<国家百年の計に則って追求されるべきエネルギー政策。トランプ「大統領」になって米国のエネルギー政策はどうなるのだろうか...>

石油ガス業界は勝者。「パリ協定」はキャンセル

「よもや、まさかのトランプさん」(2016年4月4日、弊ブログ#159参照)が次期米国大統領になることが決まった。

 国家百年の計に則って追求されるべきエネルギー政策は、「民意に乗る」だけではなく「民意をリードする」ことが大事だ、と筆者は考えているのだが、米国民は「民意に乗る」大統領を選出した。

 ほとんどすべてのマスメディアは「民意」を見誤った、それはなぜだ、と言うのが結果判明後のメディアの関心事になっているようだが、ここでは本ブログの目的に基づき、トランプ「大統領」になって米国のエネルギー政策はどうなるのだろうか、という観点からFTの記事を紹介しておこう。

 "Trump victory: corporate winners and losers" (Nov 10, 2016 around 2:00am Tokyo time)という記事の中の、エネルギー業界に関するEd Crooks記載の部分だ。さらにFTは "US energy: who flares wins" という記事も掲載しているが、こちらからも参考となる部分を[ ]書きで追記しておく。

 ・石油ガス業界は勝者。

 ・トランプはこれまで、米国をエネルギー自立できる国にする、と主張し、そのために国内の石油ガス開発を促進すべく(連邦政府管轄の)土地を開放する、と言っている。

 ・昨年末合意された「パリ協定」は「キャンセル」する。

 ・オバマ大統領が提案している(US Clean Power Planと呼ばれる)発電所からの温暖化ガスの排出を抑える政策を破棄する(なお、米EIAが8月に発表した最新「年次エネルギー展望2016―2040年までの予測」はオバマ政策を前提としている)。

 ・これらの政策は石炭火力を支持するものだが、安価なシェールガスに基づくガス火力との競争があり、限界があるだろう。[石炭主要産地であるウエストバージニアで最大の投票差を得たことは驚くに値しない。石炭業者は、2030年までに発電所からの排出ガスを3分の1削減させることを目したUS Clean Power Planの立法化を遅延させている]

 ・[トランプは風力にも太陽光にも経済性に疑念を持っており、タービン製造業者やパネル製造業者は負け組]

 ・連邦管轄地域での(シェールオイル、ガスの)掘削が可能になるかもしれない会社を含め、石油ガス等エネルギー会社は勝者。

 ・(ノースダコタ州のシェールオイル生産の雄)Continental Resourcesの(実質オーナー、社長)Harold Hammはエネルギー問題のトップアドバイザーだったので、トランプ政権のエネルギー相最有力候補。

 ・カナダからメキシコ湾岸へのパイプライン建設プロジェクト(Keystone XL)を推進しているTransCanadaも勝者。2015年にオバマ大統領の拒否権で頓挫している同計画を、トランプは再び提案するよう求めている [但し、州内のことには連邦政府といえども関与出来ない]。

 ・イランの原油輸出増につながった核協議合意を批判しており、石油供給にも影響を与えるかもしれない [複雑な構造を持つ合意をひっくり返すことは容易ではないが、もし「禁輸措置」が復活するなら、増えた100万B/Dほどのイラン原油輸出分がなくなり、トレーダーたちの心配は消失する]。

岩瀬昇