12年前の著書でドナルド・トランプが語っていた、「勝利」の秘密

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 長く注目を集めていた米大統領線がついに決した。第45代米大統領はドナルド・トランプ氏に決まった。世界中に衝撃を与える結果になったが、泣いても笑ってもこの結果は変わらない。

 それにしてもなぜ、度重なる暴言・失言を繰り返し、「ヒラリー・クリントン優勢」が報じられてきたにも関わらず、トランプはアメリカ国民のハートを掴むことに成功したのか?

 2004年にトランプ氏が執筆し、全米50万部のベストセラーになった『How to Get Rich』(邦題『金のつくり方は億万長者に聞け!大富豪トランプの金持ち入門』ドナルド・J・トランプ著/石原薫訳)を紐解いてみると、彼の交渉術にその鍵が隠されていることがわかる。

 さまざまな暴言から、彼はカネと権力にものを言わせる暴君のように思われがちだが、同書の中でトランプは次のように語っている。

<交渉事に対する私の基本的な考えを述べておく。それは、すべては説得力の問題であって、権力ではない、ということだ>と。

 さらに、その説得術についてこう語っている。

<説得しようとしている相手には、わかりやすく話すことが大事だ。相手が理解しやすいような例えを挙げるのも手だ。相手の理解の域を大幅に超えてしまうと、いらいらされるか、下手をすると劣等感を持たれる。自分も同じレベルの人間であることをわからせよう>

 本サイトでも、トランプの英語力が「小学6年生以下」のレベルであることが海外メディアで報じられたことを取り上げたことがあるが(参照:「HBO」)、英語のみならずその政策も、一貫して彼は「有権者と同じレベルの人間である」ことを徹底してケアしていたと言える。

 また、常に尊大に見える彼だが、報じられる彼の支持者を見ると、貧困層の人であっても非常に親しみを持って彼を支持している様子が窺える。その背景には、彼が<自分の考えがいかに高尚かを力説するばかりでは、相手は嫌気がさし、悪くすると、その場から一刻も早く逃げ出したいと思わせることになる>ことを熟知し、<人を威圧して信用させるのは良くない。相手には、自分の意思で決定したと思わせなければならない>ということを実践していたからにほかならないだろう。

 さらに、こんな気になることも彼は同書で語っている。

<わざと情報を少し漏らしたり、挑発的な意見を言ったりして、反応を見よう>と。

 本来は交渉相手の気性を図るために行っていたようだが、彼のメディア戦略でもこうした考えが反映していたように思える。

 アグレッシブでエネルギッシュに見えるトランプだが、こんな一面もある。

<私は、精神的安定を保つ上で、一日に三時間ほどの静かな時間をもつことがとても重要なことに気付いた。その時間は、読書をしたり、一日を振り返ったりする。そうすると気分転換になり、気持ちが新たになる。私の外交的な性質に欠かせない情報を仕入れることもできる>

 小学生程度の英語でスピーチし、決して内省的な人間だと思われていないが、なんと彼の趣味は読書なのだ。

<私も映画やテレビが好きだが、読書は私の精神を満たしてくれる>

 派手な側面ばかり報じられるトランプだが、こうした側面も持っているのである。

 果たして、トランプが大統領になり、アメリカが、そして日米関係がどうなるのかはわからない。当のアメリカ人でさえも天を仰いでいる人も少なくないだろう。我々にできることは、過去に彼が発していた言葉から、今後の行方を占うヒントを探し出すことしかないのである。

<文/HBO取材班>