【専門誌では読めない雑学コラム】
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第79回


 全国1000万ゴルフファンのみなさま、お待たせしました!

"今世紀最低のマッチプレー"をお送りします。

 題して、「タラレバおやじvs言い訳おやじ」という不毛な戦いです。

 まあ、「トランプvsクリントン」くらい得るものがないですが、なぜか親近感は増すと思います。きっと、誰しも思い当たるフシがあるのでしょう。

 まずは、対決の解説を少々。"タラレバおやじ"というのは、「もし刻んでいたら、俺はパーでまとまっていた」「もうひとつ大きいクラブで打っていれば、グリーンに乗っていた」という、「タラ」と「レバ」の仮定法過去完了が非常にお好きな方々を指します。

 しかし、ゴルフは決して2回打ってはいけないルール。だから、いくらでもデカいことが言えるのです。「じゃあ、今度はコンディションのいい場所でもう1回打ちますか?」となったとしても、おそらく好結果は出ないでしょうけど。そこは、ご愛嬌ということで。

 一方、"言い訳おやじ"は、叩くたびに「ライが悪かったんだ」「ボールにゴミがついていたんだ」という、一見、結果分析好きに見えますが、本性はただの"責任転嫁野郎"です。「ボクちゃん、悪くないもんね。悪いのは太陽のせいさ」って、あなたアルベール・カミュ(フランスの作家、哲学者)ですか? 確かに不条理っちゃあ、不条理ですけど......。

 最初から泥仕合になるのが見えている、こんな"タラレバおやじ"と"言い訳おやじ"のふたりが、ゴルフをすることに......。ののしり合いは、プレー前からすでに始まっています。

 先制攻撃を仕掛けたのは、言い訳おやじ。「いやぁ〜、作夜飲み過ぎてさ、あんまり寝てないのよ。今日は叩くかもしれないけど、よろしくね」と軽いジャブ。それを聞いたタラレバおやじは、「今日の占いが最悪でさ、ゴルフの怪我に注意だって。昨日だったら、キャンブル運最高だったのにぃ〜」って、ゴルフはギャンブルじゃありませんよぉ〜。

 さあ、ティーグラウンドでプレー開始。

 350ヤードのミドルホール、先攻はタラレバおやじです。まずは無言で打って、緩めのフェードボールが飛んでいき、右のラフへ190ヤード前進。「こんなもんか、実は俺も二日酔いでフラフラだからさ。昨日、お酒を飲まなかったら、すごいショットが出たんだけどなぁ」と、ぼやくことしきり。

 続いて、言い訳おやじ。ティーアップしていますから、ライが悪いとか言えません。こちらは、テンプラ気味の高いボールで前進160ヤード。「うへぇ〜、ティーが高かったよ。だから、テンプラボールが出たんだ」と、間髪入れずの弁解はもはや芸の領域です。

 もちろん、ティーなんて高いわけもなく、たぶんテンプラが出たら、条件反射的にそのように言う口癖になっているんでしょう。ですから、「テンプラボールに曲がりなしって言うからさ。真っ直ぐ飛んだのは、よしですな」と、さほど機嫌は悪くない。

 2打目は、言い訳おやじの打順から。グリーンまで残り190ヤード。すでに諦めの境地で、「こんな距離、乗るわけないだろ。誰だよ、設計したの」って、八つ当たりですか。

 ライを見ると、なぜか芝の薄いところにボールが......。「うへぇ〜、ほとんど芝ないじゃん。これは、飛ばないかも。いや、飛ばなくても当然だよね」って、ひとり解説を開始です。まあ、結果は解説どおりですけど。

 同様にタラレバおやじも、残り140ヤードのラフから。すでに、タラレバ全開ですよ。「これが、フェアウェーだったらなぁ〜」とぼやきまくり。「140ヤードのラフショットって、松山英樹ならピッチングでひょいだな」って、いいから他の人のことは、と突っ込みを入れたくなるほどです。

 しまいには、「ドラえもんがいたら、時間を巻き戻して打ち直しができたのにぃ〜」だと。おいおい、朝からドラえもんに頼むかよ〜。

 そんなわけで、はたから見ていると結構おかしいですね。それは、誰しも心の中に"タラレバ"や"言い訳"を潜ませているからです。

 知り合いでマージャン好きの出版関係者がいて、その人は毎回、自分の手の内を解説しないと、その場を終わらせてくれませんでした。「あ〜、ドラ3枚も乗ってるんだよ。イーシャンテンだけど」と言って、自らの手をどのように進めたかを延々と説明。それが終わって、ようやく次の場に進めます。これが、自分が勝ったときなどは、ワンマンショーで終わりがないですから。"タラレバ"マージャンの典型的な人でした。

 言い訳になると、トッププレーヤーにもいるみたいですね。飛ばし屋として世界的に有名なジョン・デーリー(アメリカ)と一緒に回った知り合いのプロが、こんな話をしてくれました。

 ジョンが、ガードバンカーから長い距離のショットを打とうとしたら、思いのほか飛ばなくて、どうしたんだろうと思ったそうです。そうしたら、ジョンがそばにやってきて、聞いてもいないのに「今の(ショット)は小石が挟まっていたから、飛ばなかったんだ」と、言い訳をしにきたそうです。これはまあ、実に微笑ましいエピソードですね。

 というわけで、"タラレバ"や"言い訳"は、基本的には言ってよしかと。ただ、ウザがられない程度に、ほどほどにしましょうね。

◆木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa