映画『雨にゆれる女』:青木崇高、初主演という山を越えてたどり着いた場所

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NHK朝ドラ『ちりとてちん』や、アクション大作『るろうに剣心』で人気を博した俳優・青木崇高が、満を持して挑んだ初の単独主演映画『雨にゆれる女』。

バックパッカーとして全大陸を制覇したという自由人・青木崇高が、ヨーロッパ放浪中に半野喜弘監督と出会ったことで、本作『雨にゆれる女』は生まれた。

映画は、ある事件をきっかけに別人になりすまして生きる孤独な青年(青木崇高)と、彼と心を通じ合わせる秘密を抱えた謎の女(大野いと)の悲しい運命を描いたサスペンスドラマ。ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクーらアジア映画界の巨匠たちの映画音楽を手がけてきた日本人音楽家・半野喜弘が初監督を務めた。

タレント・優香との結婚でも話題を集めた青木が、これまでのイメージを覆すような繊細な演技で新境地を切り拓いた本作について語った。

ー青木さんはNHK大河ドラマ「平清盛」の弁慶役、『るろうに剣心』の相楽左之助役など、豪傑というイメージが強いですよね。本作では、影のある繊細な男を演じられていて新鮮でした。

ダ糖イ琵テ淫イ任いΔ函テ淫イ離ぅ瓠璽犬強いですよね。でも僕自身、じっくりと内面を撮ってもらうような静かなドラマ作品が結構好きなんです。イ犬辰般曚辰討い襪韻鼻△海い弔っとこういう気持ちなんだろうなイ澆燭い福見ている人が想像できる余白がある作品や演技が好きです。

ーお会いしてみて、そういった役柄の方が本来の雰囲気に近い感じがしました。

確かにそうかもしれないです。派手な時もありますが、外に一歩も出たくない、一人でじっとしていたいという時もあるし。半野監督も、どちらかというと僕のダ糖イ良分を描きたいと思ってくれていたので、作品を見てそう感じていただけたのならうれしいです。


(C)「雨にゆれる女」members

ー監督とは14年前、バックパッカーとしてヨーロッパを旅していた時に出会っているんですよね。

今さかのぼるとすごい偶然ですね。僕は旅をしている時、ノリのいい人がいたら一緒にご飯とか食べに行くんです。その時、僕は一人でパリの街をぶらぶらしていて、たまたま見かけた日本人グループに「こんにちは」って軽く話しかけて、一緒に飲んだんです。そこにいた一人が、半野監督だったんです。

ーその時、すでに俳優として活動をしていたんですか?

事務所には入っていたけど、ほとんど役者としては活動していなかったです。ちょうど映画のオーディション中だったんですけど、一次が終わった後に旅に出ちゃったんですよ(笑)。

ーえ! オーディション通ったらどうするんですか?

手応えを感じていたし、実際通ってました(笑)。でも、「チケット取ってるから行きます」と事務所に伝えて。一カ月旅に出て、戻ってきたらオーディションが4〜5次くらいまで進んでいたという(笑)。そんな感じなので、役者としてのキャリアはまだまだ全然でした。

ー14年前に半野監督に出会った時は、「一緒に映画を作ろう」という話をしていたわけじゃないのですね。

全然です。その時は、半野さんも映画を作ろうなんて思っていなかったんじゃないかな。その10年後くらいにまた偶然、行きつけのご飯屋さんで半野さんと再会したんです。それが2年くらい前。そこで、半野さんが「今度一緒にやる? 俺、脚本書くよ」と。飲み屋での会話って全てが実現するわけじゃないですけど、その後、撮影でパリに行く時とか半野さんに会って、お茶とかお酒を飲みながら、「こういう作品を作りたい」みたいな話し合いをしました。

ーそれでは、二度目の偶然の再会から企画が動き出したんですね。半野監督は、青木さんを当て書きして脚本を書いたのでしょうか?

当て書きという感じではないけど、「この役は青木崇高にやってもらいたい。テ淫ヅなものではなく、内なるものを出した青木崇高の主演作にしたい」と言ってくれました。


(C)「雨にゆれる女」members

ー相手役の大野いとさんですが、これまでの作品にはなかった表情を見せていて、いやらしい意味ではない色気を醸し出していました。

大野さんが演じた女性は難しい役で、キャスティングも難航していたと思うんですが、大野さんに決まってよかったと思います。良い意味で何色にも染まっていない、これから何色にも染まれる可能性のある役者だなって思いました。

-お互いに新しい表情を引き出し合っているような感じがしました。

設定が難しかったので、なかなか感覚だけではできる役ではないんです。大野さんは真面目な人なので、ちょっと背負い過ぎてしまうところもあって。鎧をつけて動いているような時なんかは、「監督、今たぶん全てを背負って動きにくくなっていると思う」とか話したり。僕もそうですが、役者ってそうなりやすいと思うんですよね。でも、彼女はいつも真っ白なままでいてくれたと思います。カットがかかったら、「俺の腕、引っ掻き傷すごいやん」みたいなこともあって(笑)。難しい役だったと思うけど、彼女の心の声が聞こえきたときは僕もグッときました。

ー監督によって演出のスタイルはさまざまだと思いますが、音楽家ならではの演出だなと感じたことはありましたか?

