立冬を迎え、今年もいよいよ本格的な寒さがやってきました。北海道では気温が氷点下を記録し、関東でも平年より冷え込みがきびしくなっています。空気も乾燥し、風邪をひきやすくなるこの時期は、日頃から意識して体調を整えることが大切。今回は、毎日の生活に役立つ「植物の力」についてご紹介します。ヨーロッパでは「フィトテラピー」として広く人々の暮らしに浸透していますが、はたして日本では!? 慣れ親しんでいたあの植物のすごいパワーを、ぜひ取り入れてみましょう!


薬を飲む前に、植物の力を借りる

最近耳にする注目のワード「フィトテラピー」は、ギリシア語で「Phyto = 植物、therapie = 療法」を意味します。フィトテラピー(植物療法)は、古代エジプトの薬草療法を起源に、東洋では漢方として成立し、ヨーロッパではフランスで発達し科学的に体系付けられました。現在、ヨーロッパ諸国では「フィトテラピスト(植物療法士)」という認定資格があり、医師や看護師らと医療の現場で活躍しています。
フランスでは、体調不良があると最初に行くのは病院ではなく「エルボリステリア」というハーブ薬局とか。そこでは、自分の症状をフィトテラピストと相談しながらハーブやチンキ(ハーブを浸け込んで成分を抽出した液体)を選び、自然治癒力を高める処方が行なわれます。植物という豊かな自然の力を借りて、人に本来そなわっている自然治癒力を高めるのが、フィトテラピーの最大の特徴であるといえます。


いろいろある! フィトテラピーの取り入れ方

ヨーロッパで人々の生活に溶け込んでいるフィトテラピーは、多彩な方法で毎日の暮らしに用いられています。その代表的なものをみていきましょう。
◎ハーブティー
フランスでは「ティザンヌ」と呼ばれ、とてもポピュラーなもの。植物の葉や花、根を乾燥させて刻んだものを熱湯で抽出します。お茶として飲むことで、水溶性の有効成分をダイレクトに吸収できます。香りも楽しめて美味しいハーブティーは、自律神経がリラックスしホルモンバランスも整えてくれる効果も。
◎チンキ
ハーブをアルコールやグリセリンなどに浸けて成分を抽出させるので、水溶性と油溶性の両方の成分を抽出することができます。水やお湯で割って飲むので、手軽にとることができます。
◎精油
エッセンシャルオイル、アロアオイルとして販売されている精油は、油溶性の有効成分を取り入れることができます。ハーブティーとは違う部分を使うこともあり、その場合は効用も異なります。マッサージに使ったり、アロマポットで香らせたり、さまざま使い方があります。
◎錠剤
ハーブの成分を一定の形状に圧縮して飲みやすくしたもの。サプリメントなどの錠剤が一般的。植物オイルなどをジェルカプセルに封入したものもあります。飲みにくい味のものを手軽に摂取することができるメリットも。
◎食材
からだを温めたり、消化器や粘膜を保護したり、抗菌力があるなど、野菜や果物にはさまざまな植物の力が宿っています。多くは皮の部分に有効成分が含まれているので、なるべくまるごといただくのがポイントです。

「植物の力」を毎日の暮らしに取り入れて

「植物の力」を毎日の暮らしに取り入れて


風邪の症状にはこれ! 活用したい自然の薬たち

ヨーロッパでは、風邪をひいたらまずハーブという人が多いそう。病院に行く前に、自分でできるフィトテラピーで不調を整えて体調回復を。この季節にぜひ取り入れたい、風邪対策に役立つハーブと食材をご紹介します!
◎風邪の予防に
【ユーカリ、タイム(精油)】
マッサージやうがいに抗菌効果の高い精油を使って風邪の予防を。
ホホバオイルなどのベースオイルを手のひらに少量(3〜5ml)取り、そこにユーカリの精油を1滴、あればタイムの精油も1滴加えます。このオイルでのどから胸、背中をやさしくなでるようにマッサージするとぽかぽかとからだが温まります。最後に手のひらを鼻の前にもっていき3回深呼吸しましょう。のどと鼻がすっきりします。
【ティートリー(精油)】
うがいに日頃から使うのにおすすめ。コップ1杯(200ml)の水に1滴垂らすのが目安です。
【びわの葉】
びわの薬効は実ではなく葉にあります。咳の出始めには、びわの葉茶を10分ほど煎じて飲みます。少し苦みがありますが、咳には効果できめん。袋に入れてびわの葉風呂にすると、からだの芯から温まり湯冷めしにくくなります。
びわの葉に含まれるアミグダリンという成分は体内でビタミンB17に変化。これは抗がん作用があると国際的にも注目されている特別なビタミンで、炎症を抑えて血液を浄化してくれるそう。
◎風邪をひいたら
【エキナセア(ハーブ)】
抗菌作用があり、免疫力を高めてくれるエキナセアは、風邪やインフルエンザ、花粉症、アレルギー性鼻炎などの症状緩和に役立ちます。ハーブティーで、手軽にとるのがおすすめです。200mlのお湯に大さじ1杯が目安。10分抽出したものを食間に飲みます。
【エルダーフラワー(ハーブ)】
利尿作用や発汗作用が高く、体内の毒出しをするはたらきがあるので、風邪をひいたらハーブティーでとりましょう。熱いうちに飲むと汗が出て、症状がぐんと軽くなります。最近はシロップが出ていますので、お湯で割って飲むのもおすすめ。
【レモン+ローズマリー(精油)】
レモンの精油は、殺菌作用や消毒作用にすぐれていることで知られています。果汁ではなく果皮に有効成分が含まれていますので、ぜひ精油を活用しましょう。血流をアップさせるローズマリーの精油と同量でブレンドし、アロマポットで焚くのがおすすめです。
【くず】
くずの根にはカリウムとビタミンK、イソフラボンの一種が含まれており、からだを温める、発汗させるといったはたらきがあります。お湯で溶いてくず湯にしたり、煮物のとろみづけなどに使うのもおすすめです。
【冬瓜】
熱を加えてもこわれにくいポリフェノールやビタミンC、カリウムなどを豊富に含んでおり、内側からからだを温めてくれます。熱を加えると出てくるとろみには、消化器や粘膜を保護するはたらきも。食べ方のコツは、大事な成分が含まれる皮もいただくこと。農薬などが気になるときは、まるごと重曹水につけておきます。スープやお粥にして、くずも加えるとさらに相乗効果でからだがあたたまります。

ハーブやアロマテラピーはもちろんですが、日々口にする穀物や野菜、果物など身近な食材も、その恵みをいただくと考えると、立派なフィトテラピーといえます。慣れ親しんだ食材にも自然治癒力を高め不調を改善してくれる力が宿っています。毎日の生活にぜひ植物の力を意識して取り入れて、この冬の体調管理に役立ててみましょう!

風邪のひき始めには、くず湯を

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参考文献
森田 敦子 『自然ぐすり 植物や食べものの手当てでからだとこころの不調をととのえる』ワニブックス 2016