トランプ氏の勝利を伝える新聞各社

写真拡大

アメリカ大統領選挙で、ドナルド・トランプ氏が米国の第45代大統領に当選した。投票前、日本の多くの有識者はヒラリー・クリントンの当選を断言し、トランプの当選はありえないと語っていた。そんな中、1年も前から、トランプ氏の当選を一貫して予測してきた人物がいた。PRマネジメント代表で、早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏である。今回、渡瀬氏にトランプ勝利予測の根拠を聞いた。

■なぜ私は「トランプ勝利」を予測できたか

現在、トランプ大統領誕生でヒラリー当選を予測していた有識者らの阿鼻叫喚が続いています。「隠れトランプ支持者がたくさんいた」「世論調査が間違えていた」などが代表です。しかし、トランプ勝利は本当に予測できなかったのでしょうか? 筆者はこのような見解は明確に間違っていると断言します。

今回、有識者らがトランプ勝利を予見しえなかった理由は、世論調査をはじめとしたデータの見方が根本的に誤っていたからです。筆者も一部メディアに発表してきましたが、メディア・大学などが発表する世論調査の数字をそのまま引用するのではなく、回答者属性まで含めて詳細に分析することで、トランプ勝利を論理的に導き出すことは可能でした。

第一に、共和党予備選挙時のトランプ勝利について振り返りたいと思います。トランプ氏は党内レースで世論調査の圧倒的な支持率1位を獲得し続けていたため、ブッシュなどの他候補者に負けるはずがありませんでした。現地の世論調査をしっかりと見ていれば誰でもわかることでしたが、日本では従来までの予備選挙の慣習にとらわれて主流派候補が勝つというミスリードな報道が行われ続けていました。

第二に、大統領選挙本選の勝負を決するフロリダなどの接戦州の世論調査では、トランプVSヒラリーの数字は、ほぼ統計上の誤差の範囲で拮抗し続けていました。したがって、ヒラリーが圧倒的に優勢かのように語っていた有識者らは、自分の見たいものだけを見ていただけに過ぎません。ヒラリー優勢という見解はそもそも根拠が薄弱なものでした。(世論調査総合サイト:RealClearPolitics参照)

第三に、世論調査の回答者内訳からヒラリー支持者は、若者が多かったこと、有色人種比率が高かったことから、選挙本番でトランプ支持者と比べて実際に投票に行く人が少ないことは見て取れました。また、フロリダ州に多いキューバ系ヒスパニックなどの共和党に親和的な有色人種からの支持、根強い白人女性層からの支持など、トランプ氏への有識者らの偏見に反する調査結果も出ていました。したがって、接戦州の拮抗した世論調査に支持者属性を加味した場合、トランプ氏が競り勝つことは数字の上でも明らかでした。

■隠れトランプ支持者を拾えなかった

第四に、トランプ氏が参加した共和党予備選挙への参加人数が激増していたことと対照的に、サンダース旋風が吹いていたはずの民主党予備選挙への参加人数は伸び悩んでいました。つまり、共和党は大統領選挙に関して大盛り上がりでしたが、民主党は一部学生らが騒いでいただけで、全体的に盛り下がっていたことが伺えます。両党の有権者の盛り上がりの差が最終的な得票差に繋がりました。

第五に、トランプ氏に流れたとされる白人労働者は元々民主党の支持基盤でしたが、民主党側についたメディアが愚かなトランプ支持者として激しく侮辱するキャンペーンを展開していました。その結果として、トランプ陣営の選挙キャンペーン効果が最大化して白人労働者層の投票率が高まるとともに、民主党候補者であるヒラリーから離れていくことは自然なことだと思います。メディアによる有権者叩きはBrexitの際にも類似の現象が起きており、EU離脱派勝利の一要因となっていました。

以上のように、世論調査等の重要な数字を丁寧におさえていくことで、トランプ勝利という結果を導出することはそれほど困難なことではありません。

一部の有識者の人々は「世論調査が隠れトランプ支持者を拾えなかったため、大統領選挙の予測を外した」と弁明しています。しかし、それは明確な間違いなのです。有識者らはバイアスがかかった色眼鏡で数字を見るだけで、世論調査内容を正しく分析できるだけのノウハウが無かったことを反省すべきです。

いまだにトランプ当選を予測できなかった人々が大統領選挙の結果について解説し続けていますが、厚顔無恥とはまさにこのことではないでしょうか。今回の大統領選挙は米国メディアの見解をそのまま丸写しにするだけのガラパゴス有識者らの問題を浮き彫りにすることになりました。猛省が必要だと思われます。

(PRマネジメント代表 渡瀬裕哉=文)