まず、ロケーションへのこだわりがすごかったです。主人公が住む寂れたアパートを見つけた時は、半野さんも「勝ったと思った」と言っていました。セリフや声のトーンにも強いこだわりがあって、「語尾はなるべく切ってくれ」と言われました。その方が音として人の心に残るらしいんです。カメラワークも監督の頭の中にしっかりとあって、撮影しながら頭の中で編集でつないでいるような感じ。音楽も時間芸術ですが、時間とともに芸術を作るセンスに長けた人なんだなと思います。時間とともに音や色彩の移ろいがありました。

ー日本映画らしさの中に、アジア圏独特の湿気や色味も感じました。

それは半野さんが、ホウ・シャオシェン監督やジャ・ジャンクー監督など、アジア圏の監督たちと仕事をしているからかもしれないです。金属や建物もどこか錆びていて、真っ新なものが全然出てこないですよね。

ーセリフで説明しない分、微細な表情の変化などが重要になってきますよね。主人公が働く工場でマグマみたいなものが吹き出す画も、主人公が胸の内に秘めているグツグツ煮えたぎる感情のメタファーなのかなとか、自由に想像できる余白があって面白かったです。

そうやって余白で観客の方が想像して見てくれるのは、すごくうれしいです。僕自身も、リハの感覚をいかに新鮮に保つかとか、どれだけこのゴ廈イもつのかとかチャレンジがあったし、いやらしくない形で芝居を探っていけたのは面白かったです。そういうのが映画の面白さだと思うし、それが見ている人の作品になる瞬間です。僕もそういう映画が好きです。


(C)「雨にゆれる女」members

ーそれでいて観客を飽きさせない仕掛けも随所に見られて、これはアートフィルムの皮を被ったエンタテイメントなんだなと、職人としての半野監督の強いプロ意識を感じました。

リアリティじゃなくて、ナチュラルにこだわっているんだと思います。それはドキュメントではなく、エンタテイメントを作っているんだという意識に近いのかもしれません。僕自身、完成した映像を見た時に目を離せないものになっていたし、見ている人の感情に仕掛けていくということをきちんとやっていますよね。

ー現在、テレビに映画に舞台にと引っ張りだこですが、初単独主演映画がこのタイミングで封切られることも感慨深いですね。

タイミングってコントロールできないものですが、この作品も今後のキャリアにきっと良い影響を与えてくれるんじゃないでしょうか。今は作品が集中していて面白い時期ですし、プライベートでは結婚しましたし、色々なことが大きく動いている時期。でも、今が絶頂期と言ってしまうと、この先ないのかなという感じもするし・・・(笑)。

ーでも、そのツ困イナイ箸靴討海寮茲眤海い討いかもしれませんよ。

そうですね(笑)。良い状態なら、ありがたく受け取ろうという感じです。何か意味があったとしても、気付くのはだいぶ先なのかなと思うし。今は一個一個、丁寧に向き合っていくこと。

何年も前ですけど、入れ込み過ぎて、それがマイナスに働いていた時期もあったんです。今はちょっと余裕も出てきて、キャリア的に面白い段階に来ている感じがあります。監督やスタッフとコミュニケーションをとりながら、ひとつひとつ丁寧に作っていく。その達成感を共有したいという思いが、日に日に大きくなってきています。良い作品を世間に出したいし、スタッフ全員がイ海虜酩覆亡悗錣譴討茲ったなイ隼廚┐觝酩覆鮑遒蠅燭い隼廚辰討い泙后『雨にゆれる女』はいわゆる大作映画ではありませんが、ノ匹い發里鮴犬濬个靴燭イ箸いΠ媼韻とても高い映画で、国際映画祭に出せることはうれしいです。

ー今年の東京国際映画祭には出演作が2本も出品されるんですよね。やはり絶好調ですね。

海老で鯛を釣って、その鯛でまた何かを釣って、みたいな(笑)。釣りを止めず、どんどん大きなものにチャレンジして、しっかり掴みに行くという姿勢になってきています。脇目も振らずギラギラだった時期は過ぎたけど、今も心は燃えていて、視界がクリアになってきた感じがするんです。

ーひとつ山を登ったことで雲が晴れて、少し周りが見やすくなったという感じですかね。

僕は今でも下を見ないで、空を見てますよ! これからも山を登り続けるし、これからは単純に山の高さにこだわるんじゃなくて、自分が挑戦しているかどうかの勝負になってくるんじゃないかと思います。長い時間をかけてなだらかな山を登ってみたり、山の断崖を攻めてみたり、まだまだ色々なアプローチがあると思う。とにかく挑戦することだけはやめたくないなと思っています。全然山とか登らないくせに、こんなこと言ってますけど(笑)。

ーちなみに、旅は続けるんですか?

現状はなかなか忙しくて難しいですが、今は夫婦二人で散歩とか行くだけでも楽しいんです。散歩すらも旅に感じるくらい。それは一人の時には味わえなかったものです。

『雨にゆれる女』
監督・脚本・編集・音楽:半野喜弘
出演:青木崇高、大野いと、岡山天音ほか
配給:ビターズ・エンド
11月19日(土)テアトル新宿にてレイトロードショー。
http://www.bitters.co.jp/ameyure/

青木崇高(あおきむねたか)
◯1980年3月14日生まれ、大阪府出身。主な出演作にドラマ『BORDER』(2014)、『石の繭』(2015)、『ちかえもん』(2016)、
映画『一命』(2011)、『渇き。』(2014)、『蜩ノ記』(2014)、『日本で一番悪い奴ら』(2016)など多数。アクション大作『るろうに剣心』三部作(2012〜2014)では、人気キャラクター・相楽左之助役として人気を博す。現在NTVドラマ『地味にスゴイ!』が放送中。WOWOWドラマW『水晶の鼓動』が11月13日よりスタート。2017年には舞台『髑髏城の七人』や、映画『雪女』(東京国際映画祭コンペティション部門選出)の公開が控える。
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