“仮想サウジ”として対戦するオマーン代表【写真:Getty Images】

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“仮想サウジ”オマーン代表とはどんなチームか?

 日本代表は11日、オマーン代表と親善試合を行う。この試合は15日にロシアワールドカップアジア最終予選でグループ首位に立つサウジアラビア戦に向けたテストマッチとなる。オマーン代表監督も「サッカーに対する考えは似た様なものを持っている」と話すように、サウジアラビアと似ていることを認めている。果たしてオマーン代表は“仮想サウジ”に適任なのだろうか? 両国の共通点と違いを分析する。(取材・文:河治良幸)

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 オマーン戦は4日後のサウジアラビア戦に向けて重要なテストになる。ハリルホジッチ監督は「オマーンは少しサウジアラビアに似ているということで選んだ」と語っており、新戦力のチェックやコンディショニングに加え、“仮想サウジアラビア”であるオマーンを相手に戦術的なテストも行うはずだ。

 実際にオマーンを指揮するスペイン人のロペス・カロ監督は2013年1月から14年12月までサウジアラビアを率いているが「サッカーのインテンシティー、サッカーに対する考えは似た様なものを持っている」という。ただチームの完成度や個人の質に関してはサウジアラビアの方が上という評価だ。

 敗退した二次予選の終盤にフランス人のポール・ル・グエンからオマーン代表を引き継いだカロは若手を中心としたチーム作りに取り組んでいる。今回も来日メンバーにはアジア最高のGKとも評価されるアル・ハブシなどは含まれず、23人のうち17人が90年以降の生まれという構成。10代の選手も2人含まれている。特にボランチを担う18歳のMFアル・ヤハヤエイは非常に期待されるホープだ。

 カロ監督はオーソドックスな3ラインの守備とサイドアタックというオーソドックスな欧州のスタイルをオマーンに導入している。オランダ人のファン・マルバイク監督率いる現在のサウジアラビアが[4-2-3-1]をベースとするのに対し、オマーンは中盤をよりフラットにする[4-4-1-1]を用いる違いはあるが、大きな意味での戦術は似通っている。

オマーンとサウジアラビア。共通点と違いは?

 9月には欧州のアイルランドとアウェーで親善試合を行い0-4で敗れたが、その時の先発メンバーから7人が来日しており、彼らはそのまま日本戦でも先発する可能性が高い。

 エースのアル・マクバリ、セカンドトップのアル・カルディ、ボランチのアル・サーディとアル・ヤエヤイ、守備の要であるセンターバックのマルブークというセンターラインは崩さず、サイドはフレッシュな選手にチャンスを与えることが予想できる。

 自由にプレーさせれば危険な選手はいるし、パターンもあるが、後ろからのビルドアップの質はそこまで高くないため、日本がしっかり前線からタイトにプレッシャーをかけていけば守備面でもそれほど危険なシーンは作られないかもしれない。ただ、そこで少しでもルーズになれば攻撃陣の個人能力とカロ監督が意欲的に取り組んでいると思われるサイドアタックの餌食になる危険はある。

 サイドからチャンスの起点になるのはサイドハーフのサレハで、左右のサイドハーフを担えるのが持ち味だ。縦のドリブルと正確なクロス、機を見たドリブルからのミドルシュートなどは注意が必要。加えて相手の守備をサイドに引き付け、縦の2トップに前を向いて決定的な仕事をさせることもできる。このあたりはサウジアラビアの要注意選手であるナワフ・アル・アビドに通じる部分がある。彼をSBがいかに封じるかは守備面の鍵になる。

 前線に張るアル・マクバリは縦の突破力に優れ、強引な仕掛けでファウルをもらうシーンも多い。セカンドトップのアルハルディは万能性の高い選手で、状況に応じて1タッチのパスもドリブルで切り込むこともできる。この2人に簡単に前を向かせてしまうと、危険な位置でのファウルや最悪の場合はPKにもつながるため、ボランチの選手が厳しくプレッシャーをかけ、CBと挟み込む状態を維持したい。

日本がオマーン戦でテストすべきこと

 日本の守備にとって課題となるセットプレーは通常5人の選手がターゲットとなるが、やはり最も危険な選手はFWのアル・マクバリだ。178cmとそれほど大柄ではないが、仲間をダミーにしながらフリーで合わせるのがうまい。キッカーもそれを分かって合わせてくるので、屈強なCBのマルブークなども危険とはいえ、アル・マクバリを絶対に逃さない様にする必要がある。日本の場合はニアのストーンになる選手を除いてマンツーマンなので、誰がどの選手に付くかも見所だ。

 オマーンの守備は奇麗な3ラインのゾーンだが、タイミング良く間を突かれた時にチャレンジとカバーがはっきりせず、間でボールを受けられてしまうケースが目立つ。そうなった時に側面から当たって潰せるほどの強さも無いため、サイドから中にワンツーなどで鋭く入っていく仕掛けは有効だ。

 サウジアラビアとの大きな違いはCBの強さとクオリティだが、齋藤学などがワイドから斜めに鋭く仕掛けていく様な特性をオマーン戦で発揮できれば、サウジアラビア戦に向けて格好のアピールになることは間違いない。

 また、1トップでテストされる可能性が高い大迫勇也はゾーンの間でボールを受ける動きを得意としており、ペナルティエリアの手前でボールを持てばドリブルでゴールに向かうこともできる。そこから危険なシュートに持ち込めればベストだが、ファウルをもらえばPKも獲得できる。実際にケルンでも何度かPKを獲得しており、PKやセットプレーの得点が他国より少ないことを嘆く指揮官にとっても武器が増えることになる。

 オマーンのカロ監督も認める通り実力はサウジアラビアより下回るし、ホームの親善試合であることを考えれば仮に快勝したとしても手放しで称賛することは禁物だが、ここでしっかりテストや確認をして、良い準備で本番のサウジラビア戦を迎えたい。その意味では本当に貴重なテストマッチだ。

(取材・文:河治良幸)

text by 河治良幸