“役者”林家正蔵がKAKUTAに初参戦!

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劇団KAKUTAの20周年記念公演の最後を飾る「愚図」が11月10日(木)から上演される。記念公演第1弾の「痕跡<あとあと>」は鶴屋南北戯曲賞を受賞、その後初の新作となり、周囲の期待も高まるところ。

【写真を見る】タイトルでもある「愚図」が象徴的なチラシ

今回の作品について、作・演出・出演の桑原裕子に語ってもらった。

「『愚図』という作品は、立ち入り禁止の山にある工場跡地に2人の女の子が足を踏み入れ、“あるモノ”を見つけてしまうところから物語が始まります。その“あるモノ”にまつわる謎解き的な要素が縦軸にありつつも、一見関係がないようなさまざまなグループが登場し、互いに交差しつつ別々の物語を展開させていきます。

それらに共通し、また帰着するのはやはり“愚図”という言葉。グズと呼ばれる夫婦や、誰にも言えず隠しているグズグズした思い、他人からすればくだらないことでグズってしまう時など…悪口やレッテルでもあり、弱音や甘えとも言える“愚図”というものについて、いろいろな角度から描いています。

またそれら全てを俯瞰して、人々のさまつで滑稽で、でも切実な“愚かな図”を見せられたらと思っています。だからチラシのコピーにもある通り“愚図たちの全力疾走曲”なんです」。

鶴屋南北戯曲賞を受賞後の最新作となる本作、プレッシャーなどはあるのだろうか?

「2年ぶりの新作ということでやはりプレッシャーはありますし、賞を頂いたことで期待値が上がってることを思って、『失敗できない』と不安になっていたときもあります。

ただ、結局は今描けるモノを描く、今やりたいモノをやるというところに戻ってきてしまうんですよね。だからプレッシャーを感じたところでそれが作品に影響を及ぼすということは結果的にはあまりないのだなと思いました。『怖がる』ということで多少時間は食いますが(笑)。

仮にこの作品が『痕跡<あとあと>』よりつまらないといわれても、今やりたかったのはこれだとしか言えないし、自分なりの新しい扉を開いてみたい。『痕跡<あとあと>』や北九州芸術劇場プロデュース公演『彼の地』などを書いたところで、ある近しいスタイルは出来てきたかも知れませんが、それもまた、この物語をやるに当たって必要だと思っただけで、そこにこだわりがあるわけでもないんです。ですがむしろ、劇団員に対するプレッシャーはなぜか異様なくらいにありました(笑)。

賞を頂いたことよりも、劇団員をガッカリさせないような作品をと考えて恐ろしくなることの方がずっと多かったかもしれません。それも20周年だからですかね?」。

今作では林家正蔵が客演として参加しているのも話題だ。

「チラシの表面に、森の中で当惑して立つ林家正蔵さんの顔があって、その上にビタッと『愚図』というタイトルの文字を重ねているんですが、それがまさに象徴的で、正蔵さんには役どころの中でも“愚図”というレッテルをずしっと背負っていただいています。

正蔵さんに演じていただくのは、自分の居場所を見つけられず、焦りながら間違えながら、人生をさまよっている男。愚図と呼ばれてただジッとしているのではなく、水面に浮かぶカモみたいに、必死に水中で足をばたつかせているんです。だけど前に進まない。それどころか曲がったり沈んだりしてしまう。

でも、実は他のキャストの方々にもそれぞれ“愚図”な面があって、劇団・猫のホテルの千葉雅子さんにはまた別の愚図を背負っていただいています。千葉さんが演じるのは愚図な自分を脱して変貌していく女。私の好きな、サバイバルする女性です。

そして、全く愚図には見えない今奈良孝行さんもひそかに同じテーマを抱える役どころ。今回の今奈良さんには新鮮な色気が…。他にも、個性的で頼れる客演陣が集まってくれました。私と同世代の今藤洋子さんは毎回稽古場を湧かせる華やかな爆弾みたい(笑)。

谷恭輔君は5月にKAKUTAで上演した『ねこはしる』という作品で純粋で真っすぐな主人公ランを演じてもらいましたが、今回は全く別の顔を見せてくれています」。

稽古場ではやはり落語の話題など出たりするのだろうか?

「実はまだ、正蔵さんの落語をみんなで聞いたりというようなことをしていないんです。本当はそんなこともしてみたいのですが、今は全員、正蔵さんを俳優だと思って向き合っています。だから師匠と呼ぶこともほとんどなくて。それはやっぱり、正蔵さんが俳優としてこの現場に来たいという姿勢を強く見せてくださっているからなんですよね。

みんなと一緒に必死で稽古に臨んでます。ミスしたらみんなでツッコんだりもしますし(笑)。でも、どれほど権威があっても偉ぶらず、そういう空気を作れるのが林家正蔵という人のすごいところなんだと思います」。

最後に来場者へのメッセージをお願いします!

「『愚図』という作品を書くとき、結果的に向き合わざるを得なかったのは、子供の頃からずっと愚図と呼ばれてきた自分でした。他人に呼ばれるだけでなく、自分自身にそのレッテルを貼って生きてきたことを思い出しました。愚図を言い訳にして逃げてきたモノもありました。

他人から見ればとるに足らないくだらないことで、悩んだり迷ったり、立ち止まったり転んだり、沈んだり浮かんだり。でも、そういう地味で愚かで滑稽でさまつなあれこれに対するもがきが、自分をここまで生かし、前に進めてきてくれたのだとも思います。

今作は、そんな“もがき”を集めた作品です。愚図という言葉に思わず自分を当てはめてピンと来てしまう人にも、まるで無縁だと思う人にも、ぜひ見ていただきたいです」。