脳にチップを埋め込んで、脳が発する信号をコンピューターで受信し体の他の部位へ伝達するという技術は、一昔前では映画やアニメに登場する架空の技術でしたが、2016年現在では大学や研究機関などが実験を行っています。そんな中、脳と脊髄に埋め込んだデバイスを使い、脊髄損傷で下半身不随となったサルの歩行を可能にする技術が開発されました。

A brain-spine interface alleviating gait deficits after spinal cord injury in primates : Nature : Nature Research

http://www.nature.com/nature/journal/v539/n7628/full/nature20118.html

Primates Regain Control of Paralyzed Limb - YouTube

脊髄を損傷したサルが歩けるようになった実験を成功させたのは、チューリッヒ工科大学のGrégoire Courtine教授が率いる研究チームです。



脊髄が離断してしまうと神経伝達機能が絶たれてしまい、脳が信号を発しても……



運動命令は離断された脊髄より下の部位に伝わりません。脳からの信号が下半身に伝わらないと、運動機能が失われ下半身を動かすことができなくなってしまいます。



しかし、Courtine教授らは脳からの信号を脊髄が損傷した部分をバイパスして下半身に伝えることに成功しました。具体的に言うと、運動をコントロールする大脳皮質に100個の電極を埋込み、その電極に接続したデバイスを使って脳から送られる神経信号をコンピューターに送信。



次にコンピューターは受信した信号をデコードして「脳が足にどのような動きをさせようとしていたのか」を読み解きます。



今度はコンピューターがデコードした情報を脊髄の直下に埋め込まれた神経刺激装置に送信。この神経刺激装置は離断された脊髄に接続されており、コンピューターから受信した情報を適切なタイミングで脊髄の正確な場所に送り届けます。



脊髄の損傷部分をバイパスすることで脳からの信号を伝達できれば、サルは歩けるようになるということです。このシステムは「Brain-spine Interface(脳脊髄インターフェイス)」と名付けられました。



脳脊髄インターフェイスを起動していない状態のサルは右足をうまく動かすことができず、関節が全く動かないなど歩行に支障をきたしています。



しかし、脳脊髄インターフェイスを起動すると、右足の関節が適切に動いてサルは問題なく歩くことができました。



脊髄損傷部をバイパスして信号を送り歩行を可能にしたのは、世界でも初のこと。ただし「人間に適用するにはさらなる実験と研究が必要になってくる」とCourtine教授は話しています。