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●国内の製造業、アフターサービスへの活用は進まぬ現状
経済産業省とアマゾン ウェブ サービス ジャパンはこのほど、AWSを利用した中堅・中小製造業向けIoTツールとそのユースケースを紹介する説明会を開催した。

初めに、経済産業省 製造産業局 参事官室 課長補佐(企業・調査担当)の安藤尚貴氏が、中堅・中小企業におけるIoTの活用状況について説明した。

安藤氏は製造業においてIoTの活用の度合いは分野によって大きな差があると述べた。設計・開発においては活用が進んでおり、「生産工程の見える化」などに比べ、アフターサービスへの活用は進んでいないという。

活用が進まない理由として、「何ができるかわからない」「技術がわかる人がいない」「データを共有することに不安がある」「データや通信方法の仕様が違うのでつながらない」など、"つながる"上での課題がたくさんあることが挙げられた。

そして、安藤氏はロボット革命実現会議の結果を踏まえ、ロボット革命イニシアティブ協議会を創設し、その中にIoTによる製造ビジネス変革ワーキングループを立ち上げたことを紹介した。

同ワーキンググループは今年7月に中間とりまとめを公表し、その中で2030年の製造業のあるべき姿の1つとして「中堅・中小企業へのIT/IoTの浸透」を掲げ、今後検討すべき事項の1つとして「中小企業がIoTを活用するための基礎インフラの整備」を挙げている。さらに、「中堅・中小企業サブ幹事会」が設置され、課題の整理とアクションプランの検討が行われている。

中堅・中小企業サブ幹事会では、整理した課題に基づき、当面取り組んでいくこととして「ツール情報の一元化」「事例集の策定」「IoT導入コンサルタントの育成・活用促進」を検討し、「第1回中堅・中小製造業向けIoTツール募集イベント」が開催されることになった。

説明会には、募集の結果、Webサイト上で公表されている「スマートものづくり応援ツール(106件)」に含まれているツールを提供する3社が参加し、ツールの紹介を行った。

続いて、アマゾン ウェブ サービス ジャパン 市場開発本部 事業開発本部 Mobile & IoT事業開発マネジャーの榎並利晃氏が、製造業における同社のサービスの活用状況について説明した。

榎並氏は、製造業でITが利用されている業務の全般で、AWSのクラウドサービスが利用されており、IoTの分野においては、データを収集した後に意味があるものを抽出するためにクラウドが利用されていると述べた。

IoTにおいて高いセキュリティが求められていることを踏まえ、AWSでは「堅牢なデータセンターを複数利用できること」「暗号化や多要素認証などのセキュリティ技術を活用していること」「第3者認証をいくつも取得していること」から、安全性を確保していることが紹介された。

同社はIoTプラットフォーム「AWS IoT Solution」を提供しているが、データ収集とリモート制御が主な用途であり、榎並氏は同社のサービスと組み合わせて使うことを進めていると語った。

●「スマートものづくり応援ツール」を提供する3社が説明
榎並氏が説明した後は、AWSを活用したIoTツールを提供する企業3社から説明がなされた。

トップバッターは、武州工業で代表取締役を務める林英夫氏だ。同社は「自動車用金属加工部品」「板金、プレス、樹脂加工」「自動制御機械製作」「医療・介護機器製作」などを行う製造業だ。

林氏は「同社ではこうした多岐にわたる業務を160人という少ない人数で小さなラインを連携する形で進めていることから、一人ひとりが役割を持って、会社の方針にベクトルを合わせて組織として進むことを奉仕としている」と述べた。それを支援する仕組みとして、「BIMMS」というツールを活用しているという。

BIMMSはAWSのクラウドサービス上で稼働しており、棚卸しを切り口に「倉庫在庫管理」「生産実績管理」「工程不良管理」など、日々決算ができる仕組みを提供する。

BIMMSは棚卸しに着目したシステムとなっているため、さまざまな業務が有機的につながっているから、入力内容が少なくてもさまざまな切り口で分析ができるという。林氏はBIMMSを「社内にある、たくさんの『気づき』を生むことができるシステム。気づくことで社員の自律を進めることができ、人手を使い分けることが可能になる。これは中小企業の共通の課題」と述べた。

このように、BIMMSは同社だけの課題を解決するにとどまらず、中小製造業にとって普遍的な課題を解決できることから、「BIMMS on AWSデータ収集ツール」として2017年3月から提供を開始する予定だ。

次に話をしたのは、スタイルズで代表取締役社長を務める梶原稔尚氏だ。同社はシステムの開発から運用まで手がけるITベンダーで、IoT関連のサービスとして、IoT/GPSトラッキング・プラットフォーム「Trackrr.io」を提供している。

同サービスのSDKをデバイスに組み込むことで、そのデバイスからGPSデータを収集して、データを同サービスで管理することができる。

梶原氏は同サービスの特徴として「AWS上のマネージドサービスにより提供されるサーバーレスアーキテクチャ」であることを挙げた。クラウド上にサーバを構築しないため、サービスを使わなければまったく料金が発生しないという。また、SIMは安い固定料金と従量課金で提供される「SORACOM Air」をサポートしているため、低コストで利用を開始できるというわけだ。さらに、AWSを利用しているため、利用量が増えても容易に拡張することが可能だ。

同サービスのユースケースとしては、「中小製造業や卸売り業の配送管理」と「長距離バスのための運行情報の公開」があるという。

最後に、スカイディスクのCOOを務める金田一平氏が話をした。同社はIoTセンサーデバイスの開発、IoT分野別サービスの提供、IoT分析・AIクラウドの構築などを行っている。

金田氏は同社のサービスの特徴について「センサーデバイス、通信デバイス、AI/クラウド、アプリケーションをワンストップで提供していること。国内でこれらすべてを提供しているのはわれわれだけと自負している」と語った。

同社のセンサーは脱着式であるため他分野での応用が容易であり、通信モジュールとBody Coreを共用しているためコストが抑えられているという。そして、IoTプラットフォームのセンサーデータの蓄積・分析・AIをAWSで構築している。「将来、数十万のデバイスのデータを蓄積・分析することを見据えて、AWSを選んだ」と金田氏。

このようにワンストップでSIではなくパッケージ化して提供される同社のサービスは「デバイス(センサー、通信)が高価」「システムが大規模、複雑、高価」「導入に時間がかかる」といった、IoTサービスの導入を阻害する要因を解消するという。

今後、中小企業向けのIoTサービスについては、中小工場向けの余地保全をパッケージ化し、月額課金モデルによって導入しやすさを実現していく。