パロディ、エロ、コメディー、視聴者を飽きさせない数々の工夫


「コック警部の晩餐会」第3話。このドラマには数々の小ネタが仕込まれている。

例えば、七瀬あずみ(小島瑠璃子)が敬愛するのは「刑事コロンボ」ならぬ「刑事トロンボ」。仮面ライダーゴーストで天空寺タケルを演じた西銘駿が扮する田部歩の店は「天空」。そこに並ぶフィギュアは様々な仮面ライダー達だ。今話のゲスト、オダマリ役のキンタロー。の部屋には、AKB48の衣装が飾られている。

小ネタの他にも、必ず出てくるのがお色気シーンだ。あずみと一緒の寮に住む桃役の久松郁実は、毎回胸の谷間を強調した格好で登場する。ここが楽しみな男性視聴者も少なくは無いだろう。原作の無いオリジナルドラマならではの自由さだ。

このように「コック警部の晩餐会」には、視聴者が飽きないように数々の工夫が存在する。設定が設定なだけに、シリアスなだけでなくコメディ要素もふんだんに取り入れているのだ。では、肝心のトリックはどうなのだろうか?グルメミステリーを謳っているだけに、推理にグルメが絡んでくるのが理想となる。


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あらすじ(ネタバレ有り)


大衆割烹店の店主・香田(古河耕史)の遺体が神社で発見された。猫田刑事(えなりかずき)は、香田と口論をしていた人気グルメリポーター・オダマリを逮捕する。凶器は、かつお節。被害者の身体とオダマリの家からかつお節菌が発見された事が決め手となった。しかし古久警部(柄本佑)は、犯人は他にいると考え、お好み焼き屋「伊豆川」店主の美奈代(柴本幸)を捜査する。

今回の登場人物は、グルメリポーター、お好み焼き屋店主、割烹店主とその見習い、警察関係以外全員グルメ関係だった。そして犯人と被害者を結びつけたヒントは缶コーヒー。誤認逮捕で疑われた凶器はかつお節。本物の凶器を見つけだすヒントになったのはティーパック。そして、本物の凶器は凍らせた小麦粉だった。

なんと、全てがグルメに関するもので構成させていたのだ。凍らせて袋に入れた小麦粉でキャベツを試し割りしたシーンは、迫力と意外性があり、グルメミステリーとしては理想的と言える。ミステリーの質だけでなく、グルメの部分にこだわってこそのグルメミステリー。今後もこういったトリックを期待したい。

あれ?なんか大事なもの抜けてないか?


だが、見終わった後に何かモヤモヤが残る。なぜだろうか?今話の犯人はお好み焼き屋店主の美奈代だった。美奈代は、終始素っ気無い態度を取り続ける“嫌な奴”だった。取り調べ中にタバコを吸う。被害者に“かつお節をお客様が削る”というアイデアを貰っても、恩を感じている様子は見せない。古久警部にお好み焼きを焼いてもらっても、食べる前から文句を言う。もう完全に嫌な奴だ。

これは被害者に相当な恨みがあるに違いない。じゃないとこんなにヒネた女になる訳がない。どんな重い動機を持っているのだろう?

しかし、驚くことに被害者へのなんの恨みも明らかにならなかった。「もうこの店にこないで!」という微かに因縁を想像させるセリフはあったものの、動機すら最後までわからず終まいだったのだ。嫌な女が訳も無く嫌な女で終わってしまった。これがモヤモヤの正体だ。痴情のもつれでも、借金でも、愛する人の仇でも、ベタで良いから何かしらの理由付けは必要だったように思う。

推理物はいつ?なぜ?どうやって?殺したかをハッキリさせることでオチがつく。今回は、いろいろな物を詰め込みすぎて肝心の推理物としての要素が欠けてしまっていた。このドラマは、推理にグルメを掛け合わせないといけないという他のミステリーよりも制約の多い設定だ。しかも、放送時間は25分にも満たない。もう少し要素を減らしてスッキリさせても良いのかも知れない。

今夜放送の第4話は、ラーメン屋の跡継ぎ争いがテーマ。そしてアリバイはその男にしか作れないスープだという。これはそそられる。最高のグルメミステリーを期待したい。

ちなみに、えなりかずき演じる猫田刑事から「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか」というセリフが飛び出るぞ。

(沢野奈津夫)