昨年10月のイランとの親善試合を最後に、W杯2次予選、キリンカップ、W杯最終予選と公式戦やトーナメントが続いていたため、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督にとって11月11日のオマーン戦は、待ちに待ったテストマッチに違いない。

 11月15日に行なわれるグループ首位のサウジアラビア戦に向けて、欧州組の調整ができるだけでなく、さまざまなテストにもチャレンジできる有意義な場となるはずだ。

「あまりプレー機会のない選手にもチャンスを与えようと思っている」

 メンバー発表会見でハリルホジッチ監督もそう宣言している。リオ五輪世代のMF井手口陽介(ガンバ大阪)やFW久保裕也(ヤングボーイズ)、ここまで出番のないFW齋藤学(横浜F・マリノス)やMF永木亮太(鹿島アントラーズ)に出場機会が訪れる可能性も少なくないが、なかでも期待が高まるのは、昨年6月以来の招集となったFW大迫勇也(1FCケルン)だ。

 ドイツのケルンで昨季はトップ下やサイドハーフとして起用されていたが、今季はケルンが2トップを採用したため、得意とするポジションでプレーできるようになり、第4節のシャルケ04戦、第5節のRBライプツィヒ戦で2試合連続ゴールをマーク。ここまでリーグ戦で9試合連続して先発出場を果たしている。

「大迫は常にリストのなかに入っていた」とハリルホジッチ監督は明かしたが、大迫が2試合連続ゴールを奪ったのは、9月下旬のことだった。代表に招集するためには、メンバー発表の2週間前には所属クラブへ招集レターを送付しなければならず、10月シリーズには間に合わなかった。今回の大迫招集は、満を持してのものだった。

「フィジカル的なクオリティがあり、ヘディングも強いので、16メートル(ペナルティエリア)のなかに入っていってほしい」

 指揮官も大迫への期待を隠さない。さらに、「探しているのは得点を獲れる選手。彼がプレーするときには、他の選手よりも点を獲ってほしいと思っている」とも語っているため、オマーン戦、サウジアラビア戦で大迫が起用される可能性は高い。

 現在、ハリルジャパンの主戦システムは4−2−3−1、サイドハーフをウイングと見るなら4−2−1−3が採用されている。大迫が起用されるなら、そのセンターフォワードということになるが、ケルンでも、かつて所属した鹿島アントラーズでも、2トップの一角でプレーした際に輝きが増すことを踏まえれば、ハリルジャパンも2トップの採用にトライしてもいい。オマーン戦はテストが許される親善試合なのだから、なおさらだ。

 近年の日本代表では、4−2−3−1が主戦システムとして採用されてきた。明確な2トップを採ったのは、オシムジャパンで高原直泰と巻誠一郎が2トップを組んでいた2007年までさかのぼらなければならない。ザックジャパンで本田圭佑と中村憲剛が前線に並ぶ変則2トップが採用されたこともあったが、その実、ゼロトップのようなものだった。

 4−2−3−1が採用されてきた理由のひとつとして、中盤に揃う豊富なタレントをなるべく多く起用したい、という狙いがあった。その最たる例がザックジャパンで、1トップを務めた前田遼一や柿谷曜一朗には、2列目の本田や香川真司、清武弘嗣や岡崎慎司を生かすことが求められた。

 ハリルジャパンには中盤のパスワークを強みとする狙いはなく、だからこそ、サイドハーフを1列上げた3トップ気味の布陣を採用しているのだろうが、いずれにしても2トップではない。前線の中央はセンターフォワードひとりという点に違いはなく、屈強なふたりの相手センターバックから厳しいマークを受ける可能性が高い。

 レスター・シティで昨季、FWジェイミー・バーディーとコンビを組んだ岡崎は、清水エスパルス時代以来となる2トップでのプレーに、「センターフォワードの周りを衛星的に動く、という自分の持ち味を発揮できる」と手応えを感じていた。大迫も好調の理由について、「今季は2トップの一角として出場できているから」と語っている。だとすれば、ハリルジャパンでも2トップを試してみるべきだろう。

 指揮官も、2トップの採用を視野に入れていないわけではない。メンバー発表会見で久保について触れたとき、こんなふうに語った。

「背後にもいけて、スピードのある面白い選手だ。2トップにして真ん中でプレーするようなオーガナイズがいいと思う」

 久保を起用する際のオプションとしての言及だったが、「大迫×岡崎」のコンビで2トップを採用するのも面白い。

 ケルンではFWアントニー・モデストがファーストストライカーで、大迫がやや下がり気味のポジションでプレーしているが、日本人FWのなかではポストプレーが圧倒的にうまい大迫をファーストストライカーで、岡崎をレスターのようにセカンドストライカーで起用する――。前線を2枚にすることで相手センターバックのマークを分散できれば、世界からゴールを奪える力をもっとも秘めたふたりの得点力をより生かせるのではないか。「得点率を高めることについて、できるだけいいソリューションを探している」と指揮官も語っているのだから、トライしない手はないだろう。

 親善試合のオマーン戦はある意味、結果にとらわれないでテストが行なえる貴重な機会だ。2トップへのトライは4日後のサウジアラビア戦のみならず、その先に生きてくるものでもある。

飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi