『君の名は。』で人気のRADWIMPSが、あるバンドと激似?聴き比べてみた

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 興行収入170億円を突破した、映画『君の名は。』。台湾でも大ヒットを記録し、来年1月には韓国でも公開予定とのことで、まだまだブームは続きそう。バンド「RADWIMPS(ラッドウィンプス)」が手掛けた音楽もすっかりおなじみになったのではないでしょうか。

◆以前から話題の“RADWIMPSとBUMP OF CIHCKEN、ソックリ問題”

 ところが、この大ブレイクによってありがたくない話題が再燃してしまったのです。それは、“RADWIMPSとBUMP OF CIHCKEN(バンプ・オブ・チキン)のソックリ問題”。

⇒【YouTube】はコチラ 前前前世 (movie ver.) RADWIMPS MV https://youtu.be/PDSkFeMVNFs

 確かに両者ともギター中心のポップロックという傾向は同じなのだと思います。ですが改めて両者を聴き比べると、それなりに違う点があることに気付きます。

⇒【YouTube】はコチラ BUMP OF CHICKEN『天体観測』 https://youtu.be/j7CDb610Bg0

 いくつかポイントに分けて見ていきましょう。

◆ 伐 VS セカイ”な世界観は共通してるかも

 でも、みんな根拠もなしに“似てる”と感じているわけではないはず。では一体何が同じなのでしょうか?

 浮かんだのが「セカイ系」というワードでした。(その界隈には全く疎いので誤用だったらスミマセン)。

 たとえば、「おしゃかしゃま」(RADWIMPS)と「Hello, world!」(BUMP OF CHICKEN)は同じことを言っているようにしか読めないのです。

<もしもこの僕が神様ならば 全てを決めていいなら 7日間で世界を作るような真似はきっと僕はしないだろう>
(「おしゃかしゃま」)

<選んだ色で塗った 世界に囲まれて 選べない傷の意味はどこだろう>
(「Hello, world!」)

『トイ・ストーリー』の音楽で有名なランディ・ニューマンという作曲家が、昔こんなことを言っていました。

<でも新聞とかに「今年最も意味のある歌詞」として名前が挙がるのが、クラッシュやU2だったりするわけだろ。「俺たちは壁の中にいる/本当の壁は外にある……」とかさ。U2やクラッシュの音楽をすべて知っているわけではないから、それだけで判断したくないけど、彼らはそういう事柄を選んで、書き留めているだけじゃないか。>
(『インスピレーション』 著 ポール・ゾロ 訳 丸山京子)

 今回改めて思い出したのが、この言葉でした。彼らはファストファッション的なU2やクラッシュなのではないか、と。もちろん全て知っているわけではないので、それだけで判断してはいけないのですが。

◆歌詞の果たす役割が違う

 ここから相違点を見ていきましょう。

 まず歌詞の扱い方。大まかに言うと、音楽優先なのがRADWIMPS。メッセージやイメージを物語るのがバンプ、ということになります。

 分かりやすいのが「君と羊と青」(RADWIMPS)。サビでたたみかける3連の響きを際立たせるために言葉がチョイスされているのですね。

<君を見つけ出した時の感情が>
普通に読んだ時の“タタタ タタタ タタタ タタタ”という呼吸が、そのままメロディに乗っかっているので自然にリズミカルなのです。

⇒【YouTube】はコチラ 君と羊と青 RADWIMPS MV https://youtu.be/K1u_MwT6zV8

 逆にバンプはというと、こんな感じです。

<置いていかれた迷子 遅すぎた始まり さあ何を憎めばいい>
<息絶えた 心を撫でた 殺したのは 他ならぬ僕だ>
(「オンリーロンリーグローリー」)

 息つぎ無視で詰め込んだ符割によって、とりあえず苦しくて、何かに怒っている感じが伝わってきます。

◆真逆の演奏スタイル

 こうして歌詞の響かせ方が違えば、当然ボーカルにも影響してきます。すると演奏スタイルも変わってくる。ここはお互いの代表曲で比較してみましょう(冒頭で挙げた動画参照)。

 まず「前前前世」(RADWIMPS)はPVを観ても分かる通り、思わず身体が動いてしまう演奏なのですね。カラっとしていて、歯切れがいい。裏のビートで跳ね上がるバネがあり、歪んだギターの音もスピード感を保っているように聴こえます。短調の曲を中和する軽さが際立っています。

「天体観測」(BUMP OF CHICKEN)は対照的。テンポはそこそこ速いのですが、余韻を引きずるように、湿っていて重たいのですね。こちらは長調なのですが、能天気な明るさとは無縁。あと、このたどたどしさは狙って出せるものではないでしょう。

◆な数コードを上手に使うバンプ

 最後はちょっとマニアックなお話。BUMP OF CHICKENの隠し味になっている“分数コード”。これがハーモニーの面から全体を盛り上げているのですね。分かりづらいと思うので、ちょっとご説明をしましょう。

 ふつうCのコードならば、「ド・ミ・ソ」の組み合わせで主音の「ド」が一番低い音になるのですが、雰囲気を変えたりしたいとき、さらに低い別の音を持ってくることがあるのです。そうすると、たとえば「C/G」(ベース音がソのCメジャーコード)という表記になるので、分数コードと呼んでいるのですね。

 このベース音を動かすことで曲の展開に変化を加えたり、藤原基央のボーカルをさらにドラマティックに聴かせたりするアレンジに長けているというわけです。ベース音の置き方ひとつで、“これから何か始まるぞ”といった期待感を煽ったり、一瞬正常なルートから外れた感覚になったりする。

「スノースマイル」やNHK『みんなのうた』でも流れた「魔法の料理〜君から君へ〜」などを聴くと、ふわっと浮くような部分があるかと思います。そういう効果を生むのですね。

 もちろん分数コード自体それほど珍しいテクではないのでRADWIMPSの曲にも出てくるのですが、バンプみたいに多用して強調しているケースは稀だと思います。

 というわけで、“じゃあお前はRADとバンプどっちがいいと思うわけ?”と訊かれたら、けっこう答えに困るなぁというのが、今回いちばん強く感じたことなのでした。
 
<TEXT/音楽批評・石黒隆之>