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●日本自動車業界再編の渦中にあって
トヨタ自動車とスズキが提携を検討すると発表したことで、日本の自動車メーカーはトヨタ、日産自動車、本田技研工業(ホンダ)の3グループへと集約が進んだ感がある。トヨタとルノー・日産連合は共に“1,000万台クラブ”へのチケットを手にしているが、気になるのは販売台数500万台規模のホンダの立ち位置だ。このまま自主独立路線を維持していけるのだろうか。

○3陣営に集約される日本勢

日産による三菱自動車への資本参加、トヨタとスズキの提携検討入りと、ここへきて日本の自動車業界の再編・集約が急速に進んでいる。

トヨタとスズキの提携が実現すると、国内自動車業界はトヨタグループ(ダイハツ工業、日野自動車、富士重工業、いすゞ自動車、マツダ、スズキ)、日産・ルノーに三菱連合と、外資を親会社とする三菱ふそう(独ダイムラー)、UDトラックス(スウェーデン・ボルボ)、ホンダに色分けされる。

乗用車メーカーで見ると、トヨタグループ、日産(ルノー)・三菱自連合、ホンダの3陣営に集約されるということだ。つまり、ホンダだけが独立する形となるわけで、ホンダが今後どう動くのか、その去就が注目されることになる。

○新たな自動車再編の背景

なぜ、ここへきて日本の自動車メーカー再編の動きが進んでいるのか。その背景には、世界自動車再編が「環境対応」へと規模を求め、国境を越えた合従連衡へと発展した2000年代初頭から十数年を経て、さらに厳しくなる環境規制がある。自動運転やコネクティッド・カーといった新技術の登場も再編を加速させている。

規模の大きな自動車メーカーであっても、単独で全方位の研究開発テーマに取組むのは難しく、先端技術の投資を分担するための提携が広がっているということである。もちろん、それは自動車メーカー間の提携だけでなく、IT(情報技術)やAI(人工知能)分野など、異業種との幅広い提携も模索されている。

それにしても、日本の自動車業界はいまや欧米の自動車業界と肩を並べ、世界の自動車をリードする立場を強めている。その中にあって日本自動車メーカーは乗用車8社、トラック4社の12社メーカー体制がここまで生き抜いてきた。

だが、その業界構図の中身を見ると2000年代以降は大きく変化しているのだ。ここへきて再編が加速し、特に乗用車は3陣営に集約されようとしている。その中で自主独立を貫いてきたホンダの“孤立”が目立つことになったのだ。

●「1,000万台クラブ」対500万台規模、ホンダの立ち位置
○日産も規模を手に入れた

日産のカルロス・ゴーン社長は三菱自に34%を出資し、三菱自を傘下に収めたことで「ルノー・日産連合に三菱自を加えて世界販売1,000万台規模となる」と胸を張った。トヨタや独フォルクスワーゲン(VW)、米GMの「世界販売1,000万台クラブ」に対抗できるルノー・日産・三菱自連合をゴーン社長は手に入れたのだ。

21世紀初頭の世界自動車大再編では「400万台クラブ」で世界400万台規模を持たないと生き残れないと言われた。これは根拠のない数字だったが、ある程度の規模がないと、環境対応のエコカー(電動車)開発への先行巨額投資ができないからというのが理由とされていた。

今では、これが1,000万台クラブということになるが、ゴーン日産社長も「規模拡大が第一ではなく、グループ間シナジーを最大限生かすことだ」とし、1,000万という数字にこだわっているわけではないという考えを示している。

 ホンダの2015年の世界販売は464万台。世界自動車メーカーとして7位にランクされる。伊東前社長体制で「4輪車世界600万台体制確立」を狙ったが、世界6極による現状の生産能力年570万台規模に対して需給ギャップが生じている。

また、昨年、伊東体制から代わった八郷隆弘社長は“調整型”で、「拡大構成路線を見直し、チームホンダでホンダらしさを改めて打ち出す」方針を掲げている。前期決算までは、度重なるリコール問題やタカタのエアバッグ問題で品質費用が巨額となり、業績が低迷。同業他社が軒並み最高益を計上する中で大幅な減益となり、「ホンダの独り負け」と揶揄される流れだった。

