米・保健福祉省が新たに7つの物質を「発がん性」と認める(出典:https://www.nih.gov)

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米・保健福祉省が第14次となる『発がん性物質報告書』を発表した。ウイルス5種類を含む、7種類の“発がん性物質”が新たに認められたが、あまり聞き慣れないエプスタイン・バール・ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス、コバルトなどの詳細も気になるところ。これらは一体どのような危険があるというのだろうか。

このたび7つが新たに加わり、計248種類となった米・保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services 以下HHS)が認める『発がん性物質』。添付した画像の表は上から順にエイズウイルス1型(HIV-1)、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、トリクロロエチレン(TCE)、金属のコバルトおよびコバルト化合物を示している。

まずは認識されている率が高いと思われる順に触れていきたい。カポジ肉腫、悪性リンパ腫を引き起こすとされてきた「カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)=ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)」、そして「エイズウイルス1型(HIV-1)」についてはもはや説明は不要であろう。男性同士の性的接触での感染率が高いが、感染している女性との安易な性行為が原因になることも多い。KSHVとHIVの両方に感染することも多く、症状が特に重くなることがわかっている。

無色透明の有機塩素系溶剤である「トリクロロエチレン」は、ドライクリーニング工場、半導体工場、軍事施設などで汚れを洗浄する目的で用いられてきたが、廃液の投棄による地下水汚染を理由に使用は規制されている。これまでも肝臓、すい臓および腎臓ガンの“原因として疑われる”とされてきたが、米政府機関がそれを『発がん性物質』と明示したことにより規制は一層進むものと期待される。

成人T細胞白血病の原因とされる「ヒトT細胞白血病ウイルス1型((HTLV-1)」。日本にも100万人を超すキャリア(持続感染者)がいるとみられるが、白血病を発症するのは主に40代の中年以降。男性が陽性である場合、2年後には20%の確率で妻やパートナーの感染が確認されることから、現在は性行為によるHTLV-1感染をいかに防ぐかが重要になっている。また母乳を通じて5%ほどの子が感染するが、現在は妊娠中にその検査も行われているため母子感染の心配はないもよう。また献血時にも検査があるため輸血に関しても現在は心配ないという。

続いて普段あまり聞くことのない、あるいはそれほど有害という認識を持たれていなかった残りの3種、エプスタイン・バール・ウイルス(EBV)、メルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)、金属のコバルトおよびコバルト化合物について。EBVは実は95%の人が幼児期を含めた成長段階で気づかぬうちに感染し、軽い風邪のような症状を呈するものだという。しかし若年成人になってからキスなどの濃厚な接触で初めて感染するとノドの痛み、激しい疲労感、引かない高熱、リンパ節の腫れを伴う「伝染性単核球症」を発症することがある。その場合は脾臓がダメージを受けていることから、破裂を防ぐために1か月ほど重いものを持ったり人と体が衝突するスポーツは控えなければならない。かつてEBVは「慢性疲労症候群」の原因ともいわれたが、現在それは否定されている。ただし、悪性度の高い非ホジキンリンパ腫の「バーキットリンパ腫」、あるいは鼻、咽頭および胃のガンを発症させることがわかってきたという。

「金属のコバルトおよびコバルト化合物」について。高温に耐えることから金属の中でも加工しやすく、鉄より酸化しにくい上、酸やアルカリに強い。この特性を生かしてコバルトは一般人の生活の中では磁石、リチウムイオン二次電池、そして治療した虫歯の被せものや金属床の義歯など広く使用されている。また特に問題とされるのが特殊鋼、超硬工具、触媒、陶磁器の顔料など各種の工場で使用されているコバルトと炭化タングステンとの合金およびコバルト化合物で、人体から出る塩素イオンと反応して皮膚炎や喘息などのアレルギーを発症させるほか、マウスなど実験動物の生体内に被験物質を投与する“in vivo”試験で発がん性が確認されたという。