人気の美容業界になぜ後継者がいないのか[オトコが語る美容の世界_1]

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日本の美容室の数は、寿司屋の数より、蕎麦屋の数よりも多い。

寿司屋が全国に約11万軒、蕎麦屋が約8万軒とすると、その合計に近い数が美容室であり、それは神社の数よりも多い、巨大な業界である。これに理容室やネイルサロン、エステサロン、化粧品小売店などが加わると事業数はさらに増え、美容業に携わる人口も200万人以上となる。

地方へ行っても、駅前の繁華街から、田舎の街道沿いにポツンとある事業まで美容室だったりする。そんな風景は想像しやすいのではないだろうか。

私の実家も美容室を経営しており、全国に約18万件あるうちの一つである。大学を卒業してブランドコンサルティングの仕事をしていた男子にとっては、美容室を継ぐことは人生の選択肢には入っていなかった。むしろそれが普通で、全国の美容室、化粧品小売店の主も後継者の問題で悩んでいる。人口で言えば人気業種なのに、後継者がいない。

いまは私もその家業にもかかわるようになり、そうなると俄然、日本の美容業全体の素朴な疑問も見えてくる。何が人気の原因で、何が人気ではない要因なのか。日本の美容業はどこへいくのか-。

疑問を追っていくと人間社会の面白い価値観が見えてくる。日本の社会構造や未来のビジネスへのヒントもたくさんある。

化粧品業界全体の集まりに参加していて感じる素朴な疑問がある。それは、男性が兎に角多いことである。美容業の集まりではあるが、スーツ(しかも普通のグレーのスーツに白ワイシャツとネクタイ)に身を固めた中年男性ががマジョリティである。アジアはもちろん、欧州でもアメリカでも、ここまでスーツの中年が圧倒的多数の美容業はない。

美容だからマジョリティが女子であるべきだ、とは思わないが、日本は美容先進国と言われても女性の活躍においては後進国だろう。女性社員の福利厚生を考えるべき担当者レベルの集まりでも、男性が9割。女性の労働問題や健康問題が素直に担当者に上がってきているかも疑問に思われる。

美容業界だけではなく、農業界、車業界、議員の資金集めパーティなどにも出席したことはあるがやはり女性は少なく、多いのはアパレルやマスコミ、あとは意外にもITや環境業界。先端の事業、新しい事業には多い気がする。逆の言い方をすれば中年男性が多いのは業界の専門分野ではなく、業界の古さに比例するのではないだろうか。

先日、五輪関連のフォーラムにご招待いただいたが、こういう場でも同じ。男性が圧倒的多数であった。8〜9割が男子、そういうレベルの比率である。安倍首相は別部屋で参加しており、女性が少なかった会場全体は見ていなかったのかもしれない。

話はずれるが、パラリンピックも併催の2,000人規模の集いでありながら、車椅子や付き添いの必要な障害者も両手で数えられるくらいしか見かけなかった。運営する人が障害者である必要はないが、温度差は感じる。

昨今、政府主導、大手企業主導で高らかに”女性の活躍”を謳っている。2020年の東京五輪に向け、もっと女性や外国人、障害者、いろんな人がもっと活躍できると謳っている。確かに毎年少しずつ変わってきているが、もっと変わってもいいのではないか。

美容業界なんかは他業界より新しさ、流行の先端を担う側面がある。そういう意味では、この業界トップの資生堂が、とくに女性の活躍において世界的に見ても優秀すぎるほど登用や採用で先んじていて、そこはとても心強い。でも、もし、美容業界の新年会の全体風景を撮影し、友人に「この写真は何の業界のパーティか?」と聞いても、当たらないと断言できる。

いろんな業界のパーティ写真を並べてクイズにするのは、面白いビジネスクイズになるのではないかと思う。