82歳の名匠オタール・イオセリアーニ監督

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 最新作「皆さま、ごきげんよう」の公開を控えた名匠オタール・イオセリアーニ監督が来日し、11月7日、岩波ホールで会見した。

 現在82歳のイオセリアーニ監督による最新作は、フランス革命、戦時中、そして現代と、時代が違っても、変わることなく繰り返される人間の営み、混沌とする社会の不条理を、反骨精神たっぷりのユーモアで描く独創的な作品。様々な時代のパリを舞台にした理由を問われると「私は撮影地がどこなのかや、背景は気にしません。紙で作られたセットでも問題ないのです。私が描きたいのは、人々の間で起きていること。パリの年代記を作ろうという気はありません」と話す。

 自身の作品は「大人として理性を持つ人に向けて作っている」と説明し、「ハリウッド映画などの対象は10代から20代半ばです。皆いつも同じような、口当たりの良い作品ばかりを見て育ち、紋切り型に慣れてしまっている」「この地上に生まれ、一度しかない人生について考察することがなくなってしまった。それはかつては文学が担ってきたものでした。しかし、今の文学は精神生活に興味を持たなくなり、人を楽しませるものになっています。映画にしても同じで、芸術ではなくなってしまっているのです」と、世界的にブロックバスター映画が氾濫し、作家主義的な作品の観客が減っている現状を憂いた。

 今回、5年ぶりの来日となった。「なぜ私は日本に来ているのか、それは日本の皆さんに、わずかな良い趣味のかけらのようなものが少し残っているのではと信じているのです」と呼びかけ、「20世紀初めの東京は素晴らしかった、無秩序で生き生きとしていました」と述懐する。しかし、現在の東京は「冷たい街になってしまった。道でたばこを吸うこともできず、灰皿の周りがチェーンで囲ってあります。誰もそれに異議を申し立てる人もいません(笑)」と規律正しい現代の日本社会に息苦しさを感じていると明かす。

 さらに、「友人が松尾芭蕉の本をくれました。そういった友人を持つことがすばらしいのです。今の人たちは芭蕉を読まなくなる、そういう危険を冒しているのではないでしょうか」と、若者の文学離れにも警鐘を鳴らしていた。

 「皆さま、ごきげんよう」は、12月17日から岩波ホールほか全国で順次公開。