「今夜も、帰りたくないなあ」(写真はイメージ)

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「仕事をさっさと切り上げて早く帰りたい」と誰もが思うはずだが、それほど忙しそうでもないのに夜遅くまで職場に残っている同僚......。

その人がもしも妻子ある中年男性だったら、仕事熱心という以外の理由があるかもしれない。

「やたら残業したがる」人は要注意

「帰宅恐怖症」の夫が10人中3人いる――。2016年11月2日放送の「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)で、こんなテーマが扱われた。家で妻から小言や嫌味をぶつけられたくないので、仕事が終わっても会社を出たくない、退勤してもまっすぐ帰りたくない、というのだ。

マーケッターの牛窪恵氏は、仮に妻から週3、4回グチグチ言われると、1年間で144〜192回にも達すると指摘。「○○さんの旦那さんは幼稚園の送り迎えしてくれていいわね、でもウチは...」と夫としてのプライドを傷つける言葉をしょっちゅう耳にすれば、確かに帰宅する気は失せそうだ。牛窪氏が知る範囲では、「2年ぐらい蒸発して帰ってこなくなった」男性がいたそうだ。

「帰宅は妻と子が寝てから」「やたら残業したがる」「休みの日もなぜか率先して仕事に行く」「夕飯はほぼ外食」といった「症状」が出ている人は、帰宅恐怖症の可能性が高いという。ツイッターには、「全部当てはまる」「バリバリ当てはまって怖い」といった書き込みが散見された。また、以前の職場の上司が帰宅恐怖症だった、帰宅せず1か月も遠方に行ったままの知人がいたといったエピソード、さらには「夫が帰宅恐怖症にならないように気をつけたい」「男に限った話じゃないし」と、女性とみられる投稿も見つかった。

配偶者によるモラルハラスメント(モラハラ)で、「相手の顔を見たくない」「だから家に帰りたくない」となるのだろう。モラハラとは「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせること」(厚生労働省「こころの耳」ウェブサイトより)と定義されているが、この場合は職場でなく家庭のケースとなる。

挨拶や感謝の言葉をかけ、相手を思いやろう

帰宅恐怖症自体は、新しい話ではない。1990年1月24日付の読売新聞によると、医師の関谷透氏が「ストレス漬けで疲れ切っているお父さんが、奥さんの何気ない一言をきっかけに陥る心の病理現象」を「帰宅恐怖症候群」と名付けたという。「退社時になかなか自席を離れようとしない」「仕事もないのに休日出勤する」といった具合だ。

冒頭の「ホンマでっか!?TV」では夫の側からの見方が紹介されたが、夫婦間の諸問題を扱うママ向けサイト「パピマミ」では、妻側の相談として「夫があまり家に帰ってこなくなった」という内容が取り上げられた。この中でメンタルケア心理士の桜井涼氏は、帰宅恐怖症についてこう解説している。

「身体的な暴力と違い、言葉や態度での暴力は孤独を生み出します。人間にとって一番の恐怖は孤独感です。これを感じるような場所は居心地がいいはずありません。そのため、家に帰りたくても帰れなくなってしまうのです」

買い物を手伝ってもらったのに「何でこんなものを買ったの」と怒ったり、「くさいからあっちへ行って」と夫をさげすむような言葉を投げつけりする。前出の読売新聞記事で関谷氏が、症状を放置していると蒸発、さらには自らの命を絶つところまでエスカレートする恐れもあると指摘していた。

夫婦げんかをすることもあるだろう。でも、お互いが謝って仲直りする、挨拶や感謝の言葉をかける、相手を思いやるといった「当たり前」の行為の積み重ねが、帰宅恐怖症を防ぐ何よりの薬と言えそうだ。