子のイジメ 頭のいい親がしている「神対応5」

写真拡大

最近もイジメによる自殺、あるいはイジメの被害者が校内で加害者をナイフで切り付ける事件が発生した。こうした痛ましい出来事がなくならない。そこで、イジメ問題の相談もよく受けている教育アドバイザーでエッセイストの鳥居りんこさんにイジメ問題について語ってもらった。

■わが子がイジメに。事態を悪化させる親とは

イジメはある日、突然わかる。

親が「わが子がイジメられている」という事実に気付くのは、イジメ開始日からはかなり経った後である。

イジメというものは哀しいことに親には「わが子の堤防決壊」の瞬間まではわからないものなのだ。

サインとしては食欲がなくなる、元気がなくなる、朝、起きられないなどもあるが大抵は心の悲鳴に体が追いついたとき、すなわち、体が学校に行くことを拒否したときにようやく親は気付くことができるくらいで、親には「青天の霹靂」感が漂う(我慢に我慢を重ねる子どもたちも多いので、その「堤防決壊」の瞬間が自死という最悪のケースもある)。

ここで親は焦りまくり、しばしばパニックに陥り、事態を余計悪化させる事例も散見される。ここでは、その「とてもじゃないが容認できない事態」が起こったときの親の対応策を論じてみたい。

【親の正しい対応策1:子どもの安全地帯を確保する】

何より優先させるべきことがこれだ。

わが子を詰問することよりも先にこれをやらなければならない。

これには、ふたつのやるべきポイントがある。まずひとつめが「体の居場所」を確保すること。

わが子に安全なところにいる権利があるということを伝えることだ。家庭内でも良いし、保健室でも良いし、習い事の空間でも良いし、とにかく安心安全だと本人が思える居場所を確保することが先決になる。

これを「逃げ」だと言う人がよく出るが、これはある意味、戦争なのだ。

形勢不利な場合、一時撤退はセオリー。安全を確保した上で戦術を練り直すのは当然である。

難関中高一貫校に子どもを行かせている親がよく「せっかく入ったのに、被害者が学校を休まないといけないのか!」と怒るが、事態は急を要する。大体「ここにしかない幸せ」は大した幸せではない。捨てる、逃げる、上等である。

次に「こころの居場所」の確保だ。早急かつ速やかにわが子の自尊心のチャージをしなければならないのだ。

それには親はわが子と「今日が今生の日」という思いで向き合う必要がある。

まず、わが子を褒めよう。加害者ではなく被害者であってくれたということを褒める。我慢をしてきたことを褒める。親にカミングアウトした勇気を褒める(これは親が思う以上にすごい勇気である)。同時に、SOSを出すことは誰にとっても恥ではなく、必要なことだと伝え、親としては子どもからのSOSは信頼の証で嬉しい旨を表明しよう。

そして、わが子に「君は何も悪くない」と伝えることも大切だ。さらにわが子に「誇りに思わせてくれてありがとう」と言えたならば完璧だ。あなたの子どもがイジメる側ではなかったという事実はあなたの子育てが間違っていなかったという証拠だからだ。

まずは親もここで自分の家庭に自信を持とう。

■被害者根性に囚われると、完全な逆効果

【親の正しい対応策2:被害者根性に囚われすぎない】

イジメは交通事故に似ている。誰にでも起こりうる問題であることがひとつと、示談などが成立して、その事故のお裁きが確定したとしても、被害者には後遺症が残ることもままあるという点でもそうだ。

被害者の傷は一生ものになりかねないことを理解しながらも、この経験を決して無駄にはしないという決意を胸に秘めることをお勧めしたい。

それには戦略が必要になるのだが、とりあえずやるべきことは「今日、起きている問題が明日、続かない」。これに尽きる。

しかし、被害者の立場を前面に押し出すと事態は間違いなく悪化する。先日私が実際に受けた相談に「加害者の親に知らしめて『あなたの子どもはこんなひどいことをする子なのだ』ということをわからせたい」というものがあった。

