チャイナリスク関連倒産月次推移

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 10月の「チャイナリスク」関連倒産は7件(前年同月比46.1%減)で、5カ月連続で前年同月を下回った。負債総額は38億8,000万円(同40.4%減)と大幅に減少した。
 ただ、2016年1-10月累計は88件(前年同期85件、前年同期比3.5%増)と前年同期を上回っている。
 前年は、第一中央汽船(株)(TSR企業コード:291084648、法人番号:2010001113921、東京都)が負債1,196億700万円を抱えて民事再生法の適用を申請したが、今期はこれに匹敵する大型倒産がなく、負債総額は601億4,800万円(前年同期2,292億3,000万円)と前年同期より7割(73.7%減)減少している。
 なお、倒産に集計されないが事業停止や破産準備中などの「実質破綻」は、10月は3件発生した(前年同月は1件)。


  • 「チャイナリスク」関連の集計基準
    「チャイナリスク」関連の経営破綻は、破綻の原因が次の8項目のどれかに該当するものを集計している。
    1. コスト高(人件費、製造コストの上昇、為替変動など)
    2. 品質問題(不良品、歩留まりが悪い、模倣品、中国生産に対する不信など)
    3. 労使問題(ストライキ、工場閉鎖、設備毀損・破棄など)
    4. 売掛金回収難(サイト延長含む)
    5. 中国景気減速(株価低迷、中国国内の消費鈍化、インバウンドの落ち込みなど)
    6. 反日問題(不買、取引の縮小、暴動など)
    7. 価格競争(中国の在庫調整に伴う相場下落、安価製品との競合など)
    8. その他
    ※ 2016年4月の発表分から、より実態に即した集計とするため、集計基準に「7.価格競争」、「8.その他」を追加した。2016年3月以前の発表分についても遡って計上している。
    ※ 「チャイナリスク]関連の経営破綻は、下記の「倒産の定義」のいずれかに該当するケースを「倒産」として集計。「事業停止」や「破産申請の準備中」などは、倒産とは区別し「実質破綻」としている。
  • 倒産の定義(対象:負債額1,000万円以上の法人および個人企業)
    A. 会社更生法、民事再生法、破産、特別清算を裁判所に申請した企業(法的倒産)
    B. 手形決済などで6カ月間に2回の不渡りを出し、銀行取引停止処分を受けた企業(私的倒産)
    C. 企業が経営破綻により事業継続を断念したが、法的手続きを採らず弁護士などに事後を一任して私的整理(内整理)を明らかにした企業(私的倒産)
    ※「チャイナリスク」関連倒産の集計開始は2014年1月。

 今年1-10月の「チャイナリスク」関連倒産は88件となった。形態別では、法的倒産のうち再建型が4件で前年同期より1件(前年同期比20.0%減)減少し、破産や特別清算の消滅型は72件で4件(同5.8%増)の増加となった。
 1-10月の全産業の倒産(7,043件)は、再建型が前年同期の203件から210件(前年同期比3.4%増)に増加している。一方、消滅型は6,305件から6,096件(同3.3%減)に減少しており、対照的な結果となった。中国の景気減速による販売不振や人件費高騰などによるコスト上昇、価格競争による収益悪化が、ジワリと日本企業の業績に悪影響を及ぼしている。
 そうしたなか、中国に現地法人を置く企業に注目が集まっている。今治の老舗タオルメーカーの(株)ハートウエル(TSR企業コード:810002213、法人番号:6500001012137、愛媛県)は、現地法人の天津華徳温紡織有限公司(1992年設立)に「政情や為替変動による想定外の資本注入を余儀なくされ」(民事再生申立書)、資金繰りが悪化した。その後、現地法人の運営継続は不可能と判断し、2014年から撤退を開始し2015年12月期に20億2,500万円の特別損失を計上して大幅な債務超過に転落。私的整理を模索したが実らず、10月6日に負債23億2,200万円を抱えて、松山地裁今治支部に民事再生法の適用を申請した。
 このように安価な製造コスト、広大な市場が魅力だった中国に進出しても、政情不安やコストアップなどの追加支出で、「魅力」が今や重荷になっている中小企業は少なくない。中国は依然として大きなビジネスチャンスを残しているが、現実には進出した日系企業の投資の回収計画が狂い、撤退を決断しても法規制や商慣習の違いなどで資金負担が想定を超えるケースもある。
 「チャイナリスク」関連倒産は5カ月連続で前年同月を下回っているが、根本的なリスク要因は縮小していない。さらに、為替相場が円高基調をたどると安価な商品の流入にもつながりかねず、今後も月10件前後のペースで発生する可能性を残している。