そごう・西武「3店売却」、次なる百貨店再編の台風の目は?

写真拡大

■そごう・西武「関西3店売却」と業界大再編

経営トップの人事を巡って揺れたセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)と資本関係を結び、子会社のそごう・西武が運営する関西立地の3つの百貨店を譲り渡す方向だ。H2Oは、大手百貨店の高島屋とも資本業務提携関係にある。H2O傘下の阪急阪神百貨店を中心に、大型の業界再編に発展するのだろうか?

大学新卒で百貨店に入社し、その後、職場はグループ内のスーパー、それにコンビニに移った人物を取材したことがある。第三者からすれば、時代時代における小売業のメインストリートを歩んだとも見えるが、当の本人は、異動のたびに「格落ち、都落ちだ!」と叫んでいたものだ。

コンビニが小売りの中心を担っている今日では想像もつかないだろうが、かつて小売りのトップに君臨していたのは百貨店。その百貨店が苦境に立たされている。

セブン&アイHDがH2Oとの資本業務提携に動いたのも、百貨店事業を担当するそごう・西武が、グループ業績に寄与していないためである。旗艦店である西武池袋本店こそ、伊勢丹新宿本店、阪急本店に次ぐ売り上げ規模を誇るものの、全店ベースでは稼ぎは少なく、12年度と15年度は最終赤字に転落。そごう柏店の閉鎖などリストラに追い込まれているほどだ。

そもそも、百貨店を取り巻く環境は年々厳しさを増している。ここ2、3年は中国人を中心とした“爆買い”に支えられて売り上げの低迷傾向に歯止めがかかっていたが、ここにきて高級品を中心とするインバウンド需要が急失速。業績予想の下降修正に追い込まれる百貨店も出ているほどだ。大手5社でいえば、売上高営業利益率は高くても4%前半で、1%割れも珍しくないように、利益率は低空飛行が続いている。

百貨店の低迷は、業界再編と距離を置いてきた高島屋の推移を見れば明らかだ。

百貨店事業をダイレクトに反映している高島屋の単体ベースでいえば、2002年2月期の売上高約1兆円は、16年2月期には7000億円と、およそ15年で3割のダウンである。同期間、従業員はほぼ半減。あまり変化が目立たないのは低い営業利益率、それに従業員平均年間給与である。

1000億円を超えていた高島屋の単体ベースの人件費総額は年々減少し、現在は600億円を割り込んでいるように、売上高より減少率は大きいが、同時に従業員も減少しているため、平均給与が維持されているというところだ。

■セブン&アイ“脱カリスマ経営”は成功するか

もちろん、各社は抜本的な経営の立て直しにチャレンジしていることはいうまでもない。

三越と伊勢丹の統合会社、三越伊勢丹HDは、売上高日本一の伊勢丹新宿本店、それに店舗としては資産価値が日本一の三越日本橋本店を両輪に、独自商品や小型店舗の開発にも着手。百貨店としてのさらなる付加価値を創造しようというわけだ。

大阪店、日本橋店、横浜店の3店舗で1日の売上高が3億円を超えているように、平均的に稼ぐ店舗が多い高島屋は、海外展開をテコにした成長戦略を推進。シンガポール、中国・上海、ベトナム・ホーチミン店に続き、17年にはタイ・バンコク店を開業する。

大丸と松坂屋で結成したJ.フロントリテイリングは、ファッションビルを展開しているパルコを子会社にしたように、脱百貨店を指向。松坂屋銀座店跡地は商業施設に生まれ変わり、百貨店としての復活はない。積極的にテナントを誘致するなど、ビル賃貸業やショッピングセンター化を推進しているが、その象徴は大丸東京店だ。

JR東日本に年間53億円の賃料を支払っている大丸東京店の1人平均単価は2000円弱と、神戸店の7000円強と比べ安価だが、弁当購買客など1日の集客は10万人を超す。1日平均売上高は2億円。それでいながら店舗運営スタッフは、パートを含めても約80人。テナント中心の店舗になっているからだ。

阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合して誕生したH2Oリテイリングは、阪急本店や阪神梅田本店を中心に、年商3000億円規模で100店舗に迫るスーパーのイズミヤを傘下に収めるなど、関西で集中出店。そこに、そごう神戸店など、そごう・西武の関西3店舗を加える予定だ。

そごう・西武が譲渡を予定している関西3店合計の店舗従業員は406人、パートは650人である。店舗資産価値は324億を超す。それら3店舗を含め、そごう・西武傘下の全店の行方にも注目したい。コンビニのセブンイレブンを中心とするセブン&アイHDが、不振事業の百貨店事業、それにイトーヨーカ堂を中心とするスーパー部門をどう立て直していくのか。鈴木敏文最高経営責任者(CEO)を退陣に追い込んだ、井阪隆一社長ら新経営陣の手腕が問われる。

(ジャーナリスト 鎌田正文=文)