テスラが急速充電の有料化を発表 際立つマスクCEOの賢さ

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米電気自動車(EV)メーカー、テスラモーターズは11月7日、直営の急速充電スタンド「スーパーチャージャー」の利用を有料化すると発表した。来年1月1日以降に同社の車を注文する人たちには、およそ1,600kmを走行できる電力量(400 kWh)までが無料で提供されるものの、その後の充電は有料となる。料金などの詳細については、まだ明らかにされていない。

無料のものがなくなることを喜ぶ人はいない。充電の有料化は今後のテスラ車の需要に影響を及ぼすだろうか?──そうはならない公算が大きい。その理由は、次の5つの点にある。

1. モデル3に絡む「数字」が全てを変えた

新型セダンのモデル3が発表された今年3月、テスラはあらゆる人たちの予想を大きく超える予約を受け付けた。わずか1晩で、約16万台の予約があったのだ。それは、同社が創業からそれまでに販売していた台数、11万台を大幅に上回る数だった。

テスラはその16万という数字(その後も増え続け、すでに40万に近づいている)によって、その後の事業計画の全てを迅速に見直すことを余儀なくされたのだろう。そして、それにはスーパーチャージャーに関する方針も含まれていたと考えられる。

2. 行うか否かではなく、いつ行うかの問題だった

多くの人たちが、テスラはがモデル3の充電を有料化すると予想していた。だが、年内に注文する限り、実際にはモデル3の購入者にも、モデルS、モデルXのオーナーたちと同様のサービスを提供することとした。これは賢い決定だ。

3. テスラ車の魅力

テスラ車のオーナーたちは、なぜその車を選んだのだろうか?所有者たちの答えは、大半が同じだ。「魅力的なデザインと革新的なテクノロジー」、そして、カリフォルニアで生まれた革新的な電気自動車をいち早く手に入れた一人であるというクールな側面を享受できる、ということも購入の決め手だ。

無料の充電は、購入を決めた理由のリストの上位には入っていない。テスラ車に乗る人たちの大半にとって、スーパーチャージャーを無料で使えることは、思いがけないボーナスのようなものだ。

4. モデル3は「街乗り」向け

モデル3は、高学歴で専門職に就く都市部の住民を顧客として想定している。こうした人たちにとって、車の主な用途は通勤だ。最低約345kmとされるモデル3の航続距離は、通勤には十分だといえる。モデル3はセダンであり、大型の車ではない。スーパーチャージャーが重要な役割を果たす長距離の移動は、たまにはあるという程度だろう。

5. 初期の購入者が応援

すでにテスラ車を所有している人たち(そして、年内に注文する人たち)は今後もその車を保有する限り、無料でスーパーチャージャーを利用できる。これは、すでに16万人近いテスラ車の所有者(忠誠心の高いテスラの顧客)たちにとっては朗報であり、そこが重要な点だ。

アーリーアダプター(初期採用者)への無料サービスを継続することで、テスラは自社製品を自発的かつ熱心に応援してくれる「ブランド・アドボケーツ」という、極めて重要な顧客層を維持することになる。

大統領選の前日に発表

充電を有料化するというテスラの決定は間違いなく、全くの驚きだったというわけではない。フォーブスの寄稿者の一人も数か月前に、その可能性を示唆していた。街中を走る新車のテスラ車の大幅な増加から、同社がスーパーチャージャーについて再考せざるを得なくなることを予見していたのだ。

残念なニュースを伝えることが避けられないとき、問題は「いつ、どのように」それを伝えるかということになる。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はその公表のタイミイングに、われわれの記憶にある限り米国にとって最も重要な選挙の前日を選んだ。

国の将来が決まるというときに、この先テスラ車の充電にかかる料金に強い関心を持つ人がいるだろうか?──なんと賢いことだろう。