YouTube『ANNnewsCH』より

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 昨日、福岡市の博多駅前で起こった道路陥没事故。縦横約30メートル、深さ約15メートルにわたって道路が陥没し、周辺は停電や断水で大混乱となったが、早朝5時に発生したこともあって死傷者が出ることはなかった。

 かなり大規模な事故だったにもかかわらず、怪我人は停電によって転倒した1名のみ(8日22時現在)だったことは不幸中の幸いだが、一方、SNS上ではこんな投稿が3万リツイートを超える人気を集めた。

〈博多の事故、犠牲者ゼロは奇跡と思ってたが
々事を即時中止し博多署に要請した現場
⇒彑舛らすぐ交通規制した博多署(5分後に道路が陥没)
Dの内に避難勧告を出し避難所も設けた福岡市
...全てが神対応。
日本の危機管理力の真髄を見た〉

 さらに、同じように事故対応を挙げて、こう褒め称えるつぶやきまで登場した。

〈これは、中国と全然違う。世界に誇れる事故ではないかと。〉

 事故を起こしたのに、それを世界に誇る、ですと? ウケ狙いのツイートかとも思ったが、どうやら正気らしい。よもや「日本スゴイ」ブームがここまで素っ頓狂な感想を生み出すにまでいたっていたとは......。

 たしかに、事故発生後の対応はきちんと取れたのだろう。だが、事故対応というのは本来そういうものだし、そもそも現場で怪我人が出なかったのは前述したように発生時間帯に救われた部分は大きい。これが通勤時間帯だったなら、とんでもない事故になっていた可能性は高い。

 しかも、今回の事故現場となった周辺の道路では陥没事故が頻発しており、そのために福岡市は再発を防止するための事故防止検討委員会をつくっていたというが、〈結果的に前回よりも大規模な事故が発生〉(西日本新聞8日付)してしまったのである。

 普通ならば、「再発防止策はきちんと取れていたのか」という検証を求める声や批判が起こって然るべき事態だが、どういうわけか〈日本の危機管理能力の真髄を見た〉〈世界に誇れる事故〉などというのだから、もう苦笑いするしかないだろう。

 だが、笑ってもいられないのは、事故対応を賞賛するときに必ずと言っていいほど中国が引き合いに出されていることだ。2011年に中国・浙江省で起こった高速鉄道の追突事故の際、事故車両を穴に埋めてしまったことを指摘しているのだろうが、そんなことは問題外の行為であって比較対象にもならないのだが、なぜか中国をもちだすのである。

 しかし、これもまた「日本スゴイ」本によく見られる構図と同じだ。日本礼賛本は他国、とりわけヘイト度の高いものは中国や韓国と比較するなかで日本を賞賛し、他方、中韓を見下す。いわば、中韓への嫌悪感情と地続きのもの。「中国とは違う! これは世界に誇れる事故!」などと言うことは、結局、こうしたヘイトと表裏一体の「日本スゴイ」本と構造は一緒だ。

 毎日新聞が2015年2月25日に掲載した「日本礼賛本 嫌韓・嫌中しのぐ勢い? ブームの理由を探る」という記事のなかで、東京大学の船曳建夫名誉教授は、このように警鐘を鳴らしている。

「適度なお国自慢は望ましいが、『いいことだらけ』とか『世界で一番』とか、他国を見下すところまで行くと、排他的になり、社会は劣化する。自国の首を絞めます」

 だいたい、原発事故後の対応や再稼働してしまう状況を見るにつけ、この国に危機管理能力があるとは到底思えないが、今回もそうであるように、都合の悪い部分に目を向けず「スゴイ、スゴイ」とだけ念仏を唱える現状は、劣化も行きつくところまできてしまっているようにしか思えないのだが......。
(編集部)