冬場はとくに注意が必要だ

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病気を予防し、生涯、健康で過ごすためには、「食事」「運動」「睡眠」が大切というのは周知の事実だ。

いま、医師や専門家の間では、それに加えて「住環境」も重視すべきだと考えられていて、研究が進められている。

なかなか減らない浴室内での急死

2016年8月23日に東京大学医学部内で開かれた全国公衆衛生関連学協会連絡協議会のシンポジウム「住環境と健康」に記者が出席した。

東京都健康長寿医療センター研究所の前副所長である高橋龍太郎氏は、入浴中の心肺停止や急死する高齢者が多く、なかなか減らないことに対して、予防可能なこともあるのではないかと、長年研究してきた。

2011年、全都道府県の消防本部を対象に、1年間に浴室で起こった心肺停止事例の数を調査した。その結果、推計で年間約1万7000人が浴室内で心肺停止しており、過去の実証研究から、搬送された後、助かった人は1%にも満たないことが分かった。10年前の2000年時のデータを比較しても搬送推計値はあまり変わっていないという。

12月から1月の寒い時期に搬送数は最も多くなる。これからは注意が必要だ。

なぜ、減らないのか。高橋氏はその理由について、日本の気候や湯船につかる入浴文化や高齢になると体温維持機能の低下することのほか、築30〜40年の戸建て住宅の断熱性能レベル、浴室を北向きに設計するなどの建築学なども複合的に関係している可能性があると述べた。

実際、入浴時に高齢者の体はどう変化するのか。103人の高齢者(平均年齢73.6歳)に、5分間入浴してもらい実験した。湯の温度は41度だった。すると、入浴3分後には血圧が165.9から147と急激に低下していたという。しかし脈拍はほとんど変化していなかったことから、高齢者は入浴すると、からだ全体の血流量が減ることがわかるという。

特に、脳への血流量は低下すると、意識障害や失神につながるため、入浴中の急死には、血圧も大きく関わっている可能性がある。

室温18度以下は要注意

健康に大きく影響すると注目されているのが家の中の温度だ。

英国では、寒い家に住むことでより多くの人が亡くなると指摘されており、許容温度は18度だと説明したのは、慶應義塾大学教授・理工学部システムデザイン工学科主任の伊香賀俊治氏だ。実際に英国で行われた高齢者向けの健康キャンペーンでは、居間の室温は21度、寝室の室温は18度を推奨している。

欧州では、温暖な国ほど冬に死亡する人の割合が多いが、日本も同じことがいえる。厚生労働省が発表した冬季の死亡増加率を見ると、北海道と青森県以外は注意が必要だとした。

また伊香賀氏は、自身が関わった研究で、長年寒い家に住んでいると血圧が高めになることがわかったと発表した。また、就寝時間帯の室温が低いと、より脳卒中発症につながる可能性が高くなる。

そのほか、家の寒さは、認知機能や握力などの身体機能低下にも関連しているのではないかと現在、研究を進めているという。

一方で、暖かい家のメリットも紹介された。

室温が1.75度高くなるだけで、1日1400歩程度の活動量を生む。高血圧だった人が最低室温5度の自宅から17度の断熱住宅に数日宿泊しただけで、血圧が低下したという報告もある。

また、睡眠の質を向上したり、ストレスや疲労感を軽減したりもすると考えられている。

居間や寝室だけが暖かければいいわけではない。脱衣所やトイレなどとの温度差にも注意が必要だ。これからの健康づくりには、住環境にもっと目を向ける必要があると思った。

医師・専門家が監修「Aging Style」