働くだけで命が削られていく職場は、ブラック企業だけではなかった

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「過労死大国」とも呼ばれるニッポン。つい先日も電通の女性社員が過労自殺する痛ましい事件が起き、大きな問題になったばかりです。

 現在、厚労省は「週80時間を超える残業」を過労死のラインに設定し、ハードワークによる体と心の異変が確認されたケースにのみ労災を認めています。1か月の出勤を22日とした場合、1日当たり3.6時間ほどの残業をする計算です。

 が、実は、私たち労働者が自分の命を守るためには、厚労省の基準よりも、さらに少なめの労働時間を意識する必要があります。近年の研究によれば、ビジネスマンが体を壊さずに済む労働時間は、思ったよりはるかに短いことがわかってきたからです。

 もっとも有名なのは、2015年にロンドン大学が行ったメタ分析でしょう(1)。研究チームは、アメリカや日本から約60万人分のデータを集め、「週にどれだけ働くと死に近づくのか?」を調査しました。

 全部で8.5年分のデータを分析したところ、わかったのは以下のような事実です。

・週の労働時間が40時間までなら問題は出ない
・週の労働時間が41〜48時間になると脳卒中リスクが10%アップ
・週の労働時間が55時間を超すと脳卒中リスクが33%、心疾患リスクが13%アップ

 この数字は、週の残業時間の合計ではなく、あくまで出社から就業までの時間を合計したもの。週5日出社の場合は、1日の労働が8時間を超した時点で、脳卒中のリスクは高くなってしまうのです。

◆仕事量を決める権限や人間関係にも原因あり!?

 研究者によれば、労働が週40時間を超えたあたりから、多くの人はストレスが激増していき、睡眠やリラックスの余裕がなくなっていくんだとか。現代のビジネスマンで、この基準をクリアできている人は、かなりの少数派ではないでしょうか。

 さらに、ビジネスマンの命を削るのは「長時間労働」だけではありません。ここ数年の調査では、もっと悪影響の大きい要素がわかっています。

 2016年、スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授が、興味深い研究を行いました。過去に出た「仕事と健康」に関する228件の研究データから質の高いものだけを選び、「体を壊す職場の条件」について分析したのです。

 それぞれのランキングを見ていきましょう。

▼早死にの確率を高める要素トップ5

【1位】仕事の権限の少なさ
【2位】仕事がない
【3位】保険システムがない
【4位】長時間労働
【5位】仕事による家庭の不和

▼メンタルを病む要素トップ5

【1位】仕事による家庭の不和
【2位】仕事がない
【3位】仕事の責任が重すぎる
【4位】組織内の不公平
【5位】業績が不安定

▼病気の発症率を上げる要素トップ5

【1位】仕事による家庭の不和
【2位】仕事がない
【3位】業績が不安定
【4位】仕事の責任が重すぎる
【5位】仕事に関する権限の少なさ

 もちろん長時間労働も問題ですが、全体的に見れば、自分で自由に仕事をコントロールできるかどうかや、ハードワークによる人間関係の悪化などのほうが、ビジネスマンの寿命は削られていくようです。

 研究者は次のように言います。

『これらの要素は、いずれも人体に多大なストレスを与える。どころか、そのストレスが原因となり、食べ過ぎやアルコール中毒につながっていく』

 つまり、仕事で命を落としやすいビジネスマンとは、以下のようなタイプです。

・仕事の量やスケジュールを自分で決めることができない
・1日の残業時間が平均で3時間を超えるか、逆にやるべき仕事がほとんどない
・仕事のせいで、家族やパートナーとのコミュニケーションが取れない
・上司のえこひいきがヒドい

 ブラック企業は言うに及ばず、これぐらいの条件なら、普通に当てはまってしまう会社は多いのではないでしょうか。