、いい年こいても大人にならないことです〉と断罪していた。

 もっとも、批判された当の町山はこれに反撃するかと思いきや、自身のツイッターでこんな反省のポーズを見せた。

〈俺の気を引こうとちょっかい出してくる奴らがいて、うるせーバカ、死ねバーカとか言いたくなるけど、ロマン優光がいつも見ているんだと思い出して自粛しよう〉

 また、今月5日に出演した『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)でも、一言目から「どうも、老害サブカルおじさんです」と自虐ギャグ。そして、「昔、自分で決めてたのは、『大人げなんてものは童貞と一緒に捨てたよ』ってしてたんですけど、『さすがにそれはまずいだろ』って言われてるんですよね。『拾ってこい』って言われてるんです。大人げをね」と、語るなど、まさに「大人げ」を取り戻したような対応をしていた。

 ところが、これに噛み付いたのが町山の弟子的存在で、同書のなかで町山と一緒に批判されていた水道橋博士。水道橋博士は自分に関する記述については、当初、〈全編に渡って僕が町山智浩さんと老害コンビで登場するので吃驚。もっと酷く書かれていると思ったがほぼ心当たりがあることばかりなので納得してしまった〉とツイートしていたが、後日、別の問題でロマン優光にこう絡んだのだ。

〈ロマン優光の本を今日2度読みしたが、実によく書けていて特に僕のところは感心したし、我が身に振り返って反省もするのだが、仮に『メルマ旬報』執筆者の芝尾さんの話を実名で書いていてたら、只じゃあ置かない。テメェの被害妄想と当たり屋人生に責任をとってもらうよ〉(原文ママ)

 ここで名前が出されている「芝尾さん」とは、ゲームクリエイター・作家の柴尾英令のこと(誤字の件に関しては直後に水道橋博士から訂正と謝罪のツイートが投稿されている)。ロマン優光は柴尾英令に関して以前から、彼の映画評論の姿勢に関して批判しており、そのことについて、柴尾英令を自身のメールマガジン『メルマ旬報』の執筆者として迎えている水道橋博士が彼を守る意味をこめて牽制したというわけだ。

 すると、博士のこのつぶやきに対して突如、時代劇評論家の春日太一がこんな疑問を呈した。

〈世間に名前を出して文章を書いている限り、なんらかの批判を受けることは当然。そして批判をする場合に相手を「実名」で指摘することもまた当然。それをして、なぜ「注意する」ということに繋がるのだろうか。そこが凄くモヤモヤするのは自分だけでないので、博士さんに説明していただきたいと思う〉
〈博士さんの書かれた、この140字から伝わるニュアンスをそのままに理解して、これを看過してしまうと、「実名を出しての批判」に対する萎縮やタブー視が広がってしまう恐れがある。博士さんは大恩人だけど、こればかりは、ちょっと・・・。おそらく何か別に伝えたいニュアンスがあると思うのですが〉

 春日は、表舞台で何らかの表現活動をしている限り批判を浴びることは避けられないわけで、博士はなぜそのような行為を封じる振る舞いをするのか、それは言論封殺ではないのかと主張したのだ。

 ここから二人の間でやり取りが始まるのだが、そのなかで出てきた水道橋博士の以下のツイートがまたもや新たな火種をつくる。

〈「サブカル」は町山智浩さんが作ったものだ。その町山智浩さんが今や老害だ。←「そうだ!俺が注意してやらねば」←ボクはその回路に全くなりません。面と向かって言えないことは書きません。それはただ卑怯だと思うから〉

「面と向かって言えない」ことは書くべきではないという意見なのだが、これをめぐって、今度はプロインタビュアーの吉田豪が参戦。こんな批判をツイッターで投稿したのだ。

〈その昔、鈴木庄一という伝説のプロレス記者が「相手の目の前で直接言えない批判は書くべきではない」と言ってたって話があって、一見すごく正論に思えるんですけど、それだと暴力的な相手や圧倒的な権力者に対する批判は相当な根性がないとできなくなっちゃうので、「直接言え」論には懐疑的です〉

 普段から色々な媒体で共演し、仲がいいように見えたサブカルスターたちが突然巻き起こしたバトルロイヤル的乱闘。若干、泥仕合にも見えるこの論争は、数日後、水道橋博士による以下のようなツイートで幕をおろした。

〈ネットの言葉遣いにガッカリしているボクが「只じゃあ置かない。テメェの被害妄想と当たり屋人生に責任をとってもらうよ」では確かに通用しないなー。Twitterの、この場が適切なのかどうかもわからないが、上記の言説部分、ロマン優光氏に撤回して謝罪します。それでも、どこかで話せる日を〉

 サブカル界のオールスターが入り乱れての論争合戦。批評をめぐるさまざまな問題が含まれていて、なかなか興味深い展開だったが、しかし、気になることが......。それは、いつのまにかロマン優光の存在がどこかにいってしまい、ロマンのいう「サブカルおじさん」たちのプロレスになってしまっていたことだ。

 ロマン優光は『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』でこのように綴っている。

〈男性サブカル有名人の顔を少し思い出してください。ほとんどがおじさんであることに気づくことと思います。星野源のようなミュージシャンの顔が入ってきている場合もあると思いますが、そういった人を除いた評論家やライターといった面子のほとんどがおじさんです。そして、それぞれの世間的知名度の変化があったり、いなくなった顔などもありますが、基本的に15年ぐらいは顔ぶれは変わっていないのです。そして力関係なども変わっていないのだと思われます。町山さんは20年ぐらいあんな感じでしたし、町山さん自体の世間的な知名度はどんどん上がっていきましたが、特に後進に道を譲るわけでもなく、相変わらずイタズラ小僧のままです〉
〈サブカルの業界は基本的に世代間抗争がないまま来たので、目立った対立がない代わりに上の世代に対して異を唱えにくい感じになっているのかも知れません。どんなに大好きで優しいお兄ちゃんであったとしても「町山兄ちゃんはもう中学生なんだから、僕たちの砂場から出て行け!」と今までに言っておかなければならなかったのかもしれません〉

 でも、この調子だと、おじさんたちはまだまだ「砂場」から出て行ってくれそうにない。
(編集部)