■ヤバイぞ、アジア最終予選3〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

杉山:日本代表の選手たちは自信を失っているように見えます。UAEとイラクにあんな内容の試合をして、選手だってやばいと思っているのでしょう。だから今までのサッカーが簡単に捨てられる。オーストラリア戦がああいう戦いになったのは、作戦というよりもムードのせいだったような気がします。

浅田:長谷部誠なんかは試合後、「オーストラリアとホームでやったら、こういうサッカーをやらないと思う」と言っています。これは推測ですけど、やはり本意ではないというか、納得はしてないというものをその言葉の裏に感じました。ただ、UAEとイラクとの試合内容から、ちょっと腰が引けたんだろうなという感じは受けちゃいますよね。変にボール持ってカウンターを食らったら怖い。だったら余計なことしないでおこう、と。

杉山:アギーレ時代のアジアカップでは、準々決勝でUAEに負けたけど、試合は圧倒的に支配していた。イラクには1−0で勝ったけど、段違いの実力の1−0なんですよ。それが今回の予選では全然違っちゃっている。選手も「あれっ?」という感じはあると思います。「俺らパスがつながらなくなっちゃったよ」みたいな。

浅田:以前から、日本は力が下降線を描いているけど、他の国は上がっているという話をしてきましたが、ここまで最終予選を見た僕の印象でいうと、他は思ったほど上がってない。ただ、日本が思ったより下がっている。その結果、両者の交わるタイミングは意外と早いかもしれないという感じを受けています。

杉山:サッカーという競技は年々ちょっとずつ進歩しているという前提に立つと、アジア諸国はただその上に乗っかっているだけで、自発的に伸びているわけじゃないですね。流れに任せているだけで、目を見張るようなレベルアップはしてないんです。で、日本だけさらにそれと違う現象が起きている。これも珍しい。その中でやっている選手は当然、「あれっ?」というのがあるでしょう。サッカーだから負けることはあるんだけど、問題は負け方。これは完全に運がなかったとか、「ちょっと失敗しちゃったね」という場合はあるけど、今回は違う。サウジアラビア戦は、そんなUAE戦とイラク戦を引きずることになります。

浅田:よくも悪くも楽しみな試合ですよね。

杉山:苦戦必至は前提で、少なくともここ5〜6年の流れとは違うパターンの楽しみ方になる。2−0で快勝するイメージはないですね、日本が先制しても、今の調子だと守りに入っちゃう可能性があるから。

浅田:結局、日本は先制しているのに、タイ戦以外は全部追いつかれていますからね。イラク戦はもう1回勝ち越したけど、理想的な試合の流れになっているにもかかわらず、やられちゃうわけじゃないですか。本来もっと落ち着いて試合を進めていいはずなのに、でも追いつかれる。

杉山:自信がないんですよ。選手がアワアワしていて、追いつかれるんじゃないかというムードを漂わせながら試合をやっている。結局、実力は基本的に互角だということでしょう。サッカーって、実力が50対50だったら、1点取られたら、取られた側が次は押し返すでしょう。逆に点を取った側がさらに押すのは、明らかに実力が上の場合です。日本が特に後半、押し返されるのは、力がイーブンだということだと思います。

 仮にサウジアラビアと引き分けると、勝ち点1が積み上がるわけですが、同日、オーストラリアがタイに勝つ可能性は高いし、UAE対イラクもどうなるかわからない。現在3位の日本はそこから抜け出せない、あるいは4位に落ちるという可能性が出てきます。

浅田:悲しい話ですけど、UAE対イラクあたりには引き分けてもらって、あまりどっちかに勝ち点が集まらないようにしてもらって、最悪3位は死守しておきたいみたいな感じになりかねないですよね。

杉山:そうなると当然、監督交代の声が強くなる。今は完全に停滞しちゃっているじゃないですか。こんがらがった糸をどうほどいていいか分からない状態になっている。僕はハリルホジッチに解決能力があるとも思えないんです。

 少なくとも監督が新しくなると、新しい選手が何人か入ってくる。サッカー選手の評価は微妙ですからね。ちょっと違う選手が入ることだけで、チームにとっては刺激になるわけです。そうするとフレッシュな感じが一瞬、漂うわけですよ。今はそれがすごく重要だと思います。本当はスタメンを5人ぐらい代えないと。「誰がいいんだ」ではなくて、いい悪いはともかく、代えないとこのムードは変わらないということです。そこで「本田の代わりに誰がいるんだ」という言い方をされると、こいつはこのムードが分かってないなと思いますよね。本田というのは今の沈滞ムードの象徴です。ミランであれだけ試合に出てない選手が日本代表で王様のようにプレーしているというつじつまの合わないことが、今のチームに影響しているんですよ。

浅田:2002年にしても2010年にしても、W杯でそれなりに結果を出した時はやはりチームが若いじゃないですか。2002年でいえば2000年のシドニー五輪に出た選手がいっぱい入っていたし、2010年でいえば2008年の北京五輪に出た選手がいっぱい入ってきていた。そういう意味では、リオ五輪に出た選手が2年後のW杯のチームに入ってくるぐらいで「若い」と言えるのでしょうが、現状は4年前のロンドン五輪に出た選手たちでさえなかなか試合に出ることができないでいる。やっぱり1サイクル遅いというのは確かでしょう。

杉山:遅い。そうすると何が起きるかというと、次のW杯がメチャクチャになるんです。ロシアW杯に出られればまだいいですけど、ここで出られなかったら次もダメだよという話です。世界のサッカーを見ていると、ドイツやブラジルのようにW杯に出続けている国もありますが、ほとんどはそうではない。日本だって何回かに1回は予選敗退するということも考えておかないといけないんです。いい落ち方とは何か。次は確実に行けるでしょうという落ち方だと思います。

浅田:そうなんですよね。今回、急場しのぎでやったことによって、傷口が深くなって、もしかしたら2回出られないかもしれないという可能性もあるわけですから。それだったら、今回はちょっと危険にさらすけど、次からはきっちり行けるという流れを作るということも考えないといけない。

 よく「年齢は関係ない。その時の実力で選ばれるのが日本代表だ。ポジションは与えられるものじゃない」みたいなことを言います。選手はそういう心構えでやってほしいし、やるべきだと思うんですけど、マネジメントする側はそんな心意気だけではまずいでしょう。

杉山:自然現象に任せていてはダメなんです。人工的に変えていかないと。

浅田:予選中の監督交代といえば、日本は98年フランスW杯予選で経験しているわけですが、あの時の日本代表は、普通にやっていればグループ1位はともかく、2位に入ることはそんなに難しくなかったと思うんです。どっちかというと下手を打ちまくってああなったようなところがある。でも、実は今回はちょっと違うのかなという感じがしますよね。

杉山:そう。はっきり言ってあの時は監督が悪かったんです。加茂周監督解任の契機になったアウェーのカザフスタン戦なんかは、最後は采配もメチャクチャだった。選手たちも「監督の指示がよく分かんねえ」みたいなことを平気で言っていました。ひとえに監督がブレーキを踏んでたようなものだったけど、今はそうじゃない。総合力が落ちている。だから案外、今回、2位以内でスパッと予選を抜けたら奇跡的かもしれない。そう思ったほうがいいと思います。

スポルティーバ●文 text by Sportiva