被害者の親には自分の家庭だけが苦しむのは理不尽だという思いと、可愛いわが子の敵を討ちたい、罰を与え、仕返しをしてやりたい、この悔しさをどうにか晴らしたいという思いが交錯する。

いきなり弁護士が登場するケースも沢山ある。

思いをストレートに加害者側にぶつけても、誠意をもって謝罪する親は稀で、大抵は態度を硬化させるだけになるだろう。加害者の懲罰を願うのは後でいい。よその家庭の子育てにまで今は責任を持つ必要はないのだ。まずは目の前のことに集中して、わが子のことだけを考えるのだ。

【親の正しい対応策3:学校のスタンスを理解し、教師を敵に回さない】

イジメ相談を受けるといつも思うが、戦術ミスを重ねたために学校を敵に回し、泥沼化を招く親が出るのだ。

泥沼化した後では対応に苦慮しがちになるので、初動がとても大切になる。それには学校側の立場を把握しておく必要がある。被害者側からは理不尽に映るだろうが、学校というところは警察でもなければ、裁判所でもない。つまり、どちらかに加担するということはしない。

学校から見れば、被害者も加害者も同じ可愛い生徒なのだ。学校はどの子にも平等に接する義務がある。さらに言い切るならば、どちらかと言えば加害者の方に手厚く感じることの方が多いかもしれない。なぜなら、弱い方の生徒を黙らせることの方が簡単だからだ。

ここに憤って、被害者根性を前面に出して教師を責めると学校は簡単に敵に回ってしまう。そもそも被害者親は学校から歓迎されない存在であるということを肝に銘じることからのスタートになる。

最小限の傷で済むことを望むならば、加害者と学校を責めるのではなく、みんなで良い方向に向かいたい、そのために自分(親)に何ができるのかを教えてほしい、できることは何でも協力したいと申し出ることが大切になる。

そこで、ようやく「話ができる親」ということで、学校との交渉権を得ることができるのだ。ここを間違ってはいけない。

■頭のいい親が学校側に冷静に伝える4つのこと

【親の正しい対応策4:落としどころを考えた交渉術を駆使する】

学校とはできるだけ冷静に、かつ具体的に交渉することが肝要だ。学校はピラミッド社会なので、いきなりトップに直談判するよりも、段階を踏んで行った方が余計な恨みつらみを買わずに済む。

(1)まずは双方の話を聞き、第三者の話を聞くという事情聴取を要望。
(2)担任だけが抱え込まずに、学年団、あるいは生活指導部なども合同で、開かれた環境で対応策が練られることを要望。
(3)クラスの問題か、学年の問題か、学校全体の問題かも検討してほしい旨を要望。これらをフィードバックしてもらうことを確認。
(4)加害者の謝罪も含めたペナルティ、そして肝心なわが子への具体的フォローの実施方法。今後、イジメが起きないために実行してもらえる方策(例えば、クラスを離すなど)について、こちらの要望を出しておく。

必ずしも思いどおりにはならないが、こちらの要望を伝えることは必須だ。そして、何らかのアクションがあったならば、それに対してお礼の気持ちを誠心誠意、学校側に伝えることがかなり大事になる。

どうなろうとも被害者側の傷は癒えない。癒えないが、どの要望が通ったならば、振り上げた拳を下ろすかという心づもりはしておかねばならない。

要望を出すときは同時に「落としどころ」を考えておくことも親の責務なのだ。

【親の正しい対応策5:元を取るという意味を考える】

イジメを受けた者の傷は一生癒えない。子どもは多分、このことを一生、引きずるだろう。しかし、あなたのお子さんはその時に大人がどう動いたのかを見ている。大人たちは信頼できると思えるかどうかで、その子の伸び方が違ってくる。

イジメを受けたならば、人としてどう生きることが良いのかを学ぶチャンスだと方針転換をした方が潰れない。

親は「この経験を絶対に無駄にしない」という決意を持って、今ではなく「10年後、笑う」という気持ちで対峙しよう。かなり苦しい戦いにはなるが、明けない夜はないとだけ経験者は言っておく。

(エッセイスト、教育・子育てアドバイザー 鳥居りんこ=文)