アデランス本社社屋(「Wikipedia」より)

写真拡大

 かつら最大手のアデランスは10月14日、MBO(経営陣による買収)で非上場化すると発表した。航空会社スカイマークの再建などで知られる投資ファンド、インテグラル傘下のアドヒアレンスがアデランス株式のTOB(株式公開買い付け)を実施する。

 買い付け期間は10月17日〜11月29日。買い付け価格は1株620円。10月14日終値(480円)より29%高い価格で買い付ける。普通株の取得額は、最大で226億円となる見込み。

 TOBが成立した後、アデランス創業者の根本信男会長兼社長と津村佳宏副社長が50.1%出資して、MBOを実施。MBO後、根本社長ら経営陣は留任する。アデランス株式は2017年2月をメドに東証1部を上場廃止となる見通し。

「ビジネスモデルを転換する必要がある」。津村副社長は、非上場に踏み切る理由を、こう説明した。女性向けかつらで首位のアデランスは百貨店などでの対面販売が中心だったが、近年はネット販売が台頭。堅調に推移する女性かつらの需要を狙い、異業種から低価格のかつらの参入が相次いだことも業績悪化に拍車がかかった。

 16年3〜8月期の連結決算は、売上高が前年同期比5%減の378億円、営業利益は63%減の1億円、最終損益は13億円の赤字(前年同期は3億円の黒字)だった。17年2月期の通期見通しは、売上高が前期比2%減の774億円、営業損益は3億円の赤字、最終損益は19億円の赤字の見込み。年間15円だった配当はゼロとなる。

 過去の成功体験は通用しなくなった。いったん上場を廃止して、ビジネスモデルを再構築するというわけだ。

●「ハゲタカファンド」スティール・パートナーズとの攻防

 アデランスといえば、「ハゲタカファンド」として日本企業を震撼させた米スティール・パートナーズに乗っ取られたことがある。アデランス株を買い占めて27.7%を持つ筆頭株主に躍り出たスティールは、経営陣に対し不信任を突き付けて揺さぶりをかけた。

 アデランスホールディングスが08年5月29日に開いた定時株主総会で、取締役7人の再任案が否決された。その後、経営陣とスティールの激しい攻防の結果、スティールが勝利。経営権を握ったスティールは09年12月、日本ペプシコーラ社長などを歴任した経営コンサルタント、大槻忠男氏を社長に送り込んだ。大槻氏は10年9月に社名をユニヘアに変更、大規模なリストラを実施した。

 しかし、大槻氏は高値売り抜けを狙うスティールと対立。スティールは11年2月、大槻社長を解任。創業者の根本信男会長が社長を兼任した。根本氏はただちに、社名を元のアデランスに戻した。スティールは、いったんクビにした創業者に頼らざるを得なくなった。

 スティールは14年12月、アデランス株を売却して撤退。乗っ取り騒動を経て、元の経営体制に戻った。

●女性用のファッションかつらが大人気

 国内のかつら市場は、アデランスとアートネイチャーの2強体制が長く続いたが、いまや群雄割拠の状態だ。

 矢野経済研究所によると15年度のヘアケア(毛髪、植毛、発毛・育毛、ヘアケア剤)の市場規模は4383億円。なかでも、発毛・育毛が2.8%増の672億円と堅調だ。アンチエイジングに対する関心が高まり、ファッション感覚でウィッグを付ける女性が増えてきた。

 ウィッグとは、ショートヘアの女性がロングにしたりする時に、髪型を変える目的で一時的に付ける洋風かつらをいう。いろいろな髪型が楽しめるおしゃれなアイテムである。

 女性をターゲットにしたウィッグ市場に小林製薬など異業種が参入。通販会社も独自のウィッグを売り始めた。人気を集めているのがユキ(愛知県蒲郡市)の低価格帯のかつらだ。

 女性用かつらは、百貨店で行う展示会を主要な販売ツールに据えてきた。ユキはアデランスなど2強が展示会を行う百貨店の隣接施設で似たような展示会を開き、ライバルの半額でかつらを販売して顧客を奪っていった。

 アデランスは数十万円以上するオーダーメイド商品がドル箱だった。だが、16年3〜8月期の女性のオーダーメイド品の新規顧客の売り上げは前年同期比27%減となった。女性用レディメイド商品の百貨店(直営店)の売り上げは7%落ちた。

 低価格のかつらに侵食され窮地に陥った。非上場にしてビジネスモデルを転換する。インターネットなどへの広告掲載を積極的に増やし、販売の基盤を再構築する。

 北米やアジアの海外市場に期待をかけている。米国は薄毛人口が8000万人とされる巨大なマーケットだが、日本のようにかつらを着用する文化はない。特にアデランスが得意とする高価格帯のオーダーメイドかつらは競合相手が少ない。

 国内は成長の伸びしろが小さい。海外売り上げは国内と肩を並べるところまできた。今後、アデランスは海外事業で成長戦略を描くことになる。
(文=編集部)