厳しいプレッシャーを受けても、全くボールコントロールを乱すことなく、スムーズな動きでチャンスを創り、フィニッシュに絡む。先週末のフランクフルト戦では精彩を欠いたものの、大迫への評価は高まる一方である。 (C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

「サッカー界のおとぎ話のようだ」
 
 10月20日、ケルンが大迫勇也との契約を2020年まで延長したと発表すると、『ビルト』紙は、そのように驚きを表現した。
 
 それも無理はないのかもしれない。昨シーズンまでは地元ファンからもため息が漏れ、叱責が飛ぶことが少なくなかった大迫が、序盤からの好調を持続させ、常に躍動感のあるプレーでスタジアムの熱狂を誘っているのだ。
 
 RBライプツィヒ戦でのゴールを『エクスプレス』紙は「ファンタスティックなプレー」とべた褒めし、『スポーツビルト』誌では単独インタビューが掲載された。
 
 クラブ関係者やファンからの賛辞も続く。 監督のペーター・シュテーガーは「以前よりもくだけた感じになった。ユウヤは普通ではないサッカー選手なんだ」と称賛を惜しまない。
 
 そして、リーグ得点王争いでトップに立つアントニー・モデストを抑えて、ケルン・ファン選定の「10月のMVP」に輝いている。
 
 契約延長時にクラブホームページに紹介された「チームは結果を残しているし、そのなかで僕は居場所を見つけることができた」というコメントからは、チームのために戦える場にいる喜びと、自身の力を発揮できているという自信が感じられる。
 
 ケルンでの好調さを評価され、日本代表にも復帰した大迫。ここでは、彼が今シーズン見せているプレーを分析し、代表でどのようなプレーが期待されるかについて考察してみたいと思う。
 
 フィニッシュに絡む動きについては、言うまでもない。特に今シーズンは、ペナルティーエリアでボールを受けてからシュートに持ち込む流れが、非常に滑らかで素早い。
 
『スポーツビルト』誌のインタビューでは、「FWで使ってもらえると、自分の直感でプレーできる」と答えていたが、本来のポジションでシュートに持ち込む感覚を取り戻している。
 
 その他で目を引くのが、大きな動きからではなく、細かいステップチェンジから相手の嫌がる場所にポジションを取れるところだ。
 
 方向とリズムを変えたと思えないくらいのスムーズなステップワークで相手の裏を取ることができれば、そこに一瞬の間を作り出すことができる。そして一瞬の間を作り出せれば、そこにボールを収められる巧さと強さを大迫は持っている。
 
 こうした動きができると、相手が守備を固めてスペースがないところでも、ボールを受けるための空間を作り出すことができるのだ。
 スペースへ飛び出すタイミングも良い。パスを出せる選手にボールが渡る前に、次の展開を読んで動き出すので、フリーで抜け出すことができる。足元でもDFラインの裏でもボールを受けることができるため、相手も的を絞りにくい。
 
 FWで起用されても、中盤まで降りてきてゲームメイクに参加できる点も見逃せない。
 
 相手の守備に味方が苦しんでいるのを見ると、すっと下がってパスを引き出し、守備の弱いところにパスを展開。そこからまたゴール前に入っていくのだが、その時にも優れた動きを見せる。
 
 慌ててゴール前に飛び込むのではなく、相手の守備の位置を見て、瞬時にボールがこぼれてきそうな位置を予見し、ススッと入り込んでいく。
 
 そして、当たり前のように前線からのハードワークもしっかりとこなす。
 
 プレーのバリエーションの多さから、パートナーを選ばない柔軟性と万能性を兼ね備えているだけに、代表でも大きな力になるのは間違いない。
 
 ただ、日本代表にはモデストがいない。大迫自身が、モデストのような柱となるプレーをすることが求められるはずだ。相手のマークを一身に受けながら、ポストワーク、チャンスメイクだけでなく、ゴールに繋がるプレーができるかどうかがポイントになるだろう。
 
 ケルンでの勢いを代表チームに持ち込み、アタッキングサードでの交通渋滞を緩和させるだけの存在感を発揮してほしい。
 
文:中野 吉之伴
 
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/ドイツ・フライブルク在住の指導者。2009年にドイツ・サッカー連盟公認のA級コーチングライセンス(UEFAのAレベルに相当)を取得。SCフライブルクでの研修を経て、フライブルガーFCでU-16やU-18の監督、FCアウゲンのU-19でヘッドコーチなどを歴任。2016-17シーズンからFCアウゲンのU-15で指揮を執る。1977年7月27日生まれ、秋田県出身。