いつの間にか冬の訪れを感じる日に食べたいのは、おでんに決まりだ。

寒い季節だからこそ楽しめる、日本の和食“おでん”を囲おうじゃないか。口の中に広がる、具材の旨みと豊かな出汁。あゝ、冬の到来がたまらなく幸せに思えてくる。



鍋の前に立ち、おでんの世話をするご主人。手入れの行き届いた白木のカウンターは好きなおでんを見ながらあれこれ頼める特等席
上品な出し汁が染み込む『おでん割烹 ひで』

神泉


昭和51年にオープンしてから30年以上、花街として栄えた渋谷円山町で愛されて続けている『ひで』。

創業者で先代の女将の下へ、今のご主人が来て20年以上。鍋の中で区画ごとに美しく整理された、ひとつひとつを慈しむようにお玉で出汁を回しかけ、各々に味がよく行き渡るよう、時折、菜箸で上下を返す。この光景も受け継いだ。



野菜なら、蕗や蕪、大根といった、旬の滋味溢れる各種があり、ロールキャベツやがんもどき、つみれなど、個性的で手の込んだ自家製も少なからず。およそ60種のおでんがそろう。

酒とみりんのほか、ほんの少し薄口も使うが、味つけは塩がメインの鰹が香る上品な味だ。



予約は基本的に座敷のみ受付。5室あり、刺身や焼物なども供されるコースが主体。この場合のおでんは鉄鍋に各種を盛り込んだスタイルで提供

日々の塩梅を利き分けながら、毎週出汁を入れ替える丁寧な作業。練物は味を出し、大根などは味を吸う。熱々のおでんが旨いのはいつの世も同じ。幸せを実感する。




手前から、げそ巻、つぶ貝、しらたき、すじ(魚)
※時期などによって、メニューの変動あり。
屋台の雰囲気がおでんをより旨くする『ほろばしゃ』

新橋


ビルの3階に屋台という驚きのシチュエーションでおでんが楽しめる店が新橋に存在するのをご存じだろうか? 『ほろばしゃ』は、現店主の祖父が半世紀以上も前に屋台で始めたおでん屋だ。

諸々の事情から80年代にビルに入ったが、風情を残して欲しいという常連客からの要望から、店内に屋台を再現してしまったという。



練り物が多めだから出汁にも良い味が出る。種はすべて築地で仕入れ

醤油不使用の澄んだ出汁は「創業時から変えていないつもり」とのことで、ひとつひとつのタネも巨大。創業以来守り続ける出汁が十分にしみたおでんは地酒や地焼酎とよく合う。



裸電球も灯る屋台。テーブルもあるが、湯気も感じられる屋台回りがやはり人気。あるご常連は「ちょうど角になる、この席が一番」ときっぱり

おでんの他、あじ干物やさわらの西京焼き、自家製梅酢シャーベットなども提供。そんなおでんを間近にする屋台カウンターは今も真っ先に埋まる特等席だ。


銀座のおでんの名店といえばこちら!



定番のおでんから、季節限定の「白子」や「生たらこ」など飲兵衛にはたまらないタネも取り揃える
※時期などによって、メニューの変動あり。
銀座の一等地で楽しむ塩おでん『おでん田中』

東銀座


東銀座。昭和通りから一本奥に入った路地、地下に続く階段際に『おでん田中』の看板を見つける。

一見敷居が高そうに感じられるが、一歩店内へ足を踏み入れれば、気さくなご主人が出迎えてくれる。おでんの鍋を囲うように、中央に大きなコの字カウンターを構える店内はいつも客で賑わっている。



自家製つみれ 焼豆腐、ちくわぶ。然塩と利尻昆布でひいた澄んだ出汁が特徴のおでん。

ご主人は、22歳で料理の世界に入ってからずっとおでん一筋の料理人という、その道のプロ。そんな彼が作り上げるおでんは、定番から季節限定のタネも多く、一年中飽きずに楽しませてくれる。おでんが最も恋しくなる冬には、「白子」や「生たらこ」など飲兵衛にはたまらない一品も。



冬季限定の白子、定番の大根、こんにゃく、玉子

8つに区切られたおでん鍋を覗いてみると、然塩と利尻昆布でひいた澄んだ出汁に美しく並ぶタネの数々。薄い色合いの出汁にも関わらず、淡白な味わいの「こんにゃく」や「焼豆腐」でも、旨みたっぷり、しっかりとした味が感じられる。これぞまさに、プロの技。

ご主人のおでんへのこだわりと愛情がひしひしと伝わってくる銀座の名店、この冬一度は訪れてみたいものだ。



玉子は半熟から固めまで、好みの固さでオーダーできる



自家製のさつま揚げの他、逸品ものも充実している




麻布十番商店街の通り沿いに、スタイリッシュな暖簾がかかった店が『すぎ乃』
麻布十番にオープンしたスタイリッシュなおでん屋『すぎ乃』

麻布十番


奈良に本店を構えるおでんの人気店『すぎ乃』が東京麻布十番に店をオープンしたのは2016年の5月。B級グルメから高級フレンチまで立ち並ぶ麻布十番商店街の一角に、スタイリッシュな暖簾を見つける。

1階にはおでんの鍋を眺めながら楽しめるカウンター、2階にはテーブル席もあり接待にも重宝しそうな造りだ。



1階にはおでんの鍋を眺めながら楽しめるカウンター、2階にはテーブル席も

カウンターに座り、おでんの鍋を眺めつつ、一人でしっぽりやるもよし。

連れとテーブル席で、熱燗を傾けながら温めあうもよし。冬だからこそ楽しめる、大人のひと時がうれしい。



半分に割られた「玉子」の上にはイクラのピンクが映える
※時期などによって、メニューの変動あり。

ただの居酒屋にはしたくないとの思いから、メインとして味わえるおでんを店の柱とした。

これまでに出会ったことのない旨さを追求して創り上げたという自家製ダシは、拘りの高級食材の旨さを最大限に引き出し、最高のおでんに仕上げてくれる。昔ながらのおでんに、ひとひねりを加えたオリジナルの創作おでんは見た目にも楽しめる。



とろろ昆布が乗った「大根」



「蓮根のはさみ揚げ」もおでんで楽しめる



トリュフ塩で食べる「ビフカツ」

創作おでんの他、日替りの一品料理は酒の肴から魚や肉料理、そして鍋まで幅広いラインナップ。さらに、日本酒にはオーナーの強い拘りが感じられる。米の質から搾り火入れ管理状態、そして蔵元様の人柄まで納得のいく日本酒しか置かないという。

奈良の下町の人情深さと一流食材しか使わない拘り。まさに、麻布十番という土地にもピッタリではないだろうか。