○ようやくホンダが反転攻勢の気配

「元気のないホンダ」とか「ホンダがヘンだ」との見方が大勢を占めるなかで、同社は今期からようやく反転攻勢への気配を示している。先頃のホンダの今期中間連結決算発表では、今年4〜9月の営業利益が前年同期比22.5%増の4,949億円となった。円高の影響があったものの、日本、北米、中国などで新型車が好調で、コストダウン効果もあり大幅な増益となった。

2016年度通期見通しは、営業利益が29.1%増の6,500億円を見込み、前回予想から500億円上方修正している。各社が円高で大幅減益となる中、ホンダは為替差損を吸収する形で増益に転じている。これには品質費用の引当てが前期までにほぼ済んだことも影響している。

米国や中国では新型シビックなどの好調が販売。米国生産の新型NSXを復活させ、国内でも新型フリードを投入するなど、八郷体制発足から1年を経過してようやくホンダの反転攻勢が描かれてきたのか。

●自主独立堅持か、連携強化か…ホンダの行く道
「ホンダ孤立化」。日本の乗用車メーカー構図が3陣営に集約され、ホンダだけが単独になることで従来のホンダ自主独立経営方針も限界か、とささやかれる。

なぜホンダは自主独立路線を貫いてきたのか。それは創業者本田宗一郎以来の「ホンダらしさ」の追求にある。初代本田宗一郎氏の「技術は人間のために、独力で技術開発にこだわる」反骨精神が、これまでホンダには脈々と受け継がれてきた。歴代の社長は、ホンダの「本家」ともいうべき本田技術研究所社長経験者で「突っ張った」トップばかりだった。

もちろん、ホンダがどことも提携してこなかったわけではない。かつて国内ではフォードと提携し、フォード車販売ネットワークを構築。クライスラーとはジープタイプの販売で提携していた。国内ではいすゞと乗用車業務提携の関係もあった。海外では英ローバーと資本提携したこともあったが、この提携で苦い経験をして懲りたこともホンダの自主独立路線に繋がっている。

○ホンダらしさ復活前提に異業種提携も含め方向転換か

「最近のホンダは変わったな」と、長年にわたりホンダをウォッチしてきた筆者は感じる。本田技研工業と本田技術研究所が両輪となり、2輪、4輪、汎用エンジンのみならず、最近ではロボットから小型ジェット機まで、独自の立ち位置を示してきたホンダ。しかし最近では、大企業病ともいうべき官僚体質的な面が見えるようになった。つまり、ホンダがただの大人の会社になったような感がする。やはり改めて「ホンダらしさ」を復活すべきだろう。

ようやく業績面で反転攻勢の兆しが見えるなかで、創業者の本田宗一郎氏以来のチャレンジ精神を前面に出していくこと、何といっても、本田宗一郎氏の技術屋というよりやんちゃな職人気質の「魂、熱意、チャレンジ」が引き継がれてきたのが「ホンダらしさ」なのではなかろうか。

ホンダの研究開発費は2017年3月期で6,900億円と過去最高水準にある。これはトヨタに次ぎ日産を上回るが、利益規模を見るとホンダの負担は重い。本田技術研究所という存在は、埼玉・和光に先端技術研究部門を置くなど独自の技術にこだわってきた。

先頃の中間決算発表では、「全て単独という時代ではない。双方にとってウイン・ウインの関係なら積極的にやるべきだと思っている」と倉石誠司副社長は提携について答えている。

すでに米GMとは燃料電池車で提携しており、共同開発で2020年をめどにFCV新車を投入する予定。米シリコンバレーに研究開発拠点を置いているし、9月には東京・赤坂にAIの研究開発拠点を新設する。

最近のホンダの動きで注目されたのが、ソフトバンクとAI分野で手を組んだこと。ホンダは7月22日、ソフトバンクと共同で人工知能技術「感情エンジン」をモビリティに活用するための研究を始めると発表している。これは、自動車に人の感情を読み取る「感情エンジン」を搭載しようというもので、ホンダとソフトバンクが共同研究で手を握るというのも注目される。

ホンダが連携強化への経営スタンスに切り替えていく中で、世界販売でも1,000万台クラスに復活してきた米GMとの提携拡大に進めるのか。それともソフトバンクとの提携のような異業種連携を進めるのか。新たな展開に入ってきたといえよう。

(佃義夫)