須田美也子元日銀審議委員が講演し、日銀の異次元金融緩和は「副作用が多い」と厳しく批判した。人々の中に「デフレマインド」は存在しておらず、「デフレからの早期脱却」が日本経済が抱えている最大の課題ではないと強調した。

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日銀審議委員を2011年まで10年間務めた須田美也子キヤノングローバル戦略研究所特別顧問が日本記者クラブで講演し、アベノミクスの中核である日銀異次元金融緩和の行き詰りを厳しく批判した。人々の中に「デフレマインド」は存在しておらず、「デフレからの早期脱却」が日本経済が抱えている最大の課題ではないと強調した。発言要旨は次の通り。

日銀は「物価上昇目標2%」の達成が困難となったことについて、9月公表の「総括的な検証」で「想定外の原油価格下落や長期化した消費増税の影響などが要因となった」と結論づけたが、この説明は納得がいかない。

日本人の物価予想がそう簡単に上がらないことは、黒田春彦氏の総裁就任以前からから分かっていたことであり、異次元緩和が行き詰まったのは「想定通り」である。黒田日銀は2013年4月にバズーカ砲と例えられた大規模な量的緩和を始めた。しかし、それ以前から、日本の金融政策はすでに十分緩和状態にあり、どれほど大規模な追加策を投じても限界は見えていた。

実際、「黒田異次元緩和」の3年間の年平均伸び率はGDPが0.62%、消費はマイナス0.28%、民間設備投資も1.72%と低迷。消費者物価は7カ月連続のマイナスとなった。

企業業績が一時的に改善したのは実質金利効果よりも円安効果によるもので、国内投資や賃金上昇にはつながりにくく、外需・投資効果も顕在化しなかった。マイナス金利導入で金融緩和の副作用が顕在化。保険・年金の運用利回りの低下などがマインド面を通じて経済活動に悪影響を与えた。

将来、物価が「下がる」と予想する人より、「上がる」と見る人が多いことが、日本の物価上昇率が上がらない原因となっている。この予想はコントロール可能だろうか。人々の中に「デフレマインド」は存在しておらず、「デフレからの早期脱却」が日本経済が抱えている最大の課題とする見方は疑問だ。

成長戦略と信頼するに足る財政再建計画の構築が進まず、物価が上昇しないのは政府にも責任がある。成長への期待感がないこと、将来への不安、閉塞感が問題なのであって、構造改革により潜在成長率を引き上げ、財政再建で主に社会保障面での将来不安を取り除くことが必須の処方箋になる。

日銀政策委員会は尊敬されるプロたちが多様な意見を戦わせることで、判断が大きく間違うのを防ぐことができる。政府と一定の距離を保し「金融政策の独立」が必要だが、現状は「政治主導の任用」の弊害が顕在化し、委員会制度のメリットが生かされていない。(八牧浩行)