兼ねてから発表されていたロードスターRFが正式にマツダから発売となりました。

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RFは、ロードスターの幌部分をハードトップにするだけでなく、クローズの時はクーペもしくはファーストバックスタイルとし、電動でそのルーフを開放すればタルガ風へとヘンゲする新たなロードスターのボディバリエーションのひとつです。

タルガ風というのは、通常のタルガトップというのはリヤウインドウセクションを残し、ルーフのみをデタッチャブルとすることができるものを指すのですが、ロードスターRFはそうではありません。

というのも、リヤウインドウも屋根と一緒に収納され、室内からリヤの景色は筒抜けとなるんです。ただし、幌のロードスター同様に風通しをある程度抑えるアクリル板は残ります。

 

実際にオープンで乗ると、頭の後ろにボディの一部が残っている意識はほとんどないですし、風の流れも先述の通りオープンかーそのものので、言われなきゃわからない、といってもいいくらい幌モデルと変わらずオープンエアを楽しめます。

ですが、ルーフを閉じると明らかに静粛性が幌と違います。ほぼほぼクローズドの普通のクルマと同じような空間でのドライブとなります。恐らく、雨の日のドライブなどでは屋根に当たる雨の音など、幌とRFではまったく違ってくるでしょう。

でもですよ。私が個人的に思うロードスターらしさは、やっぱりそれだけでいい、と思えるライトウェイトスポーツであり、クローズの快適性でもクーペに見えるスタイリングでもなく、屋根がないのが基本で雨が降ったら止むを得ずチャチャッと幌を締める。その分、クルマが軽く出来ていて思い通りに操ることができる(気がする)。

正直、そう思ったわけです。

なので、ほんのすこし前までこのロードスターの開発主査であり、現在は定年となったこともあり、チーフデザイナーにその仕事を託し、ロードスターアンバサダーとしてロードスターの良さを様々に広げる立場となった山本修弘(のぶひろ)さんにぶっちゃけで聞いてみました。

---私は幌のロードスターのほうがいいと思ったんですけど。

すると山本さんは当然です、という風にいつもの穏やかな表情でおっしゃいました。

山本「ロードスターの良さを以前からわかっているかたはそう思って当然なんです。ライトウェイトのスポーツカーというのがどんなクルマで、どういう楽しみ方をするものかを知っている人からは従来からある幌のロードスターがいいと思ってくれるのは当然なんです。」

---ということはどういう人が選ぶんですか?

山本「オープンカーはちょっと敬遠していた人とかに選んでほしいですね。」

---オープンカー敬遠派にロードスターを選んでほしいですか・・・。

山本「RFの良さは新しい価値なんです。クーペのような綺麗なスタイルと快適性、それに気持ちよく走りたい。そういう人に見てもらいたいんです。幌のロードスターとどっちがいいですか?という選択肢ではないんです。」

---つまり、新しいユーザー層が増えるということですか?

山本「そうなんです。だから、これまでのロードスターが好きだというお客さんにこちらもどうぞというんではなく、まったく違った新しいお客さんが増えるといいなと思っています。」

---よーくわかりました。

*  *  *  *  *

個人的な想い出ですが、20数年前となる1994年、トヨタRAV4がデビューした時、まだヨンクブームから続く背の高い4輪駆動車はクロカン四駆しかなく、背の低いスポーツカーとクルマ趣味の人気を大きくは二分していました。

当時のどのカテゴリーにも属さないRAV4の商品性が理解できなかった私は、発表会の会場で開発関係者に「このクルマはどんな人が買うんでしょうか?」と、ある意味「売れるわけねーじゃん」というニュアンスをぐっと抑え込んでお聞きしました。

するとそのかたは「少し人と違ったクルマが欲しい、クロカンヨンクまで本格的なモノはいらないというかたでしょうか。乗り換えで言えば例えばロードスターなどを予想しています」

当時の私は心の中で「うわ、この人ナニ言ってんだろう。低いスポーツカー好きが急に背の高い、しかも軟弱な似非ヨンクみたいなの買わないでしょ。わかってないんじゃない?」と、そのころはまだマジメにクルマの本質が好きで、性格の悪い自分は思ったのでした。

けれど、その後RAV4は大ヒット! なのに「ああ、あのキムタクとかいう木村拓哉って若手アイドルがCMやってるからだね」と自分の先見のなさを認めない相変わらず性悪な自分でした。少し前、身近にFC3S RX-7からパジェロに乗り換えた友人がいたのもすっかり忘れて。。。

その後、RAV4はライトクロカンというカテゴリーを作り上げ、現在ではSUVの中でもコンパクトSUVと言えるカテゴリーが出来上がっているのに通じていると言えるでしょう。ようするに、目新しい他人と違ったクルマに乗りたいという層は必ずいて、けれど多くの人がそこに足を踏み入れてこないネガが何かあるわけで、そのネガが「快適性やいたずらなど幌への不安」や「あからさまなオープンカースタイルは恥ずかしい」とかと思っている人もいるでしょう。

もしそういう人なら「幌がイヤ」という人が「これならいいじゃん」と思ってくれる、満足の仕上がりになっていました。実際に、ロードスター前モデルNC型の電動ハードトップモデル「RHT」は、グローバルで6割、日本でもそれに近いくらいのロードスター販売比率を占めていたと言います。

それについて山本さんは、「今度(ND型)は、それが半々くらいになればいいなと思っています。それも今までの台数の半分がRFになるんでなく、これまでの台数に上乗せする形がいいですね」。

確かに、バリエーションを増やして、その分今までの台数が食われてしまえばただお金を使っただけで結果損をすることになる。そのためには明確なキャラ別けが必要というわけで、それは2リッターエンジンによる走りの余裕も含み見事に具現化されていると思われます。

これまでロードスターは選択肢でなかった人も、悪くはないけど特別すぎる、と思ってた人も、もちろん幌のロードスターが好きだった人も、ぜひ乗ってみるといいと思います。従来モデルとは違った楽しみがあると思います。

ちなみにライバル車として思いついたのは、ちょっと個性的なジャンルとしてスポーツカーが食われてしまったかも知れないSUV、それも誰が買うんだろう?って誰もが思ったレンジローバー・イヴォーク・コンバーチブルでした。価格差なりのゴージャスの違いはもちろんありますが、所有するだけでちょっと楽しくなる、へーちょっと個性的なクルマ持ってるんだねって言われる点は共通するでしょう。どちらもきっと暮らしを豊かにしてくれるクルマだと思います。

私としては、少し歳を取って性格も丸くなったのか、背が高いクルマと低いクルマを比べる人がいてもいいと思えるようになったのかも知れませんね。

(写真:前田 惠介/文:clicccar編集長 小林 和久)

【関連リンク】
ロードスターRF先行展示イベント

●首都圏エリア @寺田倉庫
11月12日(土) 10:00-19:00、11月13日(日) 10:00-18:00

●近畿エリア @マツダブランドスペース大阪
11月19日(土)-20日(日) 10:15-18:45

●東海エリア @セラミックパークMINO
11月22日(火) 10:00-19:00、 11月23日(水) 10:00-18:00

http://www.mazda.co.jp/beadriver/event/roadster_rf/

ロードスター前主査の山本さんにズバリ聞いた「RFより幌のほうがいいと思うんですけど!?」(http://clicccar.com/2016/11/10/415614/)