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Googleを傘下に収めるAlphabetの中にあって、自動運転カーやWi-Fi気球「Loon」などの野心的なプロジェクトに取り組む企業「X」(旧:Google X)を統括するアストロ・テラー氏がThe Vergeのインタビューに答え、Xが目指す未来について語っています。

Delivery drones will mean the end of ownership | Verge 2021

http://www.theverge.com/a/verge-2021/google-x-astro-teller-interview-drones-innovation

テラー氏はカーネギーメロン大学でコンピューターサイエンスを学び、人工知能の博士号を取得後、学問の世界から転身して健康管理会社BodyMediaを起業しましたが、同社がGoogleに買収された結果、Googleに合流することになりました。テラー氏は現在、前身であるGoogle Xに引き続きXの統括責任者を務めています。Xが行う研究は、自動運転カーに代表される通り野心的なものが多いため、Xを統括するテラー氏はアポロ計画の月面着陸になぞらえて「ムーンショット号艦長」という異名を持っています。



Q:

今から5年から10年先について、あなたには何が見えていますか?

テラー:

私にはわかりません。さらに重要なことは、未来は誰にもわからないということです。予知しようとするのはとても危険なビジネスです。私がXでやりたいことは、可能かもしれない想像上の産物にさまざまな質問を問いかけるという作業に集中することです。

Q:

テクノロジーにまつわる「不安」を軽減させるのは誰の責任ですか?技術者なのか規制当局なのか?

テラー:

新しいテクノロジーが社会にとってどれだけ役に立つのかを説明する責任は、我々「技術者」にあると思います。技術者は、責任ある技術を生み出すべきです。技術者はその技術が世界に与える影響を予見することができます。だからこそ、人々に技術の影響を正しく理解してもらうよう努めるべきなのです。技術の進歩は非常に速く、どんどん速くなり続けています。にもかかわらず、子どもたちが技術の変化に適応できるための必要な教育がなされていません。教育システムは失敗していると思います。

Q:

人工知能(AI)が現在人間が行っている作業を奪った後、雇用市場はどうなりますか?

テラー:

技術の進歩は、雇用の形を変化させ、新しい雇用を生み出してきました。それは最新の技術がある人を持ち上げると、その後で多くの人たちが持ち上げられるというテコのようなものです。狭い視点で見れば、技術革新は人々の仕事を奪うでしょう。AIはいくつかの職業を葬り去る可能性がありますが、同時に多くの新しい機会を生み出します。

Q:

Project Wingではドローンがブリトーを届ける実験を行いました。ブリトーをドローンに配達してもらったことは?



テラー:

あります。

Q:

どうでした?

テラー:

それは素晴らしく、実際のところ不思議なものでした。いつの時代も人間は移動手段を変え続けてきました。船、飛行機、電車、馬、郵便システムなど。これらは社会を大きく変えることなのです。これらを振り返ることはたやすいものです。それは、さまざまな問題を取り除いてきた後だからです。

Q:

ドローンが空中を飛び回るようになれば、多くのドローンは所有するのではなく共有するものになります。そうして電力を共有し、二酸化炭素の排出も削減されます。このドローンの未来を実現するのに最大の課題は何ですか?

テラー:

より長い距離を、完璧に自律的に、高い安全性を持たせて、低コストで行う必要があります。これらは未解決の問題です。電線に衝突しないように、仮に事故が起こっても空中で壊れることなくゆっくりと着陸できるようにしたいのです。未解決の問題はたくさんあります。

Q:

今後、住宅はドローン発射台と着陸台を持つようになるでしょうか?

テラー:

高層ビルにはヘリポートを備えるものがあります。また、ドローンが荷物を窓から落としたり、庭に落としたりするというデザインを見てきました。これらはXが取り組んでいることです。ドローンに配慮した建物を構築するのは時期尚早かもしれませんが、イメージし始めるのには良い時期だと思います。

Q:

気球でインターネット接続環境を届けるProject Loonで、インターネット環境の問題を解決しようとしています。常時接続環境にとっての潜在的な問題があると考えていますか?



テラー:

一部の人は、ネットにつながり続けることには弊害があると信じています。私自身はソーシャルメディアのヘビーユーザーではありませんが……。テクノロジーや他の革新的な物が社会を破滅に導くという発想で、人々がパニックになるのは初めてのことではありません。例えば、かつてロックンロールはアメリカの若者を腐敗させるものだと考えられましたが、アメリカの若者はロックンロールの中で生き抜きました。若者はFacebookの中でも生き抜くと思います。

Q:

Xが今取り組んでいるプロジェクトで、5年から10年後に社会に対して最も大きなインパクトを与えることは何ですか?

テラー:

私は"お気に入りの子ども"を取り上げることはしません。これは決して絶対的な答えではありませんが、質問に対しては真摯に答えようと思います。今から10年後、20年後に振り返ったときに、私たちがやろうとしている技術革新を秩序立てて、異常な楽観主義と厳しすぎる懐疑主義との間でうまくバランスをとることができたと思えることを願っています。これらがうまくいったとき、Xで出てきたどんなプロジェクトよりも大きなインパクトを社会に与えることになると思っています。

Q:

Xが生み出すプロジェクト(製品)ではなく、プロセスが重要だということですか?

テラー:

それこそが私が話していることです。これ以上に大きなインパクトがあるでしょうか?ヘンリー・フォードの見ていたものは「いかにして自動車を作ること」と「T型フォードそのもの」のいずれでしょうか?フォードが世界に与えた最も大きなインパクトは、自動車工場での交換可能な部品の体系化だと思います。この体系化は工場が生み出した製品よりもはるかに大きなものです。その意味で、自動運転カー、GoogleBrainと呼ぶディープラーニング技術など、Xから巣立っていったプロジェクトを誇りに思うと同時に、今もXで多くのプロジェクトが生まれようとしていることが誇らしいのです。



Q:

5年後、10年後にXはどうなっていますか?

テラー:

わかりません。5年後、10年後に再び来て、私に聞いてみてください。

Q:

Xはフォードよりも長生きするでしょうか?

テラー:

Xは将来にわたってあり続けられるように計画されています。長生きするかしないか、しばらく待って見てみようではありませんか。